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「タイヨウは、祠が見つかったあとはどうするんだ?」
土の踏み固められただけの獣道を、背中に花火の木霊を受けながらセウストは聞いた。
「とりあえずは、祠を綺麗にして、暫くは近くで過ごしますね」……
それは、ツキの事だ。もしかしたら案外すぐに復活してしまうかもしれない。そう思って僕が言うと、セウストはそうか。と少しトーンの落ちた声で言った。
「どのくらい待つつもりなんだ?」
「うーん……一ヶ月か、一年か、十年くらい?」
「……そしたらよ、ひとまずの期限を決めるのはどうだ?」
「期限……じゃあじゅう――」
「十ヶ月な! ほら、祠にも着いたぞ!」
いや、十年……。と言おうとする僕を遮ってセウストは獣道の先を指差した。
そこには少しだけ大きいだけの石があった。その刹那、僕はそれが探していた祠だと気がついた。
全身を緑に覆われて、所々に鳥の糞やら、雨に打たれ白く汚れたその姿は、もはや過去の栄光すら完全に消え失せていた。
「こりゃ、当たり前だが、相当放置されてんな」
昔居た人達は全員何処かへ移り住んで、今この近辺に人の住む場所はない。鬱蒼とした木々だけが、変わらずこの祠を見守っていた。
未だ遠くからは、スピーカーから出るノイズの様な音が聞こえるが、その美しい花はもう見えなくなっていた。
「見送りありがとうございました」
「おう。……十ヶ月経ったらまた来るからな!」
僕と共に残ろうと言ってくれた彼をどうにか送り出す。
彼は最後まで名残惜しそうに、何度も何度も振り返っては手を振りながら歩いて行った。
「さて……まずは掃除かな」
元々の管理をしていたであろう人が残した掃除道具が新品同然に残されていたので、それを使うことにした。
掃除を始めてまず驚いたのは、祠自体には一切劣化が見当たらないことだった。
普通、一千年以上のときを重ねたものというのは、整備をしないと多かれ少なかれ劣化するものだ。
しかし、この祠は汚れを拭くと、滑らかに切り出された姿のままで、雨に打たれて削られたり、風に吹かれてザラついたりなど、一切していなかった。
掃除道具として残っていたバケツに、近くの川の水を汲み、雑巾で拭うと、雑巾はすぐ緑に変色した。代わりに祠は拭き取った部分だけが綺麗に元の祠の姿へと戻っていた。
まるでそこだけ千年前に戻ったかのようで、耳を澄ますとここに貢物をしに来ていた人たちの声が聞こえてきそうだ。




