3.ギャルになれない私の、意外な救世主
前回のあらすじ
異世界に飛ばされてしまった水帆。
しかも、ギャルでない陰キャに戻ってしまった!?
元の世界に戻るためには、結の元へ
ギルドを組むことでー
「きぃらぁりぃ!! マジ良かった! めっちゃ探したんだよぉ〜」
「久美子〜やっと知り合いに会えたし〜!」
「ねえ、水帆しらない? みたとこうちの学年全員いるっぽいんだけど、水帆だけがいないんだよね〜」
「え? マジ?? 水帆、目離すとすぅぐどっか行くんだよなぁ〜また隠れてたりして!!」
「あはは、いえてるぅ!!」
きらりちゃんと久美子ちゃんが、けらけら笑いながら去ってゆく。
すみません、その水帆ちゃんは今、ほぼ別人としてここにいるんです……
どうして、こうなっちゃったんだろう。
こんな姿じゃなければ、あの二人と合流だってできたのに。
それもこれも、あの加納とかいった先生のせいだ。
一刻も早く、元の世界に帰らないと……
「冒険者登録はこちらでーす。どうぞ〜」
その言葉にびくっとする。
受付のカウンターにいるお姉さんが、声をかけていた。
おそらくここで、職業をきめるのだろう。冒険者っぽい人達が、次々に話している。
まずはここを突破しないと。そう自分に言い聞かせ、恐る恐るカウンターへ向かうが……
「はい、登録する名前をどうぞ」
「……るせ、み……ほです……」
「はい? なんですか?」
「だ、から……るせ、みず……」
「すんませーーん、登録お願いしまーす。ん? 今、先客いたか?」
「気のせいだろ。あの、登録したいんすけど。いいっすか?」
はい、これが私です。コミュ障すぎてすみません。
私のバカ、自分の名前すら登録できないの?
お父さんお母さんごめんなさい。私はもう、異世界で暮らすしかないようです……
「すんませーん、質問があるんですけど……っと!」
「きゃっ!!」
そんな時、後ろにいた人に気づかず、ついぶつかってしまう。
顔をあげると、そこには見慣れた顔があってー
「かしわ、ぎ………」
白いシャツに、同じ校章。綺麗なほど染まった茶髪が、目に入る。
それは、柏木晃だった。
始業式の時、一番に先生の言葉を否定してくれた人。
2年の時に同じクラスだったし、彼の存在は目立つから、私でも知っている。
だから、つい呼んでしまったんだ。彼の名前を。
それがいけなかった。
「オレの名前知ってるんだ? ……あれ、どっかで会ったっけ?」
今の私は、素の姿なのだから!
「し、失礼しましたぁぁぁぁ!!!」
今すぐ逃げよう、とすぐにその場を後にしようとする。
しかしそんな私の逃げ場を防ぐように、大きな声を上げた。
「待って! これ、成瀬の……だよな?」
彼の手にあるのは、雫型のヘアピン。
あっちの世界から唯一持ってこれた、大切なものだ。トレードマークとして、学校にもつけていっている。
それを同じクラスの彼が、知らないわけがない。でも私は、必死に言い訳をした。
「誰、ですか、成瀬なんて。しり、ません」
「本人が話してるの、聞いたことあるんだよ。お気に入りだって、つけてるのだってみたことあるし。……お前、ひょっとして成瀬なのか?」
「えっと、えっと……あ、姉のを借りまして……」
「あいつ一人っ子だぞ」
あ、これもうだめだ。私のバカ、言わなくていいことまでクラスで言っちゃって。
ああ。これはもう、逃げられないな……
「お願いします!! このことは誰にも言わないでください!!」
咄嗟に地面に擦るように、頭を下げる。
恥ずかしさと、絶望で涙が出てきそうになる。
それでも彼から飛んできたのは、思いもかけない言葉でー
「……あー、わかったわかった。誰にも言わねぇから。とりあえず、頭あげてくんね?」
私の思っていたこととは裏腹に、彼は「あっちで話すか」と手を差し伸べてくれた。
「で、つまり。お前は成瀬水帆ご本人で? 本当はギャルなんかじゃなくて、根っからの陰キャだった、ってことか?」
その言葉に、どんどん体を縮こませてゆく。
登録所の外、私たちは小さい声で話していた。
今まで、バレることなんて一度もなかった。
素顔を見せるのは、誰もいない時だけ。
だから地味な私とギャルの私が結びつくことなんて、ありえなかった。
それなのに、たった一つのヘアピンで、あっさりとバレてしまうなんて……
「はぁぁぁ〜キャラねぇ……いまいち信じらんねぇわ。お前、本当に成瀬本人?」
「………だから、そう、言ってるじゃないですか……」
「だとしたら、雰囲気変わりすぎにも程があるだろ。見た目といい、その口調といい……別人にしか見えねーよ。違和感すげーんだが」
「……そ、それがキャラ、ですから……」
「まあでも、なんとなく合点いったわ。お前、人と話す時の目線、一回も合わせねーもんな」
ぎくり、とする。まさか、そんなところまでバレていたなんて。
笑われる、絶対。あんなに堂々としてた人が、こんななってるんだもん。
いや、むしろ騙したなって怒られるんじゃ……
「……そっか、大変だな。お前も」
……あれ? 笑われ、ない?
「なんか、ごめんな。話したくないこと、話させちゃって。このことは誰にも言わねーようにしとくよ」
「え、あ、言いふらしたり、しない、の?」
「しねぇよ、オレをなんだと思ってんだ。……って、それがオレのイメージか」
彼が自嘲したように笑うのを、思わず顔をあげる。
その目が、少し寂しそうに曇った気がしてー
「てか、なんでそんな格好に? いつものお前なら、最部とか脇野あたりと一緒にいってるはずじゃね?」
「……そ、それが、ギャルに戻れなくて……あの先生いわ、く、バグ……みたいなものらしくて……」
「あー、それで一人で困ってたのか……だったら、オレと組まね? ギルド」
思わぬ言葉に、えっと変な声が出る。
すると彼は、いつもの明るい調子で答えてみせた。
「実はさ、オレギルド組めてないんだよ。ギルドって最低二人で行けるみたいだし、一人よりは早く帰れるかもしれねーだろ? 組んでくれたらめちゃくちゃ助かるんだけど」
「む、無理ですよ! 私、人と話せないし! 今の私じゃ、何の役にも立てない……」
「その姿じゃ、オレ以外の人とギルド組めねーだろ。それとも、一生ここにいるつもりか?」
うぐっ……正論すぎて何もいえない……
どうして、彼はこんなに優しくしてくれるんだろう。
そもそも学校で話していた彼と、友達から聞いていたイメージと、違いすぎる。
これは、本当に柏木晃、なの……?
「そうと決まれば、まずは冒険者とギルド登録からだな。さっきのとこ戻るか」
「あ、の……どうして、そこまでしてくれるんですか……? 私なんかと組まなくても、柏木君には友達たくさんいますよね……?」
「ん? そーだなー、強いていえば……オレも、同じだからかな」
その笑みが、また寂しそうに映る。
いつもクラスでみていた彼とは違う、どこか胸に残るような笑みでー
「とりあえず、冒険者登録しようぜ? 話はそっからだな♪」
彼の優しそうな笑みが、私の心をくすぐる。
断る権利なんてない私は、迷いながらも小さく頷いた。
(つづく!!)
おまけの小ネタ
きらり「ねぇねぇ、うちらの苗字って地味じゃね?」
久美子「えー、急にどったん」
きらり「いやぁ、異世界きたから名前変わるかと思ったらそのままだったからさぁ。最部きらりっつったら、あのお姉さんに二度見されたし」
久美子「えー、でもうちよりはましじゃない? 脇屋久美子、なんて昭和すぎるし。しかもさー、苗字と名前合わせると『脇役』になるんだよ? やばくね?
きらり「え、それじゃあうちは『モブ』じゃん! やば、主役になれる日こなくね! うける!」
久美子「あー、水帆と話したいな!! さっさと帰ろ!!」
実際、それが名前の由来です。作者談。
水帆「……今、誰かに噂されてる気がする……」
晃「おーい、成瀬ー。置いてくぞー?」




