1.ギャルが終わった日
「成瀬……成瀬……あった! やったよ、きらり久美子! うちら、同じクラス!!」
「え、まじ?? やったぁ! 今年もよろしくね〜!」
金髪に染まった髪が、ぴょんぴょん揺れる。
うち、成瀬水帆! 今日から高校三年生!
パーマがかった茶髪ロングに、雫のヘアピンはうちのトレードマーク!
膝より短いスカートに、ルーズソックス。校則やぶり常習犯のうちを見た人は、「ギャル」と言われる。
友達の久美子ときらりは、うちにとってのギャル仲間でもあるんだぁ〜
「てかみてよ、このネイル! めっちゃ盛れたんだけど!!」
「さっすが水帆。3年生だってのに、校則ガン無視なのマジウケる」
「えぇ〜? きらりには言われたくないんですけどぉ」
「てかこの後学年集会とか、マジだるいよねー。サボりたいくらい」
「「それなぁ〜〜」」
誰よりも大きな笑い声が、外に響く。
この瞬間が、この時間が楽しくて、また高らかに笑う。
こうしてるときが、ちゃんと“水帆”でいられる気がするから。
ただ、ちょっとだけ、この笑顔だるいけど。なんて思いながら、うちらは体育館へ足を進めた。
体育館には、すでに三年生が全員並んでいた。
だるい学年集会が、淡々と進んでいく。
進路が〜とか、受験が〜とか、難しい話を先生しているけど、そんなのどーだっていい。
うちにはきらりや、久美子がいる。それだけでいい。
放課後どこ行こうか、いつものようなたわいもない話をしていた、そんな時だった。
「皆さん、こんにちは」
黒い髪が風で揺れる。
私たちの前に現れたのは、綺麗な女性だった。
すらりとのびた手足に、背丈はまるでモデルのよう。
まるで、同じ人間とは思えないような……
「今年度から3年の学年主任を担当することになりました、新任の加納結です、よろしく」
あ、あれ、今先生うちのほう、みた……?
気のせい、だよね。生徒なんて、この話たくさんいるし……
「あなたたちのことは、事前に資料を見せてもらいました。単刀直入に言わせてもらうと、見込みゼロ。やる気すら感じられないわね。本当に高校卒業する気、ある?」
あ、あれ? 何この人、いきなり出てきたかと思えば、お説教パターン?
そりゃあうち個人的には、成績良くないかもしれないけど……関係なくない??
そもそもプライバシー的に、全員の成績見るのもどうかと……
「ははっ、先生おもしろっ。赴任して早々人の成績見るとか、どんだけ暇なんだよ」
そんなうちと同じ考えなのか、一人の生徒が声高らかにいう。
センター分けの茶髪にヘアピン、クラスメイトの柏木晃だ。
遅刻やサボりが多くて、うち以上に問題児なんだとか。
そんな彼を知らないわけもなく、即座に他の先生が反応した。
「柏木! お前はまた!!」
「だって、オレらまだこれからじゃん? そこまで言う必要ないっしょ。むしろ、大きなお世話って感じじゃね?
「さっすが柏木! うちの問題児!!」
みんなが、同調するようにケラケラ笑う。
あ、ここでうちも笑わないと。
その通りだ、先生の方がおかしいとでも言うようにー
「……静まりなさい」
マイクがハウる音が、ざわめきをかき消す。
途端に静まった生徒にかわまず、彼女は冷たい目でこちらを見据えた。
「ものわかりが悪い子達には、お仕置きが必要ね」
パチン、と指を鳴らす音がする。
と同時に襲ったのは、体の内側から空気が抜けていくような、奇妙な浮遊感。
足元が、体育館が、ねじ曲がるように、みるみるうちに色と形を変えてゆくー
「いやぁーー! ちょ、なにこれ!!」
「たんまたんま、たすけっ、み、水帆ーー!!」
きらり、久美子、クラスメイトの悲鳴が聞こえる。
慌てて手を伸ばそうとするも、すぐに引っ込めてしまう。
なぜなら自分の手にあったネイルが、ヘアセットが、遠くに消えてゆくのが目に入ったからー
「存分に苦しみなさい。迷える子供達よ!!」
先生の声が、頭上で響く。
だめ、はがれないで。いかないで。
このネイルがなければ、この髪がなければ、うちはダメなのに。
せめてヘアピンは、あのヘアピンだけはーー!
……このときの私は、まだ知らなかった。
私が一番恐れていた秘密が、この世界ですべて暴かれることになるなんて。
(つづく!!!)
本日より連載開始です!
この物語は異世界での冒険だけではなく、
仮面をかぶって生きる少年少女たちの
成長や人間関係を描いた作品です。
物語自体もスローペースなので、
少しずつ物語の真実に近づいていきます。
ぜひ最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
次回からはあとがきで
裏話なども載せていく予定です。
よろしくお願いします




