9.小さな体の大きな守護者
前回のあらすじ。
魔王城へ向かうため、試練の洞窟を進む三人。
そこに現る、謎のゴーレム。
戦闘時、なぜか亮輔の様子がおかしくなってしまう。
一同がピンチに陥る中、現れたのは、小さな青年でー
ゴーレムの一撃が生んだ風が、銀色の髪をかきながす。
小さい身丈と、綺麗に整った髪型、そして少し長いまつ毛は横から見てもとても綺麗に見える。
「三人とも、怪我はないか? この洞窟すんごい複雑で、少し迷ってしまったよ。遅れてしまって、悪いな」
ははっと笑う顔に、八重歯がみえる。
顔は童顔、どちらかといえば女子っぽいのに発せられる声はとにかく低い。
それだけじゃなく、私やみんなよりも小柄なのに、その態度からは貫禄すら感じさせられた。
「いやいやいや、助けてくれたのはありがたいけどあんたどちら様で?? なんでオレ達を?」
「君たち、星城学園の生徒だろう? 制服だから、すぐわかってさ。いてもたってもいられなくて」
「その服装的に、あんたもだよな? それにしては見ない顔な気がするが……」
「無理もないな。今年から、星城学園に転入することになってたし。改めて、俺は土屋慎。ここではガーディアンってのをやってるんだ。こうみえて、三年生だ。よろしくな」
「三年……って同い年じゃねぇか!! みえねー!」
「ははっ、よく言われる。本当は別のギルドも組んでたんだが……色々あって独り身で。とりあえず魔王城めがけてここ入ってったら、ピンチのお前らを見つけたってわけ」
そういう彼は、私たちより立派な防具をしていた。
ガーディアンっていうと、守備力が高い職業……だよね? それにしては武器が大きい剣なのは、不思議だけど。
まだ他にも、うちの学校の生徒いたんだ……
「いやー、まじ助かった!! あんたがいなきゃ、どうなってたことか……」
「いいって、困った時はお互い様だろ?」
「ほら、火野もなんか言えって!」
「……別に。助けてなんて、頼んでねーし」
「お前なぁ」
「ははっ、威勢がいいなぁ。回復薬なら持ってるから、彼に使ってやってくれ。あいつは、俺がなんとかしておく」
「え、相手ゴーレムだぞ? さすがに無理があるんじゃ……」
「心配ご無用」
すると、彼はその場をパッと離れる。
大きな剣を左に構えながら、ゴーレムに突っ込んでゆく。
そんな彼に気づいたゴーレムが、また何か攻撃しようとする。
またでかいのがくる、そう思ってつい目を瞑ってしまう。
「やぁぁぁぁ!!」
そんな心配は、本当に要らなかった。
体より大きな剣だというのに、それを思いっきり振りかざす。
大剣が岩肌を叩き割る。
巨体に大きな亀裂が走り、轟音とともにゴーレムは崩れ落ちのだ!!
「えぇぇぇ!? つ、つよっ!!」
「………なんだ、あいつ……どうみても、ガーディアン向けの攻撃力じゃねぇだろ……」
「も、もしかして、土屋君って、結構、強い……?」
私の囁きに、彼ら二人が目を合わせる。
何を思ったのか、柏木君がにやぁっと笑って見せてー
「ふう……なんとかなったな」
「すげーな、土屋!! ゴーレム一撃とか、チートじゃん!!」
「あれは君たちが戦って、ダメージを減らしてくれたおかげだよ。俺だけの力じゃないさ」
「かぁぁ、人柄も何もかも文句ねぇ!! なあなあ! お前、独り身って言ったよな!!? せっかくなんだし、オレらとくまね!?」
……ハイ??
「実はオレ、剣士なんだけど武力からっきしでさ。もう一人も未熟魔法使いで、火野に頼りっきりで……今みたいなことになると、困るじゃん? だから前衛がいてくれると、ありがたいなぁって」
「気持ちは嬉しいが、いいのか? 後ろの子、すごい首振ってるが」
「あー、あれはいいの。人見知りなだけだから」
よくないです!! 全く良くないです!!
お願いです、これ以上知らない人増やさないでください!!
そりゃあ戦力になるのは、間違いないかもしれないけど!!
「こいつのいうことはあながち間違いじゃねぇ。一人増えた方が早くここから抜けれる。悪い話じゃないと思うが」
「で、でも、私……これ以上人が増えるのは……」
「人見知りしてる場合かよ。文句あるなら、攻撃の一つや二つかませば?」
「そ、そんなこと言われてもぉ〜〜」
「あー……悪い、俺はやめとくわ」
不意に、土屋君の顔が暗くなる。
しまった、露骨に嫌な顔をしすぎた、なんて反省するも、彼が断った理由は意外なものだった。
「その子が嫌がってるのもあるが……俺は、ギルドに向いてないらしい。ガーディアンといえば、普通後衛だろ? なのに俺は、異様に力が強くて。前に出過ぎたのか、外されてしまってな……」
「つまり、あんたもバグ持ちってことか」
確かに、彼のいう通りだ。普通ガーディアンは、守りだけが特化する職業。
それなのに彼は小柄な体型に似合わない大剣で、しかも一発で魔物を倒せてしまう力を持つ。
これも、私たちのようなバグのせい、なのだろうか。
「え、よくね? 守りも攻めもできるって。むしろ無敵じゃん。それの何が悪いわけ?」
それでも柏木君は、そんなこと関係ない、とばかりに笑う。
な? と同意を求められ、私も少し頷いた。
「い、いいのか? 俺なんかが、ギルドに入ってしまって。俺の職業、扱いづらいんだぞ?」
「えーそうか? オレ的にはすげーいいと思うけどな〜。な、火野」
「……まあ、足手まといにはならなそうだな」
「だろだろ?! つーわけで、オレは柏木晃! こっちの火野亮輔は、一時的にオレらに合流してくれてて……あとは、成瀬水帆な!!」
「か、柏木君!! また名前……」
「転入生なら、元の成瀬のことなんて知らねーだろ。だから、そんなに気にすんな」
ああ、もう。敵わないな、この人には。
それでも仲間が増えることはいいことなんだし、ここは認めてしまおう。
それに彼のいう通り、私のことなんて知らないだろうし……
「え、えっと、不束者ですが、よ、よろしく、お願いします」
咄嗟に、九十度の勢いで頭を下げる。
すると彼は、なぜか不意に笑い出してー
「ちょっとー? 何笑ってんだよー?」
「いや、お前ら、すげーいいチームだなって思ってさ」
「は?? 勝手にチームに入れんな。さっきこいつもいってたろ、僕は城に行くまで一時的にいるだけで……」
「あー、はいはい。わかってますって。それで、土屋は? どーしたいんだ?」
土屋君が、私たちを見渡す。
その顔はとても晴れやかで、何だか嬉しそうに見えてー
「……そんじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかな。俺のことは慎でいいよ。よろしくな、みんな」
そうして私たちは、新たに仲間となった土屋君とともに、ようやく洞窟を抜けることになったのですー
(つづく!!)
おまけの小ネタ
慎が仲間になった!!!
慎「そういえば、三人はどこから来たんだ? 俺はあっちから来たんだが」
晃「えーっと、北の方かな? 始まりの地って書いてた」
慎「ちょうど反対方向か。どうりで同じ制服の人がいないわけだな……やっと会えて安心したよ」
水帆(……火野君、柏木君、土屋君……そういえばみんなバグ持ちだな……こんなにバグが普通にあるなら、柏木君にもバグでこうなったっていえばよかったのでは???)
晃「そいやくる途中にキャンプあったんだけど、もしかしてお前の? 色々あって助かったよぉ〜」
慎「前のギルドが、色々教えてくれてな。それより……」
水帆(ていうかこの状況、きまずすぎない!? 男3の女1って、一歩間違えればハーレムだよ! 他の女子に見られたらどうしよぉぉぉ!)
慎「彼女はどうしたんだ? 一人で頭を抱えてるが」
亮輔「しらね。ほっとけ」
晃「やっぱ成瀬おもしれーよなー」
今更すぎる女。




