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貧乏商会が王国経済を握ります!ー相場が見える俺が、国の市場を支配するー  作者: 堀吉 蔵人
第二章 物流を制する者は商業を制する

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第12話 小口配送が大口になりました

いつもありがとうございます!

楽しんでいっていただけると幸いです。


 南区定期便、二日目。


 ベルカ商会の前では、朝から荷物が並んでいた。


 豆、塩、小樽、空箱。


 昨日より多い。


「……増えてますね」

「増えたな」

「昨日、初日でしたよね?」

「初日に増えたから、二日目も増える」

「説明が正しいのに納得したくありません」


 わたしは帳簿を開いた。


 施療院、孤児院、小食堂、共同炊事場。


 昨日までは、なんとか頭に入っていた。

 今日は違う。

 共同炊事場が一件増えている。

 小食堂も、夕方だけでなく昼の分まで頼みたいと言ってきた。

 小さい注文ばかりだ。

 でも、合計すると馬車一台分に近い。


「商会主」


 ロイが言った。


「南区便だけで、二台目の半分以上が埋まります。帰りの空樽回収を含めると、ほぼ一台分です」

「昨日まで、馬車を買うかどうかで震えていたのに」

「今日は足りるかどうかで悩んでいます」

「変化が早すぎます」


 クロードさんは、荷物を見ていた。


 豆袋の数を見る。

 塩の袋を見る。

 小樽の置き方を見る。


 それだけで、すぐ言った。


「順番を変える」

「またですか」

「共同炊事場を先に回る」

「施療院ではなく?」

「今日は共同炊事場の昼が早い。施療院は昨日の小樽が残っている」

「そこまで聞いてました?」

「昨日、言っていた」

「聞き逃してください、たまには」

「聞く方が速い」


 わたしは帳簿の順番を書き換えた。


 共同炊事場、施療院、孤児院、小食堂。


「これでいいですか」

「いい」

「少しは自分で判断できるようになった気がします」

「半分くらいな」

「そこは全部って言ってください!」


 馬車が出ようとした時だった。

 東門の方から、ダリオが歩いてきた。


「おやおや。南区便、二日目もやるんだ」


 今日も嫌な笑い方をしている。


「はい」

「薄利の小口配送ばかり集めて、よくやるな。大商会がやらない仕事には、やらない理由があるんだよ」


 言い方が嫌だった。

 でも、クロードさんは平然としていた。


「ある」

「ほらな」

「数が少ないと儲からない。だから、数を集める」


 ダリオの笑みが止まった。


「……十件も取れると思ってるのか?」

「取れる」

「言うねえ」

「必要なら増える」


 ダリオは鼻で笑った。


「まあ、せいぜい馬を疲れさせないことだな」


 そう言って、去っていった。


 嫌な感じは残った。

 でも、昨日ほど怖くはなかった。


「クロードさん」

「なんだ」

「小さい注文も、集めれば馬車一台分になるんですね」

「そうだ」

「つまり、小口配送が大口になる」

「そうだ」

「……それ、先に言ってください」

「今わかっただろ」

「意地悪ですか?」

「効率だ」

「嫌な効率!」


 南区に着くと、共同炊事場の前には人が集まっていた。

 昨日の年配の女性が、こちらに手を振る。


「来てくれたね!」

「はい。豆二袋と塩です」

「助かるよ。今日は人が多くてね」


 見ると、大きな鍋が二つ並んでいた。

 子供や老人が椀を持って待っている。

 これは、ただの配送ではない。

 ここに遅れたら、昼食が遅れる。


「荷を下ろします」


 トマとエドが豆袋を運ぶ。

 ニクスが塩を渡す。


 女性はすぐに帳面を出した。


「明日から毎日にできるかい。人数が増えたんだ」


 わたしは帳簿を見る。


 今の量なら、まだ入る。

 ただし、これ以上増えると二台目だけでは厳しい。


「明日分は受けます。明後日以降は、今日の夕方までに返事をします」

「それでいいよ」


 勝手に受けすぎない。

 でも、逃がさない。

 たぶん、これでいい。

 クロードさんを見ると、うなずいていた。


 共同炊事場の納品を終えると、あとは早かった。


 施療院では、空樽の回収が二つから四つに増えた。

 孤児院では、近くの共同炊事場を紹介された。

 小食堂では、昼に出した豆の煮込みが売れたので、夕方分も増やしたいと言われた。


 全部、小さい話だ。

 でも、帳簿に並べると違って見えた。


 共同炊事場、毎日化の相談。施療院、豆一袋追加。孤児院から紹介。小食堂、夕方分増量。


「クロードさん」

「なんだ」

「小さい注文ばかりなのに、もう小さくありません」

「集めたからな」

「これ、明日はさらに増えますか」

「増える」

「少し迷ってください!」

「迷っても減らない」


 その時、共同炊事場の女性が、灰色の上着を着た男性を連れてきた。


「ベルカ商会さん、この方が話したいって」


 男性は丁寧に頭を下げた。


「南区管理所の書記をしております、エルマンです」


 南区管理所。


 わたしは思わず姿勢を正した。


「ベルカ商会のミリアです」

「昨日から、定時に食材を届けていると聞きました」

「はい。まだ試験運行ですが」

「南区には、共同炊事場が他にもあります。個別に買いに行けない施設も多い」


 大きな話になりそうな気がした。


「相談ですが」


 エルマンさんは、わたしを見た。


「南区の共同炊事場三か所分を、まとめて運べますか」


 わたしは固まった。


 三か所分。

 まとめて。

 昨日まで、一件ずつ受けていた小口配送が、急に街区の仕事になった。


「クロードさん」

「なんだ」

「これ、小口配送ですよね?」

「もう違う」

「ですよね!?」

「街区配送だ」

「言い方が急に大きいです!」


 エルマンさんが不思議そうに見ている。


 わたしは慌てて咳払いした。


「条件を確認させてください」

「もちろんです」


 帳簿を開く。


 豆、塩、小樽、回収品、納品時刻。


 項目が増えていく。

 でも、逃げる気はなかった。


「まず、一日分から試させてください」


 わたしは言った。


「明日、三か所分を運びます。その結果を見て、継続を決めたいです」


 エルマンさんはうなずいた。


「それで構いません」


 決まった。

 決まってしまった。

 クロードさんが小さく言った。


「段が上がったな」

「段?」

「小口を集める側から、まとめて任される側になった」

「今、そういう大事なことをさらっと言いました?」

「ああ」


「えぇぇぇぇ!?」


 南区定期便、二日目。


 ベルカ商会は、小口配送を集めていたはずだった。


 気づけば、南区の共同炊事場三か所分を任されることになっていた。


お読みいただきまことにありがとうございます!

面白かった!続きが読みたい!しょうがねーな!と思っていただけた方がおられましたら

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