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貧乏商会が王国経済を握ります!ー相場が見える俺が、国の市場を支配するー  作者: 堀吉 蔵人
第三章 サーキュラー・エコノミー

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第21話 古い輪金を集めます

いつもありがとうございます!

楽しんでいっていただけると幸いです。


 南区便は、いつもより少し重かった。

 豆と塩と木椀。

 それに、今日は別の仕事がある。

 壊れた樽、古い桶、外せる輪金。

 それを聞いて回る。


「……配送ですよね?」

「配送だ」


 クロードさんは荷台の端に座っていた。


「聞き取りも、回収も、修理の材料探しもありますよね」

「ある」

「それ、配送って言い切っていいんですか」

「止めないための配送だ」

「またそれっぽい言い方をする」

「事実だ」


 最初に着いたのは、共同炊事場一番だった。


 昨日の女性が、すぐに出てくる。


「今日はいつもの豆と塩だね」

「はい。それと、古い桶や壊れた樽があれば見せていただけますか」

「そんなものまでいるのかい?」

「輪金が使えるかもしれません」


 女性は裏へ案内してくれた。


 水漏れする桶が二つ置かれている。


「捨てるには大きくてね。置いたままだったんだよ」


 クロードさんは桶を見た。


 長くは見ない。


「一本は使える。もう一本は駄目だ」

「早いですね」

「錆が深い」

「錆も見えるんですね」

「見ればわかる」

「またですか」


 使える輪金は一本。

 少ない。

 でも、ゼロではない。


「こちらで引き取れます」


 わたしは言った。


「助かるよ。邪魔だったからね」


 共同炊事場一番、納品完了。

 古い輪金、一本。


 帳簿に書く。


 次は共同炊事場二番。


 ここでは、割れた樽があった。

 横板が大きく開いていて、見た目からして駄目そうだった。


「これはどうですか」

「駄目だ」


 クロードさんは即答した。


「早すぎます」

「輪金が歪んでいる。戻す方が高い」

「直せばいいわけではないんですね」

「そうだ」


 使えないものは、使えない。

 全部拾えばいいわけではない。


 わたしは帳簿に、回収なし、と書いた。


 次は施療院だった。


 管理人は、わたしたちを見るとすぐに言った。


「古い桶か。あるぞ」

「早いですね」

「エルマンさんから話が来ていた。ベルカ商会が変なものを集めるかもしれない、と」

「変なもの」


 少し傷ついた。


 でも、否定しきれない。


 裏の置き場には、古い桶が三つあった。

 一つは底が抜け、一つは輪金が外れかけ、一つはまだ形を保っている。


 クロードさんが順に見た。


「一本、二本、これは駄目」

「二本使えるんですか」

「ああ」


 管理人が驚いた顔をした。


「そんなものが使えるのか」

「輪金だけなら」


 わたしは説明した。


「桶としては使えなくても、輪金が残っていれば、小樽の修理に回せます」

「なるほどな。持っていってくれ。置き場が空く」

「ありがとうございます」


 施療院から、輪金二本。


 ついでに、壊れた小樽も二つ預かった。


 荷台が少しずつ、配送とは違うもので埋まっていく。


「クロードさん」

「なんだ」

「行きは豆と塩で、帰りは壊れた桶と輪金です」

「無駄がない」

「商会として正しいのか、少し不安です」

「正しい」

「即答ですね」

「空で帰るよりいい」


 それはそうだった。

 ただし、見た目は少しひどい。


 次は簡易宿だった。


 宿の管理人は、木の車輪を出してきた。


「輪金じゃないんですが、これも使えますか」


 古い荷車の車輪だった。

 外側に鉄の輪が残っている。

 クロードさんが見た。


「使える」

「また増えました」

「車輪もいる」

「もう南区配送の話ではなくなってきました」

「まだ配送の話だ」

「本当ですか?」

「車輪が止まると荷車が止まる」

「それはそう!」


 車輪ごと引き取ることになった。


 荷台がさらに変なことになった。

 豆と塩を届けているはずなのに、帰りは壊れた桶、古い輪金、古い車輪。


 トマが荷台を見てつぶやいた。


「商会主、これを見た人は何の商売だと思いますかね」

「聞かないでください」

「修理屋?」

「違います」

「古道具屋?」

「違います」


 クロードさんが言った。


「止めない商会だ」

「それ、気に入ってます?」

「便利だ」

「便利な言葉が増えていく……」


 昼過ぎ。


 集めた輪金と壊れた小樽を、桶職人の店に持ち込んだ。


 職人は、荷台を見て少し笑った。


「本当に集めてきたのか」

「集めました」

「変わった商会だな」

「最近よく言われます」


 職人は輪金を一つずつ確認した。


 叩き、曲がりを見て、錆を削る。

 その手つきは早かった。


「思ったより使えるな」

「どれくらい直せますか」

「小樽なら五つ。桶なら二つ。荷車の車輪にも一つ使える」


 十分ではない。

 でも、ゼロより大きい。


「新品はどれくらい必要ですか」

「太い輪金を二つ買えば足りる」


 わたしは息を吐いた。


 全部買わなくて済んだ。

 でも、全部古いもので足りたわけでもない。


「クロードさん」

「なんだ」

「全部新品で買わなくてよかったです」

「そうだな」

「でも、全部古いもので足りたわけでもありませんでした」

「そうだ」

「必要なものを、必要なだけ」

「そうだ」

「最近、それが少しわかってきました」

「悪くない」

「半分以上?」

「半分以上」


「伸びない!」


 職人が笑った。


「仲がいいな」

「違います!」


 思わず声が大きくなった。


 クロードさんは特に反応していない。

 それが少し腹立たしい。


「何が違う?」

「そこを聞かないでください!」


 職人はさらに笑った。


 ベルカ商会に戻るころには、荷台は少し軽くなっていた。

 直せるものは職人のところに置いた。

 使えないものは、火付けや部品用に分けた。

 完全に駄目なものだけ、処分する。


 全部を拾うわけではない。


 全部を捨てるわけでもない。


 選ぶ。


 たぶん、それが大事なのだ。


 ロイが帳簿を見ながら言った。


「新品の輪金を全部買うより、かなり抑えられました」

「修理費は?」

「増えました」

「やっぱり」

「ただし、小樽と桶の数は確保できます。荷車修理も予定内です」


 よかった。

 少しだけ安心した。


「商会主」


 ロイが続けた。


「今日の分で、南区の小樽修理は止まらずに済みそうです」

「本当ですか」

「はい。ただし、今後も輪金の確認は必要です」

「仕事が残りましたね」

「残りました」

「増えましたね」

「増えました」


 もう驚かない。


 そう思った。


 その時、クロードさんが言った。


「まだだな」

「何がですか」

「輪金は、南区だけで終わらない」

「今、驚かないと思ったところです」

「早いな」


「早くないです!」


 ベルカ商会は、南区の中で止まっていた輪金を集めた。


 そのおかげで、小樽と桶は止まらずに済みそうだった。


お読みいただきまことにありがとうございます!

面白かった!続きが読みたい!しょうがねーな!と思っていただけた方がおられましたら

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これは実は作者のモチベーションに直結しております。

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