6.孤独な狂戦士と未熟な私たち
前回のあらすじ
晃と「かしわなる」のギルドを組んだ水帆。
が、中身は武力ゼロと陰キャ魔法使いという役立たず。
そんなとき、ギルドから外された亮輔と出会う。
彼を仲間にしようとする晃だったが、
冷たく断られてしまい……
「えーっと、火野が行ったのはこっち……だったよな。地図見る感じ、どーやら城にいく近道っぽいけど……名前が怪しすぎるんだよなー」
ひんやりとした空気が、肌をなでる。
足早すぎる火野君になんとかついていった先ー、私達はとある『試練の洞窟』にたどり着いた。
天井からは絶え間なく水滴が落ち、足元にはひび割れた岩が転がっている。
少し踏み外せば転びそうなくらい、道は凸凹。
まさに、ダンジョンって感じの場所だった。
「いかにも何かありそうだなぁ。あ、足元気をつけろよ」
恐る恐る進む私と違い、柏木君は宝箱や壁のくぼみを見つけるたびに駆け寄っては目を輝かせている。
私なんて、転ばないようについていくだけで精一杯なのに。
たいまつで先を照らしながら、彼はそういえばと思い出すように話し出した。
「火野、どこまで行ったかなぁ。そう遠くにはいってねーと思うんだけど」
「……あの。火野君を、仲間にするんですか?」
「まー、候補っつーの? 強そうだし、あいつも一人だからちょうどいいと思って……なりゆきでお前のこともバラしちゃったし、一応な」
彼の言葉に、思わず萎縮する。
事故とは言え、彼にバレてしまったことは痛い。
そりゃあ一緒にいた方がいいのかもだけど……
正直、怖い。私がいることで、彼をもっと怒らせてしまいそうでー……
「ん? なんか、聞こえね? 羽音……みたいな」
そう言われ、耳をすましてみる。
しばらく歩いていくと、開けた場所に出る。
そこには、金属が激しくぶつかる音と、羽や鳴き声が聞こえてきてー
『キキキキキキ!!』
それは、コウモリに似たモンスターだった。何匹も何匹も、飛び回っている。
こちらに気づいたのか、揃いも揃ってぎょろりと私をみてくる。
思わず息を呑んだ、その瞬間、
「ふせろっ!!」
鋭い声が、洞窟に響く。
同時に、激しく重たい一撃がコウモリ達を一掃する。
その先には、大きな斧が振り下ろされていて……
「やっぱりお前らか。ついてくんなって言ったろ」
そこには、火野君がいた。
斧を軽々と背負いながら、まるで敵を見るような目で、私たちをギロリとにらみつけている。
それに対し、柏木君はいつもの調子で話しかけた。
「よぉ、火野。すげー量相手にしてんなぁ、加勢するぜ」
「いらない、邪魔になるだけ」
「え? でも、この数はきけ……」
「この程度、僕一人で十分なんだよっ!」
柏木君の静止なんてきかず、火野君は問答無用に斧で攻撃をかましていく。
速く、力強く、迷いなく。
その攻撃は、コウモリを一匹、二匹と数を減らしていく。
それでも、嘲笑うかのように、こうもりはどんどん数を増やしていった。
「ちっ、キリがねぇな! こんなとこで足止めくらってる場合じゃねえっつうのに……」
「火野! 上だ!」
柏木君の声が、洞窟内に響く。
同時に、火野君は反射的に身をかがめる。
間一髪、彼の頭上すれすれを、コウモリの群れが通り過ぎた。
「火野! 落ち着け! 一匹ずつ追わない方がいい!」
「指図すんな!! これくらい、僕一人で……!」
「こーゆーのは、群れをまとめて叩いた方がいい! オレが引きつける! その隙を図って、攻撃を当ててくれ!」
そういうと、柏木君は石をコウモリに投げつける。
まるで、こっちだと引き寄せるように。
その狙い通り、コウモリたちは一心不乱に柏木君を追いかけていく。
「足……引っ張んじゃねーぞ」
その様子を見た火野君が、斧を静かに構える。
火のような熱い気が、彼の斧にまとっていく。
「成瀬!!」
「は、はい!! 私ですか!?」
「浄化でも、なんでもいいっ! 光が出る魔法ないか!? それを放ってくれ! 頼む!!」
ええ!? そんな急に言われても……!
どうしよう、どうしよう……!!
ああ、もう! 考えてるだけ時間の無駄だ!!
隙を作れれば、きっと……!
「こ、コウモリさん、あっち行ってぇぇぇ!!」
私の叫びが、洞窟中に響く。
瞬間、ものすごい眩い光が、杖から発せられた。
驚いたコウモリ達の動きが、止まる。
すると火野君が、鬼のような形相で斧を振り翳してー
「ぶっとべぇぇぇ!!!」
炎を宿した一撃が、鋭くコウモリに一閃する。
どさり、と最後の一匹が地面へ落ちる。
あんなにいたこうもり達は、一匹残らず姿を消していた。
「た、助かったぁ……」
「二人とも、怪我はないか? 噛まれたり、ひっかかれたりしてねーか?!」
柏木君が、血相を変えてやってくる。
自分も息切れ切れなのに、私の外傷がないか気にしてくれているようだった。
「助けてなんて頼んでねーのに、余計なことしやがって」
「お前なぁ、この世界で死んだらどーなるかわかんねーのに、何かあったらやばいだろ」
「だからって助ける必要はねぇだろ。それに、たかがコウモリ相手に」
「あのなぁ、コウモリに噛まれたり、引っ掻かれたりするだけで狂犬病をはじめとする感染症の危険性があるんだ。甘く見てたら痛い目見るぞ」
「ふーん……あんた、なんでそんなこと知ってんだ? やけに詳しいが……」
「て、テレビでみたことあんだよ! ついてきたことは謝る。でも、一人じゃあぶねーのはわかっただろ? せめてここから出るまでは、一緒に行動しねーか?」
彼が、優しくいう。
それでも火野君は、ため息と舌打ち混じりに、
「……まあ、出るまでならな」
と言い放つ。
なんだか、不思議だな。さっき会ったばかりで、喧嘩しかしてないのに。
この三人なら、案外うまくやっていけるのかもしれない。なんて思いながら、私たちは奥の方へ進み始めたのだった。
(つづく!!)
おまけの小ネタ
晃「はーーーたすかったーー」
水帆「こうもりって、結構、強いんですね……ありがとうございます、柏木君」
晃「いやいや、成瀬の魔法もたいしたもんだぜ? ナイス根性」
亮輔「……あんたら、職業何?」
晃「え? 剣士♪」
水帆「ま、魔法つかい、です」
亮輔「にしては弱すぎねーか? ほとんど僕が倒したもんだし。僕の邪魔だけはしないでほしいんだが」
晃「あー、それは無理だな。オレら武力ゼロ剣士と、初心者魔法使いだから♪」
亮輔「……はぁ?」
晃「にしても助かったわぁ〜。火野がいなきゃ、今頃詰んでたし! 持つべきものは元クラスメイトだな!」
亮輔「使えなっ!! そんなんでよくここに来ようと思ったな!? 地上に戻れ! 修行積み直してこい!」
晃「え〜そんなこといわずにさぁ〜」
水帆(だ、大丈夫かなぁ……)
前途多難。




