第22.5話 線が見え始める
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最初は、品物だけを見ていた。
豆が足りない。塩が足りない。木椀が足りない。小樽が足りない。
それぞれ、別の問題に見えた。
だが、続けているうちに、そうではないとわかってきた。
豆を運ぶにも袋がいる。煮込みを出すにも椀がいる。水や薬草を扱うには桶がいる。桶や樽を直すには輪金がいる。
一つ足りないだけなら、まだいい。
だが、足りないものがつながると、仕事そのものが止まる。
小樽が足りない時、ただ小樽だけを買えばいいわけではない。
輪金がなければ直せない。
職人の手が空いていなければ戻らない。
荷車がなければ運べない。
管理所が待てなければ、次の依頼にはならない。
どこか一つが止まれば、次も止まる。
今は、それが前より見える。
はっきりした地図ではない。
ただ、細い線がある。
南区で止まりそうな線。
西区へ伸び始めた線。
桶職人へ向かう線。
その先で、輪金の荷が遅れている。
理由はまだわからない。
北の鍛冶場で何かが止まっているのか。
大きな商会が押さえているのか。
ただ、今のままなら、南区だけでは済まない。
それは、ぼんやり見える。
ベルカ商会は、最初に豆を運んだ。
次に塩を運び、木椀を押さえ、古椀を拾い、小樽を直し、古い輪金を集めた。
どれも小さい。
だが、椀があれば昼を配れる。小樽が戻れば薬草を仕込める。荷車が動けば細い路地にも届く。
小さいものが止まらなければ、南区の仕事は止まらない。
それに、ミリアの作る昼飯は、前より少しうまくなっている気がする。
目立つ仕事ではない。
でも、止まれば困る。
なら、そこに商売がある。
ミリアは、西区の小樽を二つだけ預かった。
二つだけ。
前なら、たぶんその言い方はできなかった。
全部受けるか、全部断るか。
そのどちらかで固まっていたはずだ。
今は違う。
調査にする。
確認にする。
契約にする前で止める。
悪くない。
口に出せば、また全部くださいと言う。
だから、まだ言わない。
だが、前よりずっと商会主になっている。
俺には、足りないものが見える。
止まっているものも、少し見える。
そして今は、その間の線が見え始めている。
どこから拾い、どこで直し、どこへ戻せば止まらないか。
まだ全部ではない。
信用は見えない。
人の気持ちも見えない。
職人が本当に引き受けるかも、聞くまではわからない。
だから、確認する。
だから、ミリアがいる。
ベルカ商会が運んでいるのは、もう豆だけではない。
足りないものを見つける。
止まっているものを拾う。
直せる場所へ回す。
必要な場所へ戻す。
それは、一つの配送ではない。
流れだ。
ただ、気になる線がある。
北へ伸びる線。
輪金が遅れている理由。
そこが止まっているなら、南区も西区も、いずれ止まる。
まだ、はっきりは見えない。
だが、次に見るべき場所は決まった。
ベルカ商会は、たぶんもう少し上流を見ることになる。
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