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5.残り物には福がある?

前回のあらすじ

ギャルだとバレてしまった水帆。

晃の機転により、二人でギルドを組むことに!


幻術を得意とする魔法使いになった水帆の一方で、

晃は武力ゼロの剣士で……?

広い、広い大地を、ゆっくり踏み締める。

魔王城まで続く長い道のりと、次々に現れる敵に、思わずため息をつきたくなる……


「っしゃぁ!! スライム一匹うちとったりぃ!!」


そんな私とギルドを組んだ変わり者……じゃなかった、救世主、柏木君が声をあげる。

元の世界に戻るため、魔王城に目指すため準備をしている。

とりあえず周辺にいる敵を倒そうというのが、柏木君の提案だ。


「はーー、30分かかったーー。やっぱ武力ゼロきっついなぁ〜、一匹倒すだけで効率悪いったらねぇよ」


「す、すごいですね柏木君……剣を使うのなんて、初めてなのに……」


「こーゆーのは使って慣れるもんだろ? てことで成瀬、お前も魔法使ってみね?」


私がギャルに戻れないのと同じように、彼は剣士なのに武力ゼロ、というバグらしい。

なんて迷惑なバグなんだろう……そのおかげで、レベルを上げても強くなった気がしない。

返事をためらっていると、彼は相変わらずの優しい笑みで私に、


「オレが引きつけるから、てきとーに魔法打ってみよーぜ」


と言ってみせた。

柏木君が連れてくるスライムに向かって、とりあえず魔法書を唱えてみる。

しかしでてくるのは火の玉一個とか、氷の刃が少しだけで、ダメージもスライムの体をかすめる程度でー……


「すみませんごめんなさいもう二度と魔法打ちません」


「いやへこみすぎw 大丈夫だって、一体は倒せてるから! んーー、やっぱ二人だけで突き進むのは厳しいよなぁ。仲間、探さね?」


その言葉に、おもわずつまってしまう。

仲間……つまり、他の人と組むってこと。

人見知りな私にとって、レベルを上げる以上に難しいことで……


「ほら、オレらどっちも前衛向きじゃないだろ? 今はなんとかなっても、二人だけじゃろくに戦える気がしねぇし。たりないギルドにでも入れてもらおうぜ。その辺にいい冒険者いねぇか探す、とかしてさ」


「……えっ、あの、知らない人と組むんですか?」


「そりゃそうだろ〜他の奴らがまだいるかわかんねーし。つーか今の成瀬的に、知り合いがいるのはきまずくね?」


た、確かに……これ以上誰かにバレるのは避けたい……

嫌々ながらも、彼の仲間探しに同意する。

敵と同時に、他の冒険者がいないか探していた、その時ー


「いい加減にしろ!!」


怒ったような叫び声が、響く。

と同時に、何かを投げつけたような音もした。

振り返るとそこには人が二人喧嘩していて、投げ飛ばされた人が怒ったように睨みつけている。

その顔は、どこか見覚えがあってー


「ってぇな……何すんだよ、この役立たず!!」


「役立たずはどっちだよ! 人の言うこと聞かずにつっこみやがって! もうちょっとでサブが死ぬところだったんだぞ!」


「知るかよ。あんたらがちんたらしてるからだろ」


「やってらんねぇ! いくぞ、お前ら!!」


リーダーっぽいガタイのいい男の人が、3人の仲間を連れて違う方向へ行ってしまう。

取り残された一人は、わかりやすく不機嫌に舌打ちしていた。

黒髪、校章がある制服……間違いない、星城学園のものだ。

ということは、彼も私らと同じー


「あれ、うちの制服じゃん。てか火野じゃね?」


視界の中に、柏木が入ってくる。

振り返ると、いつの間にか隣にいたはずの彼がいなくなっていた。

しかも話しかけてまでいる。

見るからに不機嫌な彼は、めちゃくちゃ鋭い目でこちらを睨みつけて……


「あ? 誰だよあんた」


「オレだよ、オレ。2年の時、クラスメイトだった柏木晃。まさかこんなとこで知り合いに会えるとは」


「柏木ぃ?? あー、あのサボり魔野郎か。まだこんなとこにいるのか? 出遅れてんのダサ」


「いやぁ、オレらも色々あるんだよ。なあ?」


ひぇ! 私に話振らないで! この人、めちゃくちゃ怒ってるから!!


「あ、あの、この人って……」


「あれ、成瀬しらね? 火野亮輔(ひの りょうすけ)。去年、同じクラスだったんだよ」


ああ……どうりで見たことあると思った……

うちの学校、ただでさえ人が多いし、私自身記憶力がないから、名前と顔を覚えるの大変なんだよなぁ……

って、ちょっと待って? 今、私の名前言ったような……


「……おい。今、こいつのこと、成瀬って言わなかったか?」


「ん? あー………言ったっけ?」


「どう考えても言っただろ。あんた、成瀬なのか? あの怒られまくりのギャル女?」


うぇぇぇん、バレたぁぁ!!


「ち、ちが、います! 人違いです!」


「ふーーん? なら、プロフ見せろよ。名前の一つや二つくらい、別に見てもきにしねぇよなぁ?」


「……すみませんでしたごめんなさい」


「落ち着けって二人とも。事情は後で説明する。で、何があったんだよ」


彼がいうと、火野君はため息をつく。

その顔に、なんとなくきらりや久美子がイケメンだと騒いでいたことを思い出す。

いつも一人で、誰かといるところを見たことがないから、静かな人なのかなって思ってたけど……


「城に行くまでの近道を知ってるって聞いてな。その割にのんびりいきましょーとか、仲間同士助け合っていきましょー、とかぬるいことばっか言いやがって……こっちは急いでるっつーのに」


「あー、それで喧嘩してたのか。みたとこ、ここの世界の人だったけど、よかったのか?」


「……けっ。あんなギルドこっちから願い下げだ。あんな連中と組んでたら、一生城に着けやしねえ」


思ってた以上に怖い人……そうです。

おそらく、火野君は前衛の職業なのだろうか?

彼の背中に、大きい斧があるのがみえるけど。

気になっていても口に出せない私とは違い、彼は直球に火野君に聞いた。


「なあ火野、すんげー物騒な武器持ってっけど、職業何?」


「あ? バーサーカーだけど」


「ばーさー……? よくわかんねーけど、その武器的に、前衛っぽいのは間違いねえよな? なあ、オレらとくまね?」


さすが陽キャ、と言うべきなのか。彼はいとも簡単に、彼を勧誘してみせる。

しかし火野君は、かなり嫌そうに顔を顰めた。


「やだよ、冗談じゃねえ。誰が問題児集団に入るか」


「んなこというなよぉ〜オレら、魔王城に行くって目的は一緒だろ? 同じ学校なんだし、一緒に行こうぜ!」


「どーーだっていいわ。僕は忙しいんだ、あんたらに構ってる暇はない。僕は一人で行く、ついてくんじゃねーぞ!」


「なんだよーつれねーなー」


柏木君の言葉を最後まで聞かずに、火野君はさっさと行ってしまう。

そのスピードはとにかく早く、あっという間。あんな重たいものを持ってるとは思えないくらい。

火野君……なんであんなに、急いでるんだろう。

まるで、何かに怒っているような……

彼は残念そうに口を膨らましながらも、


「ついていくなっていわれると、ついていきたくなるよなー」


とニヤリを笑う。

本当に、この人は人との距離を縮めるのが上手だな。私には、とても真似できない。

なんて思いながら私は小さく頷いてみせた。


(つづく!!)

おまけの小ネタ

晃のレベルがあがった!!

晃「おー、レベル上がった。スライム倒すだけでもあがるもんだなー。いやー、助かるわ」


水帆「お、おめでとう、ございます」


晃「成瀬もあがってんじゃん。ギルド組んでると、経験値も一緒にもらえるんだな?」


水帆「み、たいですね……何もしてないのに経験値泥棒してすみません……」


晃「気にすんなって! さて、これだけレベル上がったし、ステータス的にも上がったかも……」


しかし、晃の武力は0のままだった!


晃「いや、なんでだよ!! せめて1はくれよ!」


水帆「で、でもMPは高いですよ!」


晃「そんなのあっても役にたたねぇだろぉ〜? オレこんなんで、城に着けるのかぁ?」


水帆(MPだけでも十分すごいんだけどな……)


二人の苦難はもう少し続く!!

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