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7.未完成な私たちの第一歩

前回のあらすじ

魔王城へ向かうため、亮輔を追い、

近道だと言う試練の洞窟に向かう。


慣れないダンジョン攻略をするなか、

手強い敵を力を合わせて戦った三人は……

どれくらい、進んだだろう。

肩で息をしながら、私は宙を仰ぎ見る。

進んでも進んでも変わらない光景に、少し嫌気がさす。

暗い洞窟の中はまるで、鳥籠のようだ。

先が見えないのが、こんなにも大変だなんてー


「おっ、ラッキー。キャンプあんじゃん。ちょっと休憩して行かね?」


柏木君が、にっと笑う。

つられてみると、そこには空洞になっていた場所があった。

誰かが休んだのか、枯木が山積みになっている。

それをみた火野君は、いち早く難色を示した。


「は? やだよ、そんな誰がやったかもわからねーやつ。先を急いでるんだ、休む暇は……」


「休むのも冒険のうちっていうだろ? ほら、さっきの戦いの疲れだってあるし」


「あんたら何もしてないよな?」


「せかせかしても、いいことないって〜なあ成瀬?」


彼の問いかけに、しどろもどろになりながらも頷く。

火野君の鋭い視線が向いた気がするけど、私はあえてみないふりをした。

それだけで察したのか、火野君は大きすぎるため息をつき、


「……少しだけな」


と、そのキャンプ場に腰を据えた。


その後は、ほとんど柏木君のペースだった。

慣れた様に火を起こし、慣れた様に干し草で椅子を作ってくれる。

いつのまに採取していたのか、きのこや果実を焼いては、食えと言わんばかりに私にくれる。

戸惑いながらも、私は一口、二口とゆっくり食べ始めているとー


「なあ。オレ、ちょっと席外していい?」


と言って………え?

席外すって、火野君と二人きりになるってこと?!

そ、そんなの耐えられない!!


「なん、でですか。休憩は……」


「ほら、ここにくる途中、地面に落ちた石、あったろ? あれ売ったら金になるんじゃねーかと思ってさ」


「で、でも、危ないですし……火野君と二人きりになるのは……」


「大丈夫だろー、少しくらい。てかさ、せめてその喋り方やめね? 前みたいに、タメ語で話してくれよ。オレのことだって、苗字よびだったろ?」


「む、無理です……」


「キャラでそこまで変わるの、ほんとすげーよなー……じゃ、ちょっくらいってくるわっ」


あああ、まってぇ、行かないでぇ〜!!!

私の心の叫びも虚しく、彼は手を振りながらどこかへ行ってしまう。

途端に気まずい沈黙が始まり、思わず体を縮こませる。

どうしよう、どうしよう、どうしよう!!!

私、この人と話したことないのに!!!


「………なあ、あんた」


「はいっ!! すみませんでしたごめんなさい!!!」


「まだ何も言ってねぇだろ……まじで、あの成瀬なのか?」


そういえば、彼にはまだギャルがキャラだったことを話していない。

柏木君にバレてしまったヘアピンは、こっそりポケットにしまっている。これ以上、他の誰にも知られるわけにはいかない。

だから、ここは……!


「……本人、です。信じて、もらえないかもですけど」


「にしては学校と別人じゃねーか。なんでそんななりに」


「この世界に来た、バグ……みたいなもので……私にも、よくわからない、んです」


「ふーん、バグねぇ……そーいや、あの加納とかいう女が言ってたな、力がどーのこーのって。性格まで変わるとか、いい迷惑だよな」


果実を豪快にかじる姿は、思わずかっこいいと思ってしまう。

よかった、なんとか誤魔化せたみたい……

騙してしまったみたいで、少し心が痛いけど……


「あ、の、火野君にもあるんですか、その、バグ……」


「この職業自体がそーだろ。バーサーカーって何って感じだし、武器は使いづらいったらないし」


「で、でも、バーサーカーって強いんですよ。普通のRPGだと上級職ですし、職業の中だと異常に攻撃力が高くて……」


「へぇ、詳しいんだな。ゲームとかするんだ?」


「あ、えっと、少しだけ……」


「ま、強いならありがたいかな。ここから早く帰れるなら、なんでも」


その拳が、ぐっと握られる。

まるで何かを覚悟したかの様な、そんな顔。

RPGのゲームをすることが多い私は、バーサーカーのイメージは大体ついている。

教室の隅で静かに過ごす印象だった彼が、バーサーカーだなんて意外だ。

そういえば彼は、最初から先を急いでるような……


「あ、の。どうして、そんなに、先を急いでるんです、か……?」


「あ?」


「すすすすみません!! 帰りたいのは私も一緒なんですけど……ずっと急いでるから、気になって!」


「いちいち謝るなよ……別に、探してる人がいる。それだけ」


その瞳は真剣で、思わず目が離せなくなる。

詳しく聞いていいのかな、でもむやみに人に聞くのは……


「……ま、城に近づくまでなら、一緒に行動してやっても、いいかもな。あんたの魔法だけは、悪くなかったし」


……え? 今、褒められ、た??

つい顔を向けるも、彼はそっぽを向く様に目を逸らす。

がぶりとかじりつくその耳は、少し赤らんでいてー


「はい、いただきました〜っと」


思わぬ声に、つい驚いてしまう。

いつの間に戻ってきていたのか、柏木君がにやにや笑っていた。


「か、柏木!! い、いつから聞いてた!?」


「その言葉を待ってたんだよぉ〜、火野が組んでもいいって言ってくれるまで♪」


「こいつ……!」


「オレ的にはその、バー……なんだっけ? 強いと思うし、バグだって思わなくてもいんじゃねーの?」


「バーサーカーだ!! あんた一番ゲームとかしてそーなのに、そんなのも知らねーのかよ!」


「あははっ、まーいいじゃん! さっき一緒に戦ってみてわかったけど、お前つえーじゃん。火野がいてくれたら、オレら助かるんだけどなぁ〜」


柏木君が、「な?」と私に目を配らせる。

私も、同じ気持ちだとばかりにうなづいてみせる。

火野君は歯軋りしながら、しばらくすると小さな声で、


「……わーったよ。仕方ねえな」


と、頬を赤らめながら私たちに言ってみせた。


「やりぃ〜んじゃ、きまりな! 一緒にがんばろーぜ、亮輔♪」


「馴れ馴れしく下の名前で呼ぶな!! 言っとくが、近づくまでだ! あとは知らん! 二人でやれ!!」


「えーー、つれねーこというなよ〜同じ穴のムジナ同士、仲良くしよーぜ〜?」


「ムジナいうな!! あと肩組むんじゃねえ、暑苦しいんだよ!!」


「採取ついでに、先に進めそうな道を見つけたんだ。ひょっとしたら、出口に繋がってるかもしんねーぜ?」


そういうと彼は、にっとウインクしてみせる。

もしかして柏木君、あえて私と彼を二人きりに……?

そう思うも、その疑問を口にする勇気はない。

柏木君も、火野君も、私が思ってた以上に、優しい人なのかな……?


「おーい、何してんだよ成瀬。早くいこーぜ」


「モタモタしてると、本当においてくからな」


はっとする。

少し前にいた二人が、私を見ていた。

前を向くと、柏木君がにっと笑う。

口ではおいていく、と言いながらも、私のことを待っていてくれてる火野君がいてー


「は、はい! 今行きます!!」


二人が、言い合いながら先をゆく。

なんやかんやあったものの、私と柏木君だけだったギルドに、とりあえず一人仲間が増えました。


(つづく!!)


おまけの小ネタ

亮輔が仲間に加わった!!(仮で)


亮輔「いっとくが、城につくまでだ。正式には入ってない」


晃「へーへー、わかってますよー。何回言うんだよそれ」


亮輔「こうでもしねえと、あんたすぐ調子乗りそうだからな」


晃「ひっでー言い方。いえば、成瀬はどーだった? 少しは話せたか?」


水帆「い、一応……でも……こんなんでやっていけるか、不安になりました」


晃「そう拗ねるなよーー、仲間になったんだし結果オーライじゃん?」


水帆「そもそも柏木君が悪いんです。私の名前言っちゃうし……」


晃「偽名使えねーんだし、嘘言ったところですぐばれてただろ? さっきも謝ったんだから、そんな怒るなって〜悪かったからさ〜」


亮輔「……あんたら、意外と仲良いんだな……」


なんだかんだでいいコンビ。

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