第31話 作戦会議
ナカムラは、体内に取り込まなくても、結晶化できる技術について説明をした。
「有効活用の方法について考えたいと思う」
とナカムラは言い、真剣な表情で説明を続けた。
「結晶化すれば持ち運びは容易になる。だが触ると毒なので扱いには注意が必要だ。瓶に密封し、触るときは手袋を使わなければならない。それでも、うまく使えれば戦闘での応用は格段に広がる」
コリーは興味深げに頷き、ナカムラが作った結晶を眺めている。
「たしかにー!固形物なら、うっかりこぼしても危険は少ないですね。でも……どうやって戦闘で使うんですか?」
「一応、目星はつけてある。この後、寄ろうと思うんだ、ついてきてくれ」
ナカムラとコリーは、以前の武具商店に足を運んだ。専用の棚には様々な弓矢や投擲武器が整然と並び、壁には手入れされた長弓やクロスボウがずらりと掛けられている。店の奥では、細かい道具を手にした店員が作業をしていた。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
男性の店員は、穏やかな笑顔で二人を迎える。ナカムラは用件を簡潔に伝える。
「今回は、特注の矢を作りたい。ちょっと普通の矢とは違う。先端に小さなくぼみを作り、そこに薬なんかを仕込めるようにしてほしいんだ」
店員は驚いた顔を見せる。
「狩猟用に使う麻酔薬とかですかね?」
コリーも頷きながら補足した。
「はい、そうです。くぼみの形状を工夫したいです」
店員は考え込むように顎に手をやり、棚の端に置かれた各種矢の見本を手に取った。
「なるほど、通常の矢の先端だと、くぼみを作ると、矢の中心バランスを調整する必要があります」
ナカムラはうなずく。
「飛行精度は重要だ。命中率が落ちるのは意味がなくなるからな」
「承知しました」
店員は、作業台に向かい、紙に設計図のような簡単なスケッチを描き始める。
「矢の先端にくぼみを作り、そこに麻酔薬を埋めていきます。丈夫な鋼を使用し、貫通力を損なわないようにしますので、値は張ります。弓の種類や引き力にもよりますが、飛行精度は何度か調整する必要があるかもしれません」
コリーが興味深げに覗き込む。店員は笑顔で答えた。
「材料の準備と加工には、数日かかります。試作を作り、飛行試験も行いますので、安全に使えることを確認してから納品できます」
コリーは笑顔で頷く。
「楽しみですね。これで戦闘で少しは戦力になれるかも」
「じゃあ、今回はこの仕様で頼む。完成したら連絡をくれ。」
「承知しました」
店員はにっこり笑う。2人は店を後にする。
「まずは微量の毒で操作を覚える。安全確認をした上で戦術に応用するんだ」
コリーは深く頷き、特注の矢を使う自分たちの未来の戦術を想像していた。結晶化した毒を安全に運用できれば、これまで以上に自由な戦闘行動が可能になる。
「次はどの依頼で使ってみましょうか」
コリーが楽しそうに話す。
「まずは密林での小規模討伐か、湿地での探索だな」
ナカムラは答える。
「安全を確認しつつ、毒結晶の戦術を確立しよう」
そう言いながら、粉末化した毒結晶を、ドクウナギの粘液とかき混ぜて瓶に詰めている。
(複数の毒を混ぜれば強力だが、味方への被害も考えられる。致死性の毒は基本的には使わず、動きを鈍らす程度の濃度に調整し、瓶を投げつけたり、周囲にまき散らして忌避剤として使うためにも、液体の方が効果的な時もあるだろう……)
「それと、この技術は当面誰にも教えない。学者や商人も興味を持つだろうけど、露見すればトラブルに巻き込まれる可能性が高い。だから俺達だけの秘密にしておく」
ナカムラは決意を込めて言う。
こうして二人は、新たな武器と毒結晶の活用法を手に入れ、次の冒険に向けて準備を整えていった。
後日、湿地でのトカゲや、密林の大蛇などに試してみたところ、非常に効果的であったことが分かったが、毒矢や毒で汚染させた部位は切って捨てる必要があり、依頼内容によっては報酬が減額することもあった。結果としてあまり多用する手段でもないのも確認できた。それでも大きな戦力増強であることに間違いはなく今後の活用に期待できそうだと、2人の会議は連日、夜まで続いていた。




