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【書籍化決定】万年の時を経て降臨した転生悪魔、落ちこぼれ令嬢の使い魔始めます  作者: シャルねる


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第41話

Side:ケルベロス


「……不味いな」


 1番左の頭の口の中に入っている敵対者の1人の頭をペッ、と吐き出す。

 

「「ッ」」


「何を驚いてるんだァ? 俺は悪魔で、お前らは人間。……当然の結果だろォ?」


 相手の悪魔に対抗するなんらかの作戦を実行される前に、俺はもう一度地面を蹴った。

 そのままの勢いでもう1人も殺すために。


 その瞬間、今度は……俺の1番右の首が落ちた。

 

「……?」


 咄嗟に後ろに飛び退く。

 ……何が起きた?

 首が再生していくのを感じつつ、思考をフルに回転させる。


 あと少しで前足の爪があの男の頭を突き刺してたはずなのに……結果は俺の首が落ちている。

 ……ダメだ。

 頭が1つ足りないからか、何度考えても分からない。……本当に何が起きた?

 使い魔か……? だが、使い魔……というか、あいつら以外の気配は……ある? あるぞ。なんだ? この気配は……どこから出てきた?

 さっきまでは確実に──


「今更警戒したって遅いぞ、悪魔。確かに俺たち平民の使い魔は弱い。お前たち悪魔に対抗出来るような力は無い。だが、命を犠牲にした場合は別だ。……いくら悪魔といえど、頭が2つもあるんだ。もう分かるだろう?」


 ……まさかあの頭を食いちぎった男が死ぬのは想定の範囲内……作戦の内だったとでもいうのか?


「食いちぎられたのは予想外だったが、死ぬこと自体は想定の範囲内さ。死ぬのが我らの中の誰であろうとな」


 頭の再生の時間でも稼ぐ為に聞いたダメ元の質問だったんだが、敵対者のはずの人間は案外素直に答えてくれた。

 ……命を犠牲にした上での使い魔の召喚か。

 ……俺を昔殺した使い魔程の力は感じないが……あれとは違う意味で厄介なのは間違いのない相手だろう。


「さっさとその悪魔を殺せ」


 もう時間を稼がせてはくれないみたいで、冷静に相手は使い魔に対してそう言っていた。

 頭の再生が終わったからか。


 ……もういっそのこと属性魔法を使うか? 属性魔法さえ使えればどうとでもなる。

 だが、それであの小娘を起こしてしまえば結果は同じことになってしまう。……いや、起こすだけならまだいい。もしも少しでも被害が出てしまえば? 体にかすり傷でもついてしまえば? ダメだ。そんなこと、恐ろしくてできるわけがなかった。


 ……クソっ。……たかだか使い魔だなんて訳の分からん存在が俺を舐めるな。……簡単に考えろ。……殺せばいいだけだ!


 地面を強く蹴り、高速でその場から駆け出す。

 まずは使い魔の正確な位置の特定だ。

 気配で近くにいることは分かるが……正確な位置が分からん。

 だからこそ、走りながら3つの頭を振り、使い魔の位置を探る。

 

 見つけた、これだ。

 姿は見えないが、確実にここにいる。……能力は透明化か? ……いや、違う。ただの透明化なわけが無い。……能力が2つ以上ある? ……可能性はあるな。命を犠牲に召喚されてるんだ。他の使い魔と違う特別性があってもおかしくは無い。


 油断なんてするはずもなく、人間たちがなにかの魔法を打ってきているのを無視して、前足を振るう。


 使い魔に……当たった!

 それと同時に、俺の体に人間の魔法が当たるが……こんなもの、かすり傷にもならんわ!


「ガ──」


 興奮して、声を上げそうになるのを何とか抑えた。

 あ、危ない。

 せっかくなるべく静かに戦っているというのに、小娘を起こしてしまうではないか。


「んぅ……なんの騒ぎですかぁ」


「「「ッ」」」


 声が聞こえた瞬間、俺は全ての顔で息を飲んだ。

 恐る恐る視線を声の方向に向ける……も、あのお方に任された小娘の姿ではなく、そこにいたのは金髪の人間の女だった。


「「「ふぅ、ま、紛らわしいことを──」」」


 そこで安堵してしまったのが失敗だった。

 あのお方への恐怖心が強すぎるあまり、戦闘中だと言うのに、意識が逸れすぎてしまっていた。

 それが、ダメだった。

 気がついた頃には、全ての頭が宙を舞っていた。


「ぇ……?」

 

 最後にそんな女の声が聞こえたような気がした。

 身体から力が抜けていき、死に近づいているのを理解する。

 ……ただ、そこで力が湧いてきた。

 心の底から湧き出てくる恐怖心に押し出され、力が湧き出てきた。

 

 ダメだ。

 ダメだ。ダメだ。ダメだ。このまま、倒されることなんて、許されない。俺には、許されていない。


 後ろ足で地面を蹴る。

 今まで生きてきた中で1番強い力が入っていたかもしれない。

 

 そのままの勢いで見えない使い魔の体を爪を立てた前足を使って何度も何度も何度も何度も何度も、命が尽き、悪魔の世界に戻されるその瞬間まで、俺は刺し続けた。


 恐らく相打ちには持っていけたと思う。

 だが……敵対者は2人、確かに生き残っていた。

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