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「終わりましたか? どれどれ……」
僕から二枚の型抜きを受け取った烏色はそれを暫く眺めて、ポイっと肩の黒いそれの口に放り込んだ。
「はい。確認しました。しっかり成功ですね」
肩でそれが咀嚼する。バリバリと言う音を鳴らすそれを特に気にした様子もなく、烏色は僕らの方に向き直った。
「そしたら景品が二つですね。まずはチューリップの方です」
そう言うと、犬のロボットから、小さな包みを渡された。中を開くと、小さな茶色い栗のような見た目の種が幾つか入っていた。
「こちらはチューリップの種ですね。綺麗な赤い花が咲くらしいですよ」
「へぇそれで、もう一つは?」
僕は花の種をポケットに仕舞う。
「こっちは、私が自ら手がけたものになりますよ」
自身満々な烏色に渡されたのは、手彫りのお面だった。薄く削られた木で出来ており、左右に白いゴム紐が、円になるように付いていた。
お面のイラストは、目の赤い猿のイラストが、これも巫女同様デフォルメされて描かれていた。
そんな何処かで見たことのある様なお面。だが、デフォルメされているお陰で、そこまでの抵抗感はない。
「ありがとう、運営だけじゃなく、祭りも楽しんでね」
僕はお面を斜めにつけて、見えなくなるまで僕たちに手を振る烏色と別れた。
一通り回った僕たちは、小屋のさらに奥。花火の打ち上げ場所まで来ていた。
そこには新たに黒塗りにされた二メートル半ほどの高さの
塔が幾本も出来ていて、その足元にセロはいた。
「お疲れ様」
「タイヨウ様。お祭りは楽しめましたか?」
セロは相変わらずの無表情だが、僕にはその無表情が心なしか疲れている様に見えた。
「うん。おかげさまで。他のみんなも楽しそうだったよ」
「そうですか」
僕の話に、セロの表情が少しだけ、柔らかくなる。
「セロはいいの?」
「えぇ。私はまだ、花火の準備がありますので」
そういってセロは隣に立つ、黒塗りの塔を撫でた。
「花火って、そこから打つの?」
「はい。きっときれいに咲きますよ」
僕が塔だと思っていたものは、ただの花火の発射台だったらしい。いったいどこまで、どれほどの花火を飛ばすというのだろう。
「花火までは時間がありますので、またお祭りを楽しんでいてください」
「うーん。そうは言ってもなぁ」
僕のお腹。というより心は最初に満たされて、あと木に成っていたものも一通り回った。
「そうだ。僕もここに居ちゃダメかな?」
「え、ここですか?」
セロは心底驚いた。という風に、その無表情の顔に手を当てた。




