アリスの秘策
「ロボ丸!」
目の前の惨状にステラが悲痛な悲鳴を上げる。
「ロボ丸が……喰われた⁈」
あまりの事態にわたしとアリスさんは思わず絶句してしまう。
そんなわたしたちを嘲笑うかのように、巨大イソギンチャクはぶるりと震え、再び元のスライム巨人へと高速変形をとげた。
「ヒヒ……!まずは一人!つ〜〜ぎ〜〜は〜〜……。」
スライム巨人が舌舐めずりし、まるで値踏みするかのような視線でこちらを見下ろす。
そのねっとりとした視線に生理的嫌悪感を感じ、わたしは思わず身震いしてしまう。
「このスライムお化けめ、ロボ丸を返せ!」
ステラは怒りに我を忘れ、スライム巨人目掛けブラスターを連射する。
BLAM!BLAM!
ブラスターから放たれる高密度魔力弾がスライム巨人の胴体を貫き、次々と大穴を穿つ!
胴体を貫通する大穴から、間欠泉のように腐敗粘液が吹き出す。
しかしスライム粘液が菌糸のように穴の中に広がり、ほんの一瞬の内に大穴は塞がってしまう。
なんという回復力だろう!
「ヒヒヒヒヒヒ!くすぐったいじゃないか!イタズラはいかんぞ?人形くん?」
スライム巨人はステラの必死の攻撃をまるで意に介する事なく、悠然と佇んでいる。
「それなら!これで!」
ステラはブラスターをソードモードに切り替え、スライム巨人目掛け斬りかかった!
スライム巨人は咄嗟に腕をもたげ、ステラの斬撃を防ごうとする。
SLAAAAAAAAAAAAAAASH!!!!!!!!!!!!!!!!
巨人の腕を肩口から両断!
斬り落とされた腕が胴体から離れ、地響きを立てながら地面に転がる!
「やった!……ふぇ⁈ 」
再び斬りかかろうとしたステラが驚愕で顔を強張らせる。
スライム巨人の肩口から細い触手が何本も伸び、切断された腕を引き寄せ、再び繋ぎ合わせたのだ!
スライム巨人は手のひらを握ったり開いたりして感触を確かめた後、わたしたちを見下ろしニタリと嗤った。
「それならもう一度!」
「よさんか!何度やっても無駄じゃ!」
再び斬りかかろうとするステラをアリスさんが呼び止める。
「でもはやく助けないと、ロボ丸が……!」
「落ち着きなさい、ステラ。このまま闇雲に攻撃を続けても、魔力を無駄に消耗するだけだわ。」
「……!!!了解、マスター!」
ステラは歯を食いしばり、悔しげな表情で踏みとどまった。
ステラの気持ちはわかる。
わたしだってロボ丸のことを助けてやりたい。
でもアリスさんの言う事ももっともだ。
相手は規格外の回復能力をもった怪物。
どれだけ攻撃を加えてもすぐにその傷は癒えてしまう。
現状最大の火力を誇るステラのブラスターをもってしても、攻撃が一切通用しない。
このまま攻撃をつづけても、ただいたずらに魔力を消耗するだけだろう。
これまでのやり方ではダメだ。
なにか他に手を考えないと……!
ふと隣に立つアリスさんの横顔を見る。
彼女の顔には不思議と絶望の色は浮かんでいなかった。
かわりにそこにあったものは『逡巡』だ。
何かをためらっていて、決断しかねている。
どこか焦りにも似た、そんな表情。
「アリスさん、何か手があるんですね?」
わたしの問いかけに対し、アリスさんはビクッと肩を震わせ、どこか呆けたような表情で私を見た。
しかしそれはほんの一瞬のことで、またいつもの凛々しいがどこか抜けている彼女の表情に戻った。
「……手ならある!しかし、リスクが大きい。はっきり言って、成功の確率は低い。一か八かの賭けじゃ。」
「やりましょう、アリスさん!一か八かでも、リスクが大きくても、何か手段があるならやってみるべきです!やらなきゃやられるだけですよ!」
わたしの言葉に決心を固めたのだろうか。
アリスさんはこくりと頷くと、澱みのない真っすぐな瞳で私を見つめた。
「……わかった。確かにお主の言う通りじゃ。こうなったら覚悟を決めてやるしかあるまい。今こそ解放しよう、メイガス・ギアに隠された真の能力『魔導合体』を‼︎」
_続く




