表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
潮風の神守り  作者: 灯野 しおん
第二部 第二章 渦潮の神

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
59/117

第三十一話 旅の夜

 その夜。

 蒼真たちは高松市内の小さな旅館に泊まっていた。

 大きなホテルではない。

 どこか懐かしい雰囲気の宿だった。


 夕食には香川らしい料理が並ぶ。

 魚。

 天ぷら。

 炊き込みご飯。

 そして。

 もちろん、うどん。


「またうどんだ」

 澪が笑う。

「最高じゃん」

 陸は嬉しそうだった。

「本当に好きだな」

 蒼真も呆れながら笑う。


 旅を始めた頃なら。

 こんな風に笑い合うこともなかったかもしれない。


 凪島。

 淡路島。

 鳴門。


 いくつもの出来事を経て。

 四人は少しずつ仲間になっていた。


 ◇


 食後。

 宿の大浴場へ行き。

 戻ってきた頃には。


 部屋には布団が並んでいた。

 窓の外では虫の声が聞こえる。


 誰からともなく。

 雑談が始まった。


「そういえば」

 陸が寝転がったまま言う。

「澪って淡路島から出たことあるの?」


 澪は少し考えた。

「修学旅行くらいかな」


「意外」

「神社の手伝いばっかりだったし」

 澪は苦笑する。

「小さい頃から神話とか祭りとかばっかりだった」


 その言葉に。

 蒼真は少し親近感を覚えた。


「俺も似たようなものかも」

「おばあちゃん?」

「うん」


 神話を聞きながら育った。

 祭りへ連れて行かれた。

 島の昔話を教わった。

 昔はただの思い出だった。

 今は全部繋がっている。


 澪は少し微笑んだ。

「だからかな」

「何が?」

「蒼真くんと話しやすいの」


 ◇


 部屋が少し静かになる。

 陸が目を閉じる。

 潮がお茶を飲む。

 タケルは窓の外を見ている。


 全員。

 聞いていた。

 蒼真だけが気づいていない。

「そうかな?」

「そうだよ」

 澪は少し照れながら笑った。


 潮は静かにため息をつく。

「重症」

 陸が頷く。

「末期」


「何の話?」

「気にしなくていい」

 二人同時だった。


 ◇


 夜も更けていく。

 笑い声も少なくなり。

 部屋は静かになった。


 その時だった。

 神代の鍵が光る。

 蒼真は飛び起きる。

 他の三人も気づいた。


 鍵が淡い金色の光を放っている。

 文字が浮かび上がる。

 今までで最も鮮明に。


 ――祭り火は島に眠る

 ――灰の下の願いを探せ


 さらに文字が続く。


 ――神代の道は潮に現れる

 ――天使の渡る道を辿れ


 澪が息を呑む。

「天使の渡る道……」


 潮がすぐに気づく。

「エンジェルロード」


 タケルが頷いた。

「やはりそうか」


 蒼真たちは顔を見合わせる。


 次の目的地。

 それは――

 小豆島。


 神話の名残が眠る島。

 オリーブの島。


 そして。

 第三の歌が待つ場所。


 窓の外には満天の星。

 その光はまるで。

 瀬戸内の島々を結ぶ神代の航路のように見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ