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14. 断罪されたジャンヌ一家 

◇ ◇ ◇ ◇



 こうして継母と偽りの異母兄と義理姉は全員断罪された。



 ジャンヌが息子のヤコブをジョージ子爵の子供だといったのは、全くのデタラメだった。


 

 ヤコブの父親はジャンヌが結婚した後、茶髪茶色眼の男と浮気した子供だった。


 なにより証拠となったのは、戸籍のヤコブの実年齢は十九歳だった事だ。


 戸籍に基づけばジョージが帰国した三年後にヤコブは生まれていたなら、ジョージとヤコブは赤の他人である。


 そして翌年ラーラも生まれていた。ヤコブとラーラは年子だったのだ。


  

 その茶髪男を見つけ出したのは、ジョージ子爵のお抱えの弁護士だった。


 

 弁護士もジョージ子爵が行方不明となり、心を痛めていてジャンヌに解雇されても水面下で隣国に渡り、ジャンヌの身辺調査を部下と共に地道に行っていたのだ。


 ジャンヌの知り合いに一人一人聞きまくって、浮彫されたのが中年の茶髪の男だった。


 このジャンヌの愛人は元は商家の御曹子だったが、まともに働かず家族からも勘当されてジャンヌのヒモとなった。


 それもジャンヌが伯爵と結婚した後すぐヒモとなり、その腐れ縁でずっと関係が続いていた。

 この愛人の他にも、ジャンヌは何人も愛人がいて、彼女が伯爵と結婚したのは明らかに金の為だと分かったと、調査した弁護士はいっていた。

 

 今回、見つけた愛人もヤコブが実の子だと知っていたが、ジャンヌが男の生活を保障してくれたので、ジャンヌに口止めされていた。

 

 だが突然、伯爵家が破産したらしくジャンヌと子供は愛人に何も言わず国を出てしまう。

 

 ジャンヌから縁を切られたと知った愛人は、調べにきた弁護士に洗いざらいジャンヌとの経緯をぶちまけたのだった。


 だが、どうしてジャンヌがこんな無謀ともいえる事を思いついたのだろうか。



 ジャンヌが結婚した伯爵家は相当財産があって、十数年は伯爵夫人として順風満帆(じゅんぷうまんぱん)だった。しかし伯爵が三年前に病死した後は、ジャンヌたちが遊蕩三昧で伯爵家の遺産を使いこんで破産させてしてまう。

 

 豪奢な屋敷も借金の抵当に入ってしまい、住む所を失い無一文となったジャンヌたち。


 ジャンヌもよほど切羽詰まったのだろう。


 そんな時に昔、恋人の一人だったライトブルー王国のジョージ子爵が外交官として、母国の王宮殿で何度か行き来しているのを見かけた事を思い出した。



『そうだ、確かジョージ子爵には、一人娘だけで息子はいなかったはず……あの男の髪と眼は茶色だったわ!』

 

 ジャンヌはヤコブをジョージ子爵の庶子として、今回の猿芝居を打ったのだ。


 

 婚姻届の印鑑もヤコブが侍従の恰好をして、ジョージの書斎に忍び込み、婚姻届に押印をしたとヤコブが白状した。


 初めジャンヌは警察内でもあくまでも「ヤコブはジョージの子供よ!」

と頑として言い放っていたが、茶色髪のジャンヌの愛人が弁護士に連れられてきた。


「あんた……どうしてこんなとこにいるのよ……」


 初めてジャンヌの黒い目が怯えた。



 愛人は茶色の濁った眼でやつれたジャンヌを見ていった。


「ジャンヌ、俺から逃げれると思ったか?──ヤコブは俺たちの子供だろ、誰が見たってヤコブは俺の若い頃にそっくりだよ。それにお前、死んだダンナに隔世遺伝だと誤魔化して大変だった、とあの時、俺に言ってたじゃないか」


「偉そうに……私のヒモのくせに……」


「ふ、そうさ、俺はあんたのヒモだ。お前は永遠に俺とは切れないんだよ、切る時は俺かお前のどっちかが刑務所に入る時だな」


「…………」


 ジャンヌも、まさか眼の前に愛人(ヒモ)が現れるとは夢にも思っていなかった。


 顔面蒼白となり、目は血走り唇がわなわな震えていた。

 だがようやく男が証人として来た事で観念したのか、ヤコブの事は嘘だったと白状をした。


 

 ジャンヌは婚姻の詐欺罪と、住居侵入罪及び窃盗罪、更にフロルへの虐待も追加された。


 

 また、ヤコブもフロルへの暴行未遂、ラーラはフロルへの階段から突き落とした過失致死傷罪など、三人とも母国へ罪人として強制送還させられた。


 

 その後、聞いた話ではジャンヌは余罪も次々と発覚した。

 

 祖国でも似たように多くの愛人から金銭を奪ったり詐欺をした罪も判明して“稀に見る悪女の伯爵夫人”と母国の社交界から、不名誉な名を残して終身刑となった。


 

 ヤコブも未遂だったので短い刑期を得て出所したが、変質的で歪んだ性質は変わらず、下層階級のゴロツキに成り下がってしまう。


 また、ラーラはまだ若い令嬢という事で、すぐに出所できたが、伯爵家の親戚から総スカンをくらい、誰も彼女を養女にしようとしなかった。

 

 

結局、ラーラは未婚のまま、辺境の修道院の下働きで余生を過ごした。




 こうしてジョージ子爵の優秀な弁護士チームや、コールマン伯爵の家令たちの働きで、偽装継母と子供たちの悪事が全て明るみに(さら)されたのだった。


 ジャンヌたちが刑務所に入ったのを知るや、弁護士チームやコールマン伯爵の家令たちは、コールマン家で盛大な祝賀会をあげた。


 もちろん、フロルとジョージ子爵も参加して、皆で連携プレイの勝利といって、ワインやシャンパンで乾杯した。


 フロルも成人だったので、シャンパンを飲んだが彼女はお酒が苦手ですぐにふら付いてしまう。


 フロルはコールマン伯爵に介抱されていた。


 

 二人を見つめるアメリアと、ジョージ子爵は直ぐに仲良しになった。





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