4.陰キャが陽キャとギルドを組んでみた結果
素の陰キャに戻ってしまった水帆は
元の世界に戻るため、一人奮闘する。
が、かつてのクラスメイト、
晃に正体がバレてしまった!
しかし彼は思いのほか優しく、
ギルドを組もうと声をかけてくれて……
鼻歌が、聞こえる。
それが彼のものだと気づくのに、時間は要らなかった。
異世界にきてすぐ。こともあろうほか、正体がバレました。
しかも相手は、あの柏木晃。
正直最悪だ、いいことなんてない。なんて思っていたのに。
笑わないとか、言わないようにするとか、かけられたのは優しい言葉ばかり。
どうして、ここまでしてくれるんだろう。
今の私なんて、何も役に立てないのに……
「すんませーん、彼女の登録お願いしたいんすけど」
「はい、お名前をお願いします」
「えーっと、成瀬水帆で」
!!!?
「ま、待ってください。本名で登録すると、ほ、他の人に……」
「それがさー、これ偽名禁止なんだよ。多分それもバグなんじゃね?」
そ、そんなぁぁぁ。
「大丈夫だって! 他人の空似ですーとかいっときゃ、なんとかなるだろ!」
陽キャって怖い……私にとっては死活問題なのに、なんとかなるさで済ませられちゃうなんて……
「それでは適正を検査しますので、こちらに手をかざしてくれませんか?」
その言葉に、思わず柏木君の顔を仰ぎ見る。
大丈夫だ、と言わんばかりに彼はうなずいてくれた。
恐る恐る手をかざすと、そこに出た紋様は全く読み取れない記号のようなものだった。
「ほほう、これは珍しい。幻術使いの魔法使いですね」
「……えっ、幻術?」
「水と氷にも適性がありますが、幻術が極めて高いです。姿を変えるとか、そういうのができますよ」
え、何それ聞いてない。
それができるなら、ギャルに戻ることも可能ってことでは!!?
「あ、あああの!! そのやり方ってどうするかご存知ですか!?」
「え? あー、はい。この魔法指南書にすべて……」
「ちょっとお借りします!!!」
「あ、お客様!?」
いてもたってもいられなくなった私は、受付の人から本を取り、その場を後にする。
誰にも見られないような裏の方へ回り、一心不乱にページを捲る。
姿を変える魔法……姿を変える魔法……どれだろう、ありすぎてわからない……
あっ、一つだけある……これ、かな……?
「幻よ、私の姿を、かえて!! ……と、トランス、フォーム!!」
魔法の杖が、光る。
次の瞬間、光が私を包み込むと、一瞬で消えてしまった。
「で、できたのかな?」
私は慌てて自分の髪を触る。
黒い、ボサボサな髪だ。触りたくもない。
恐る恐る頬にも、触れてみる。そばかすも、そのままだ。
……ああ、やっぱりダメ、なのかな……
「おーーい、成瀬〜〜置いてくなよ〜」
追ってきたのか、私を見つけた柏木君がやってくる。
私は彼に恐る恐る、自分の魔法の結果を聞いてみた。
「ったく、急に走り出すなよ〜。受付、全部オレがやったじゃぁん」
「す、すみません………あ、あの柏木君……つかぬことをお聞きしますが……わ、私……何か、変わってたり……しませんか?」
「いや? 全然?」
……ですよねぇ。
私の願い、秒で崩れ去る……
「そう落ち込むなって。敵倒してたら、魔法も少しはレベル上がって、姿変えられるかもしんねーだろ? とりあえず、これでも食べて元気出せって!」
「あ、ありが、とう、ございます。これ、どこで……」
「情報収集ついでに、売店あったから適当に買っといた。ここの世界の地図ももらってきたぜ?」
さすが陽キャ、何から何まで用意周到だ。
まさか、手当たり次第聞いてきたのだろうか。コミュ力が凄すぎる……
「聞いたところ、あの先生は魔王城にいるらしいぜ? 物騒なとこにいるよなぁ。ここに飛ばしたあたり、マジで魔王だったりするんじゃね?」
そう言われて、地図を覗き見する。
結構離れたところだ、ここからでもかなり厳しい。
あの先生、本当に何者なんだろう。
辿り着いたところで、元の世界に返してくれるのだろうか……
「とりま、オレと成瀬でギルド組んどいたから。ギルド名は、かしわなる♪」
「て、適当すぎませんか……?」
「こーゆーのは後々いいのが思いつくもんだろ。さ、いこーぜ?」
彼の明るさ、優しさが私の不安を少しずつ和らいでくれる。
彼と一緒なら、どうにかなるのかもしれない。
いつか、元の世界に戻れる日がーー
「あ、ちなみにオレは剣士なんだけど。多分バグのせいで、武力皆無なんだわ。まあでも、役立たずはお互い様ってことで、許してくれよなっ♪」
………はい????
(つづく!!)
おまけの小ネタ
柏木晃が仲間に加わった!!!
晃「そんじゃま、よろしくな〜わからないことあったら、なんでも聞いてくれよなっ」
水帆(なんでも、かぁ……ギルドを組んでるわけ、だし、色々聞いてた方がいい、よね……な、何聞けばいいんだろう……)
晃「にしても、このサンドイッチうめーなぁ。肉とか異世界にいる動物の使ってんのかな? 成瀬はサンドイッチの具、何が好き?」
水帆「えっ、あっ、トマト、とか……」
晃「健康的だなぁ。オレはやっぱ肉いっちゃうわぁ〜他によく食べるもんとかねぇの?」
水帆「……と、特には……あ、クレープ、とか好きです……久美子ちゃん達と、食べに行くので」
晃「確かに、あいつらすげー甘いものの話してるもんな。オレだったら、唐揚げとか肉まんだなぁ。放課後に食うとすんげーうまいよな♪」
水帆(い、いつのまにか会話をリードされてる……恐るべし陽キャ……)
自称、コミュ力お化け。




