第43話
昨日の跡地に近づいてくると、遠目からでも分かる程に騎士や兵士たちがわらわらとしてるのが見えてきた。
……ありゃこれ以上は近づけんな。
……いや、どうせ今の見た目は人間だし、暴れてやるか? アリアナの使い魔としての俺には辿り着けんだろ。……まぁ、微妙か。危ないからって理由で学園が休みになったりしたら困るしな。
はぁ。仕方ないし、今日のところは大人しく帰るかな。
「ん? なんだ貴様? 服は……綺麗だな。少なくともパッと見は裏で生きるものでは無さそうだ。この辺りに何か用か?」
そう思い、引き返そうとしたところで、俺は騎士に見つかったみたいで、警戒した様子でそう聞かれた。
別に隠れてた訳じゃないから、見つかるのは当たり前なんだけど……どう答えようかね。
「騎士や兵士の方が大勢この辺りに歩いていくのが見えたもので……何かあったのかな、と思いまして、こっそり見に来たつもりだったんですが……申し訳ありません」
「……そうか。それが本当かは分からんが、もしも本当だった場合、この辺りには近づかない方がいい。もうさっさと引き返せ」
ふむ。
この感じ、一般の生物には隠してる感じか。
……隠せるような被害とは思えないんだが……確かに表通りでは誰もこんな事件があったことを気にしてる様子は無かったな。
……これも使い魔の力かね? それとも、ただの魔法か?
一応、魔法でマインドコントロール的なことが出来るからこそ、分からんな。どっちも可能性があるとしか言えんし、そもそも、現世の住人の勘が鈍すぎる可能性やシンプルに魔法とか使い魔特性とかそういうの無しで情報操作が上手いだけの可能性すらある。
「はい、分かりました。邪魔をしては悪いですしね……申し訳ありませんでした」
ま、少なくとも今は考えても分かることじゃないし、そう言って俺はその場を後にした。
……付けられてはいないな。
つまらん。
飯でも食いに行くか。
さっきは帰るつもりだったけど、せっかく昨日アリアナに貰った金がまだ残ってるんだから──ん? なんか、ケルベロスが悪魔の世界に帰ったんだが。
やっぱり、ソールの方にしとくべきだったかなぁ。
あいつなら、多分死んだとしても置き土産でアリアナを守ることくらいは出来ただろうし。
いや、ケルベロスが失敗したと決まった訳ではないか。
仕方なく、飯を食べに行くのをやめ、俺はそのまま寮に向かって転移をした。
アリアナは……無事……というか、寝てるな。
ぐっすり寝てやがる。
……俺が魔法を掛けたからなんだけどさ。
ケルベロスが悪魔の世界に帰った場所に行ってみるか。すぐ近くだし、歩いて……の前に、姿をアリアナの使い魔の時の悪魔の姿に戻しておこう。
戻しておかないと、見られた時に面倒だからな。
状況的に考え、もう不法侵入者がいるとはいえ……被害が出ていなければどうにかなったはずだ。……ただ、アリアナの部屋からでも分かるくらいには被害が出ているみたいだし、何かがあったことは誰が見ても分かってしまうだろう。俺が直すことはできるが……それはもう遅いと思う。
ケルベロスが帰った場には1人人間の気配があるし……不法侵入者を増やす訳にもいかんだろう。
当たり前だが、俺は捕まるつもりなんて無いしな。
ただ、捕まらなかったら捕まらなかったで不法侵入者が1人逃げたという事実が残り……学園が面倒なことになるかもしれん。
やっぱり、アリアナの使い魔として知られているこの姿で行くしかないな。
まぁ、さっき考えたマインドコントロール的なことをしてやってもいいんだが……俺の記憶違いでさえなければ、その場にいる奴ってあいつなんだよな。
なんか、記憶をそのままにさせとく方が面白そうだ。
そうして、ケルベロスが帰った場所まで来ると──凄くシュールな光景がそこにはあった。
……えぇ、なにこれ。……流石に予想外なんだが。
人間が1人死んでるっぽいのは別になんの問題もない。どう見てもあれは不法侵入者の1人……ケルベロスが動いていたことから、アリアナを狙った人間の1人だろうし。
ただ、なんで残りの2人は首を90度上に曲げながら、魔法を打ってるんだよ。首、痛くないの?
……しかも魔法を打ってる相手……花女は地べたに座りこんで額に汗を掻きながら目の前に土の壁を立てては壊されの繰り返し。
……いや、マジで何やってんの? これ。
俺は何を見せられてるんだ?
飯、食いに行っていいかな?




