第44話
「ッ、た、助けてください!」
俺がもうこいつらのことは放っておいて飯を食べに行こうか行かないかを悩んでいると、花女に気づかれたみたいで、懇願するようにそう言ってきた。
ただ……あれ、俺に言ってるってことには気がついてなさそうだよな。
暗闇だし、俺から見たらシュールで意味の分からん光景だけど、花女からしたら結構危ない状況みたいだし、人影だけを見て助けを求めたって感じだ。
ま、返事くらいはしてやるか。
助けてやるかは……反応次第かね。
「おやおや、外が少し騒がしいと思い様子を見に来てみれば……お昼頃、序列最下位……いえ、元最下位のアリアナ様に負けてしまった方ではございませんか」
「っ……あ、あなたは──い、いえ、今は四の五の言っている暇はありませんね。た、助けてください!」
「……?」
「な、何呑気に首を傾げているんですか! わ、私! し、死にそうなんですけど!」
「……?」
「な、何が理解できないんですか!?」
「いえ、私はてっきり大道芸の練習でもしているものと思っていたので、いきなり死にそうだなんて言われても……そりゃ、ピンとは来ませんよ」
「そ、そんなわけないじゃないですか!? な、何を言ってるんですの!?」
んー、ちょっと面白いな。
アリアナ程とはいかないけど……そうだな。メインの前の料理……前菜程度には悪くない。
そんなことを思っていると、花女に向けられていた魔法が俺の方にも飛んできた。
仕方ない。始末してやるか。
そもそも、俺が悩んでたのは魔法を打っていた2人を殺すか殺さないか、では無く、花女を助けるか助けないか、だから、どんな結末であれ、この2人が生きる未来なんて最初から存在しない可哀想な存在なんだ。
精々遊んでやろう。
ただ、その前に邪魔者を退かさなければならない。
俺は指を鳴らす。
「花──あなた。今すぐ誰か学園の教師を呼んできてください。仕方が無いので、私が戦っていて差し上げますから」
「わ、私もそうしたいんですけど……お、お恥ずかしながら、腰が──あ、あれ?」
「腰が、なんでしょう」
「い、いえ、なんでもありませんわ! い、今呼んでくるので……逃がさないでくださいね! 多分ですけど、その方たちが狙ってるのはあなたの主人だと思うので!」
ん? 分かった上で戦ってたのか?
意外……でもないか。
多分、成り行き上仕方なくってやつだろう。
別にどうでもいいな。
「あぁ、少し待ってください」
「な、なんですか」
「恐らく上空にあなたの使い魔がいるのですよね?」
「……それがなんでしょう」
「退かしてください。邪魔なので」
「……良いのですか?」
「えぇ」
「……ひとみちゃん、戻ってください」
案外素直に戻すんだな。
「……今日の昼の授業でひとみちゃんも消耗してるんですよ。力を使わせないに超したことはありません。それに、私としてはあなたが死のうとどうでもいいですし、そもそも、悪魔なんですから、死んでもどうせ生き返るでしょう。ひとみちゃんを戻さない理由がありません」
何も言ってないんだが、察したのか、花女はそう言ってそのまま学園の方に逃げていった。
あぁ、やっぱり消耗してたのか、あれ。
「人間……じゃない。……また悪魔……だと?」
「……視線が戻ったのは良いが……この学園には一体何体の悪魔がいるんだ。貴族ってのは普通、悪魔よりも使い魔の方が強いから、1人の例外を除いて悪魔なんて召喚しないものなんじゃなかったのか?」
「……どうする」
「……逃げるしかないだろう。俺たちは貴族じゃない故に、強い使い魔なんて持っていないんだからな。……少なくとも、今はもうさっきの方法を使いたくないのはお互い様だろう。3分の1ならまだしも、2分の1だからな。……それに、さっきの女が人を呼んでくるのも時間の問題だ。………………走れ!」
男2人が別々の方向に走り出す。
……なんか、俺、こういう奴らには逃げられてばっかりだな。
逃がさないけど。
「人間召喚」
「「ッ!?」」
これ、便利だな。
「何を……した?」
「さて、なんでしょう」
どうやって遊ぼうかな。別に殺したっていいが……多分生け捕りの方がいいよな。
殺したって普通に正当防衛になりそうだし、問題にすらならなそうだけど……縛りプレイとして楽しもう。
「……仕方ないか。……どうせ、恐らくこのままじゃ生き残ることは不可能だ。……おい、賭けるぞ」
「…………」
「?」
賭ける? 命をか? むしろ今まで賭けてなかったことに驚きなんだが。
「俺は妻と子供、お前は両親……行くぞ」
「…………仕方ない、か」
絶望したような雰囲気を醸し出し始める2人。
何を言って──
俺が答えにたどり着く前に……2人居た男の内の1人がいきなり吐血したかと思うと、胸を押さえその場に倒れた。
「……両親とお前の墓は立ててやる」
いきなり縛りプレイに失敗したんだが。




