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8.凸凹ギルドの訳あり事情

前回のあらすじ。

晃と水帆は、魔王城に近づくため試練の洞窟へ。

途中、亮介と再会し、コウモリの敵と共闘する。


キャンプを経て、仲を縮めた三人は

一時的にギルドに加入することにー


「でぇりゃっ!!」


斧の鋭い一撃が、敵に放たれる。

一匹、二匹とゴブリンや鬼を模したモンスターが倒されてゆく。

誰もいなくなった道に、彼ー火野君ははんっと鼻で笑った。


「ったく、邪魔臭え。殺されるくらいなら向かってくるなっての」


私たちーかしわなるは、三人になって洞窟内を探索していた。

唯一前衛の火野君が中心に、敵を倒しながら先に進んでいる。

正直、私たちの出る幕なんてない、というほどに。


「お前すげーなー。ほとんどの敵一振りで倒すとか。スライムとか、逃げちゃってるぜ?」


言われてみれば、脇道に震えてる小さな敵がいるのがわかる。

それだけ、火野君は強い。二人だった時とは比べ物にならないくらい、道が楽だ。

正直、敵なんじゃないかって思うほどの気迫だし……


「むしろあんたらが使えなさすぎんだよ。武力ゼロとか、冗談かと思ったら攻撃力1だの、10だの……なさすぎにも程があるだろ。よくそんなんで魔王城いこうとしたな」


「いやぁ、なんとかなると思って?」


「おまけに成瀬本人は魔法どころか、逃げてばっかだし」


「す、すみません……」


「まーまー、喧嘩すんなって! おっ、なんか光が見えるぜ! これでやっと出られる!」


柏木君が歓声を上げる。

疲れで肩を上下させながら、出口の光にほっと肩を撫で下ろす。

と、そんな時だった。


『ガガガガッ!』


洞窟全体を揺るがすような地響きが轟く。

バランスを崩し、思わず壁に寄り添う。

気がつくと目の前に、出口の空洞を塞ぐように、巨大な岩人間が競り上がってきたのだ!


「え、何これ? 岩? 人間??」


「え、えっとぉ、ゴーレム、だと思います、多分」


「どーでもいいけど、出口前に座り込んでんじゃねーよ。邪魔」


火野君が、足で蹴る。

それと同時に、ゴーレムの目が光ったような気がしてー


『ターゲット、補足』


……え??

途端、ゴーレムは動き出し、私達に襲いかかってきてー


『チョーカ様の命令のもと、試練を開始します』


その言葉に、なぜか火野君の耳が動く。

気のせいだろうか。彼の足元の地面が、ミシミシと音を立てているような気がした。


「やっぱり……ここにいるんだな」


すると彼は持っていた斧を、強く握り直す。

次の瞬間、ゴーレムの拳と彼の斧がぶつかり合ったのだ!


「ま、待て火野! あれはデカすぎる! いったん引いて……」


「んなの待ってられっか!!!」


柏木君の静止なんて、聞くことはない。

斧を構えた彼は、ゴーレムに向かって行く。

そして、なんの躊躇もなく、斧をふりおろしてー


「どけよこのデカブツがぁぁぁぁ!!」


彼の目が、赤く光ってる気がする。

一撃一撃が、さっきまでとは比べ物にならないほど重い。

その攻撃の強さで、ゴーレムの右腕が砕け、岩片が辺りに飛び散る。

が、問題は、ゴーレムだけじゃなく、洞窟の壁までもその攻撃を当てていて……


「ひ、ひぇぇぇ!! ど、洞窟がぁぁ!」


「落ち着けって、火野! このままじゃ、洞窟が持たねーだろ!! どうしたんだよあれ。なんか、らしくねーぞ?」


「も、もしかして、暴走してる、とか……?」


「それってあいつもバグ持ちってことじゃねぇか!! と、ともかく、なんとかしねぇと……」


そういうと、柏木君は辺りを見渡す。

火野君の攻撃はどんどん乱暴になり、もはや私たちなんて気にせず攻撃をかましている。

なんだか、別人だ。少し、怖い。

まるで何かに憑りつかれているようで……


「とにかく、ゴーレムの動きを止めよう! 成瀬! 氷の魔法、使えるか!?」


と指示してみせた。

うまくいくかなんて、わからない。でも彼を助けるためなら、きっと……!


「こ、氷よ。動きを、止めて! フリーズ!!」


私の放った魔法によって、水の粒が一瞬で氷へ変わる。

なんとかゴーレムの足元を覆い、動きを止めた。

その間に、私たちは火野君の元へ近づいた。


「おい火野! 大丈夫かっ!?」


「……」


柏木君が、必死に声をかける。

それでも火野君は、まっすぐゴーレムを見つめている。

まるで、声なんて聞こえてないとでも言うように。

これが、火野君のバグ……なの……?


『オォォォン!』


私の叫びも虚しく、ゴーレムはあっという間に氷を壊してしまう。

よくもやったな、とばかりにその場で咆哮する。

そして同時に、大きな拳が、私たちに飛んでくるーーー


もうだめだ、おしまいだ。

私の人生、こんなところで終わっちゃうの……?


「危ないっ!!」


どこからか、声がする。

と同時に、キィィィィン!! という凄まじい金属音が洞窟中に響き渡り、火花が散る。

ゴーレムの攻撃との間。そこには巨大な大剣が、地面に突きたててあってー


「ふう……なんとか間に合ったな」


聞き覚えのない低い声が、きこえる。

その胸元や服には、私たちと同じ校章があってー


「よっ、大丈夫か?」


そこには、大剣にとても似合わないくらい、小柄な少年がいたのだ!!!


(つづく!!)

おまけの小ネタ

ゴーレム戦前にて。


晃「なー待ってくれよー、火野〜足早すぎ〜」


亮輔「急いでるって言ったろ。ついてこれないなら、容赦なく置いてく」


晃「ひでー言い方。大丈夫かー、成瀬」


水帆「……は、はい……あの、呼び方……さっき火野君のこと、名前で……」


晃「あー、あれ? 名前で呼んだらすげー怒られるんだよ〜。一応ギルドの仲間なのに、ひどくね?」


亮輔「僕がいるのは一時的だ。あんたらと馴れ合うつもりは……」


晃「あっ、みろよこのきのこ! 攻撃力アップだって! 食べてみね?」


亮輔「はぁ? 生できのこ食えるわけねえだろ。また休みたいってか? そんな暇は……」


晃「じゃあこの石!! 魔力増強だって! 持って帰りてぇなぁ。獲りにいっていい?」


亮輔「人の話聞けよ!! どんだけ寄り道すんだよあんた!!」


水帆 (なんだかんだでいいコンビだなぁ……)


かしわなるは今日も平和です。

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