106
「よう! 迎えに来たぜ!」
「あ、サルビアちゃん、ちょ、えっ?」
僕らが会話もなく二人座っていると、サルビアが扉を開いて入ってくると、返事を聞くこともなく、フウロを連れて行ってしまった。
「……行っちゃった」
ツキと二人。祭りももう始まっているのだろうか。
「ツキ、起きれる?」
僕がツキの頭をそっと撫でると、ツキは僕の手をするすると昇り、肩に絡まった。
「さぁ、お祭り行くんでしょ? 行きましょう」
凛とした。けれど、どこか真のない声でツキは僕を促した。
「うん。行こう」
僕は何も気づかないふりをして、小屋を出た。
外は締め切られたカーテンのような夜が広がっていて、そんな中をカーテンの隙間から漏れ出す光のように屋台の光が、点々と夜を照らしていた。
この広大なフィールドには見合わない人の少なさ。不思議と聞こえてくる喧騒と和楽器のような演奏は、所々に設置されたスピーカから聞こえるものだろう。元来の祭りの賑わいには敵わないが、僕とツキにはこのくらいがちょうど良かった。
時々にすれ違うのは、全員が見知った人ばかり。その全員がこれまでの旅で出会ったものたちだ。
「そうだ。やきそば」
僕はヘッダと約束していたのを思い出す。ちょうど小腹も空いて来た気がしないでもないから向かおう。祭りのスタートにはきっと、それが最適だ。
「お、よく来たな!」
少ない人のなかでも喧騒の集う場所はある。ここ、ヘッダの焼きそばの屋台はそのうちのひとつだろう。その腕でどうするのかと思ったが、調理するのはフウロとサルビアのようだ。
頭に鉢巻のようにタオルを巻いた二人が、汗をぬぐいながら焼きそばを焼く。
「お、タイヨウ! 来たか!」
「ツキさんも、起きられたんですね」
「それじゃあ、やきそばを一つ貰えるかな」
「おう! やきそば一丁!」
目の前で踊る麺は、暴力的なまでのソースの匂いを振りまく。鉄板の上が揺らめくほどの熱は、僕らまで顔から汗が出た。
「タイヨウ! 俺たちのやきそばはきっと美味すぎて止まらないぞ」
自信満々の笑顔に包まれたやきそば。まだ熱いくらいに出来立てで、僕は割り箸を口ではさんで割るとそれに口を付けた。
暴力的なソースの味に、乾いた麺。具だってそれほど特別なものは入っていない。どこにでもあるただのやきそば。
なのに――。
「どうして、こんなに美味いんだ」




