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おっさん異世界でフグをさばいていたら伝説になる  作者: 北真っ暗
1つ目の伝説

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第32話 ギルドに流れる噂

 昼過ぎに立ち寄った冒険者ギルドは、いつもと少し違う空気が漂っていた。依頼掲示板前に人だかりができ、ざわつく声が耳に入る。


「また帰ってこなかったのか?」

「遺品だけ見つかったって話だろ。完全に喰われてるな」

「密林だ。猛獣か?いや、魔獣かもしれん」


 ナカムラとコリーも足を止め、掲示板に目をやった。そこには赤文字で注意書きが貼り出されている。


『密林において複数の冒険者が行方不明になっています。捜索および原因を調査中です。そのため該当地域の依頼を受ける冒険者を制限しております。』


「……こわいね」


 コリーが小さく眉を寄せる。行方不明の意味はおそらく、死んでいると考えるべきなのだろう。それも複数だ。道に迷っているとも考えづらい。


「だな。原因が分からない以上、下手に動くのも危険だろう」


 ナカムラは肩をすくめる。このような張り紙がされるのは、依頼された内容に記載された期間を超えてもギルドへの報告が無いことを指すようだ。


「俺たちも密林に行く予定だったが、今の状況じゃ無理はできないな」


 しばらく二人は相談したが、密林に関してはもう少し状況が分かるまで様子を見ることにした。


 すっかり出鼻をくじかれた2人。当面の予定を決めるために、道中話し合いをする。久々に予定の無い日となり、露店で簡単に食べられるものを買い、歩いていると、コリーが少し申し訳なさそうな顔でナカムラに話しかけた。


「あのですねぇ、久々に村に戻ってみたいなぁって……?」


「村に?」


 ナカムラはコリーの提案を聞き返す。おそらく故郷の漁村の事を行っているのだろう。都に来て少し経つが、この提案は初めて聞いた。


「久々っていうか、初めての里帰りになるんじゃないか?」


「はい。都に来てからずっと目の前のことで精一杯だったけど……今回の冒険者ギルドの件で原因が分かるまで時間がかかるのなら、顔見せに帰るのは、どうかな~って」


 少し気恥ずかしそうな顔で、理由を伝えてくる。ここまで、新しい環境への適応や、様々な依頼を受ける目まぐるしい日々だった。少し成長した自分を見せに村に帰りたいという気持ちもあるのだろう。その表情は、期待と緊張が入り混じったものだった。ナカムラはうなずき、軽く笑う。


「いいんじゃないか。今は密林も危険だし、ちょうどいい休養になる。」


 コリーの目がぱっと輝いた。


「じゃあ決まりですねー!お土産探し頑張りまーす。」


 いつも以上に張り切ってコリーは歩き出した。二人は商人アキードの店を訪れた。商店街の一角にあるその店は、いつ来ても賑やかで、都の住民の出入りが絶えない。


「やあ、ナカムラさんにコリーさん。今日もごひいきに、ありがとうございます」


 陽気な笑顔を浮かべるアキードが迎える。今日は、店内に居たようだ。


 「アキードさん、今度フグの干物を仕入れにあの村に行く予定の商隊ってあるか?」


ナカムラが尋ねる。お土産を選ぶのもそうだが、訪れた一番の理由は、商隊に同行し安全な移動をしたいからである。


「ふむ、ちょうど近々、商隊が出向しますよ。その村なら、継続的に行っているので頻度も高いんですよ、多少落着きましたが、今もあの魚は需要がありますんで」


「本当!?」


 コリーが身を乗り出す。タイミングがよかったようで、思ったよりも早く帰省できることに喜んでいるようだ。


「よかった……!」


 アキードはその姿を見て、微笑む。


「うちで買ってくださったものなら 荷物運びも承りますよ。色々と買っていかれると村の方々も喜ぶでしょう。どうぞゆっくりとご覧ください」


 せっかくだから、アキードの店内を回り、お土産になりそうな品を物色し始めた。


「村の皆には何がいいかな……」


 コリーは棚を眺めながらつぶやく。都内でも大きな店である。各地方の特産品が並べられており、目移りしてしまう。


 ナカムラも、いくつもの商品を手にとり確認しながら、コリーに返事をする。


「村にないものだと喜ばれるんじゃないか、調味料などは手に入りづらいものも多い」


 アキードが横から口を挟む。


「おすすめは、都でしか手に入らない香辛料や甘味ですね。特に子ども達には、蜂蜜漬けの果実が人気ですよ」


「蜂蜜漬け!」


 コリーの目が輝く。甘い物好きの彼女にとっては、たまらないようだ。


「それにしまーす!」


 テンションが上がった彼女は、他にもないかと商品を眺めている。おしゃれな服なども置いてあるため、1つ1つかけてある服を取り出し、確認していく。


「これも! リリーが喜びそう」


 手に取った服を嬉しそうに抱える。村にいる妹の事はいつも気になっているのだろう。手紙を書いて送っているのを何度も見ていた。


「抱えきれなくなるぞ」


 ナカムラは苦笑しながら声をかけるが、コリーは止まらない。しばらく爆買いした後に、商隊の出立日と、待ち合わせ場所を確認して、2人はアキードの店を後にした。不穏な密林の事件は依然として冒険者たちの頭を悩ませていたが、二人にとっては束の間の休息となりそうだ。


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