2.成瀬水帆、終了のお知らせ
前回のあらすじ
三年生になった新学期。
学年集会にて現れた新任・加納結により
水帆達はとある世界へ飛ばされてしまいーー
風が、頬を伝う。
その心地よさに、うちは目を覚ました。
ここは、どこだろう。
周りを見ても、ちっともわからない。
『お目覚めかしら、成瀬水帆さん』
その声に、思わず声をあげる。
そこにいたのは、先ほど壇上にいた加納先生……に似た妖精だった。
二頭身になっていて、ふよふよ飛んでいる姿がとても可愛らしくて微笑ましい。
そんな彼女が、うちに向かってにっと笑いかけてー
『ども〜新任教師の結、ミニでぇす。ようこそ、アレーテイアへ。ここはあなたたちのために私が作った、補修場よ』
……ハイ?
『あ、こーゆー時は異世界って言った方がいいのか。その方がテンション上がるわよね……やっぱ今の忘れて』
え? いやわからんわからん。何がどうなってるんだこれ。
いやいや、異世界って。そんなアニメみたいな設定あるか普通。
これから花の高校三年生生活だってのに、なんの冗談……
『それにしても、印象すごい変わるのね〜あなたって。事前情報がなければ、わからなかったわ』
この人は何を言ってるんだろう、目をぱちぱちさせる。
すると彼女は小さな体で、大きな鏡を取り出す。
途端、目に飛び込んできたのは信じられない光景でー
「う、嘘! 何これ!!」
何度も何度も、顔や手を確かめる。
黒髪。眼鏡。学校ではつけたことないはずの度入りの分厚い眼鏡が、しっかり顔に乗っている。
小麦色に塗った肌の色も元通りだし、瞳のフチのカラコンも消え、嫌というほど消したそばかすがくっきり見えていてー……
「な、なんで、なんで戻ってるの!?」
成瀬水帆には、秘密がある。
誰にも言えない、うちだけの秘密がーー
「ひえええ! み、見ないでくださいいいいい!!」
『あら、いい反応っぷり。これがあの成瀬水帆だなんて言ったら、みんなどう反応するかしら』
そう、うちーいや、私はギャルなんかではない。
ぼっちになりたくなくて、必死にギャルを演じていただけの陰キャなのだ。
かつらのセットだけで、毎日1時間。
スカートだって短い丈は苦手だし、そもそもネイルだって何時間もやっている。
なぜここまでするか、って? そんなの、全部学校に馴染むため。友達を作るため。
当然、このことは誰にも言っていない。あえて中学の知り合いがいない遠い学校を選んだため、知ってる人だっていない。
なのに、なんで……なんでこんなことに……
「も、戻して、ください。今、すぐ」
『えぇ〜戻したいのはやまやまなんだけどぉ。ここの世界に来てから、コントロール効かないのよね〜。私も困ってるのよ〜、あなたたちを送ったら元の世界に帰ろうと思ってたのに』
「そ、そんなことあります!?」
『とりあえず私が言えることは、元の世界に戻りたいなら、ギルドを組んで私の元へ辿り着きなさい。あなたの友達も、まだその辺にいるでしょ?』
そう言われ、ようやく顔をあげる。
そこには確かに、何人もの人々が彷徨っていた。
その中に見慣れた人がいる。きらりちゃんに、久美子ちゃんだ。
普通なら、友達がいれば大丈夫じゃん。と思うだろう。
普通なら、だ。
「………せめて、元の姿に、戻して、ください。私、あの姿じゃなきゃダメ、で……」
『さっき言ったでしょ、無理なものは無理。異世界に来たバグみたいなもの、かしら。せっかくの機会なんだし、諦めて素の自分で頑張りなさい。ヘアピンだけは無事なんだから、いいでしょ』
そう言われてふと右手を見ると、気を失う直前に掴んだヘアピンがあるのがわかる。
どうやら、これだけは無事に持ってこれたらしい。
これだけあったところで、どうしようもない。
だって私は、みんなの知ってる成瀬水帆じゃないのに。
どうしたら、いいんだろう。
『まっ、せっかくの異世界ライフなんだし、楽しんできてね〜。んじゃ、アデュー♪』
「あ、ちょっと先生!!」
通信が、切れる。
暗くなった画面に私は、終わったとばかりにがくんと顔をうずめたのだった。
(つづく!!!)
おまけの小ネタ
結「というわけで始まりました、アレーテイア冒険譚〜〜。まずは彼女、成瀬水帆ちゃんが一人で頑張りまーす」
水帆「せ、先生、何して、るんですか?」
結「何って撮影、撮影。いつかどこかで、誰かが見るかもしれないでしょ? 記念よ、記念。はい笑ってー」
水帆「ひぇぇぇ!! む、無理です! 映さないでください!!」
結「ノリが悪いわね〜そんなんじゃ、このあと出てくる子達に負けちゃうわよ〜? はい、あなた好きなものは?」
水帆「え、えっと……ネイルとおしゃれです……」
結「……へぇ、本当は?」
水帆「……ま、漫画とアニメです」
結「こんな水帆ちゃんに仲間はできるのでしょーか、乞うご期待くださぁい♪ じゃ、頑張ってぇ〜」
水帆「ああ、先生! どこ行くんですか!? せめてそのデータ消してくださぁぁい!」
難あり主人公。




