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受け取ったところで、それを使う予定もない。僕はそれをポケットに仕舞い、次の屋台に向かった。
向かった屋台は型抜きだ。他にも食事の売っている屋台はあるが、やはりそうすぐに腹が減るようになるわけではない。
そんなこんなで僕はこういった遊びがメインの屋台を周ることにしたのだ。
型抜きも射的や福引同様、犬のロボットが店主をしていたが、その隣には烏色が立っていた。
「なにしてるんですか?」
「それが祭りまでの間、色々と回ってたら身銭が切れてしまい、こちらの屋台で働かせてもらっているのです」
「キュイ!」
烏色の肩に黒い、小さな鳥が停まる。鳥といっても、烏なんかの普通の鳥ではない。黒い靄が寄りの形をかたどっているだけだ。
「それ、小さくなるんですね」
「あぁ、なんかできました」
あっさりと言ってのけ、クルクルと喉を鳴らす。――喉という部位があるのかは疑問だが。その黒い鳥を撫でる。
「なんかできたって……」
「まぁまぁ、そんなことより。せっかく来たんですからやってってくださいよ」
烏色はそう言って、屋台の下からピンク色の小さな板を三枚取り出した。
それぞれ、傘やチューリップが書かれているものがあるが、三枚のうち一枚だけ、見たことのない絵柄だ。
「これは?」
「あぁ、これは」
僕は三枚目の、女性の顔のようなものが書かれた型抜きを見せる。
「巫女ですね」
「巫女って、あの?」
「はい。あの。いいでしょう? それだけ、私が作ったんですよ」
「あぁ、はは」
なんとも悪趣味というか。僕とは趣味が合わないのは確かだ。
しかし、その出来は確かなもので、他の二つの型抜きと比べても遜色ない出来だ。
僕は近くに置かれたテーブルに着き、置かれた針でちまちまと型を削る。
最初に削ったのは傘だった。傘の上、雨を避ける部分は時間をかけることで上手くいったが、持ち手の部分であえなく折れてしまった。
その次に挑んだのはチューリップだ。これは比較的簡単で、それほど時間もかからずに抜き切った。
最後に残ったのは、巫女の型抜き。あのとき見たものより、それはデフォルメされていて、その見た目はただの可愛らしく目を瞑る人形のようだ。
自作だからどんな難易度なのかと思ったが、巫女の形状も相まって、そこまで難しいものではなかった。
結局僕は、チューリップと巫女の二つの型抜きに成功した。




