10.初めての村で繋がる縁
前回のあらすじ
試練の洞窟で「試練」として立ちはだかったゴーレム。
窮地に陥った彼らを助けてくれたのは、
同じ学園の生徒だと言う慎だった。
彼も同じバグで苦しみ、ギルドから抜けたと言う。
そこで晃は彼を誘い、四人になった「かしわなる」は
ようやく洞窟を抜けることにー
ひんやりとした洞窟の空気が、少しずつ薄れていく。
見上げれば、どこまでも続く青空が広がっていた。
洞窟の緊張感が嘘みたいに、豊かな自然がみえる。
「おや、旅の人かい? ようこそ、ツマ村へ」
洞窟を抜けた先にあったのは、ツマ村と呼ばれる小さな村だった。
アレーテイアにきて、初めての村だ。見渡す限り、知らない人ばかりでドギマギする。
私と対照的に、柏木君は大きく背伸びをしていた。
「あーーー! 空気がうめぇぇ! おっ、宿屋発見! それに店もある! 小さい割に、ちゃんとしてんじゃん!」
「俺が元いたギルドに聞いたんだが、ここは冒険者が最初に辿り着く村らしい。魔王城とも関わりがあるらしいから、もしかしたらいろんな情報が手に入るかもしれないな」
「じゃあ、僕は情報収集をしてくる。あとは好きにしろ」
火野君が啖呵を切る。
そんな彼を、いやいやとばかりに柏木君が止めた。
「いやいや、ついてすぐそれ? 少しは休めよ、体に悪りぃって」
「休んでる暇なんてない。言ったろ、僕にはあんた達ほど、うかうかしてる暇なんてないんだ」
「そーだけどよぉ〜……あっ、ならこうしね? 情報収集と、調達班にわかれる! せっかく村に来たんだ、武器とか服とか調達してぇじゃん?」
「確かに、ずっと制服だと不便だな……」
土屋君が、自分の制服をまじまじ見つめる。
すると何かを思いついたのか、優しい声で私たちに告げた。
「なら、服は俺が作るよ。素材さえあれば、それなりのものは作れると思うから」
「え、まじ?! すんげーな、慎!!」
「じゃあ、調達はあんた達に任せる。僕は先を行くから、どーもお世話様でした」
そういうと、火野君はすたすた行ってしまう。
相変わらず、彼は人を探すこと以外に興味がないらしい。
とはいえ火野君一人で、大丈夫かな……
私だったら、あの感じで来られても、怖くて話すらできないなぁ……
「じゃ、終わったら宿屋集合なーー!」
それでも柏木君は止めもせず、気にしないとばかりに声をかける。
彼と分かれてすぐ、私達は村を散策し始めた。
ツマ村は、小さいながらも活気にあふれていた。
立ち並ぶ店を、彼らは楽しそうに覗いていく。
「すごいな、布や糸一つでも魔力が違う……柏木は武力が低いんだったよな? この布なら、戦闘力が上がるらしい。これを使ってみよう」
「えっ、布から作るのかよっ! こーゆーの、得意なのか?」
「兄弟に服を作ったことがあってな、手先は器用なんだ。火野はそうだな……攻撃型だし、防御力を優先して……」
二人が、真剣に悩みながら物を見ていく。
それを、私は見ていることしかできなかった。
今だけじゃない、あのゴーレムとの戦いだって、そう。
改めて、自分の立場が嫌になる。ギャルじゃない私は、本当に何もできない。
彼らの役に立つどころか、足だって引っ張ってばかりだ。
このままで……本当にいいのかな?
「成瀬? 大丈夫か?」
不意に話しかけられ、びくっとする。
顔を上げると、いつのまにか土屋君がいた。
素材を選び終えたのか、優しい顔つきで私の顔色を伺っている。
相変わらず目を合わせることはできなかったけど、私は急いで頷いた。
「だ、大丈夫、です……あの、柏木君、は……」
「ああ、会計をしてくれてる。店員さんとも普通に話すから、驚いたよ。確か、君たちは全員星城学園なんだよな? 同じクラスだったとか?」
「い、いえ……柏木君、とは顔見知りですけど……火野君とは、ほぼ、初めまして、です」
「それにしてはいいチームだな。バランスが取れてるっていうか……そういや、ゴーレムに氷魔法はなったろ? あれは、君のだろう?」
ぎくっ!
「そそそそその節は大変すみませんでした! 私の魔法が、不甲斐ないばっかりに……」
「え、いや逆だよ。あれがあったから、俺は飛び込めたんだ。むしろ大したもんだよ、ここにきて日が浅いのに魔法が使えるなんて」
「そ、そんなことは……」
「謙遜しなくていい。君の魔法は、誰かの役に立ってるよ」
優しい言葉、優しい声に心が温かくなる。
不思議だな。体はこんなに小さいのに、不思議と頼もしさを感じてしまう。
まるでお兄さん、みたいに……
「それに、これからは何かあっても俺がいる。だから、そんなに自分を責めないでほしい。……なんて、こんな見た目じゃ説得力ないかもしれないけどな。ははっ」
「おーい、買い物終わったぞー」
同時に柏木君が、荷物を抱えてやってくる。
彼は私と土屋君を交互に見やると、なぜかにやりと笑った。
「おっ? なんだ成瀬。やっといい顔になってんじゃん」
「……えっ?」
「ここにきてから、ずーっと元気なかったからさ。気にしてたんだが……大丈夫そうじゃん。これも、慎のおかげか?」
「いや、俺はたいしたことしてないよ。これが、仲間になるってことなんじゃないかな」
柏木君が、ばちっとウインクする。土屋君が、優しく微笑む。
そういえば、ここにきてから随分笑ってなかった気がする。
ずっと不安で、心配だったから。
今もそれがなくなるわけじゃない。でも、彼らといると不思議と緊張が解ける気がする。
知らない人と仲良くなるのは、あんなに怖かったはずなのに。
これも、二人の人柄……なのかな。
「あ、そーいや店のおっちゃんから聞いたんだけど。オレらと同じ服着てる人が、ここにきてるらしいぜ?」
「えっ、そうなんですか?」
「なんでも、すげー元気に走り回ってたとかで、印象に残ってたらしいぜ?」
「もしかしたら、星城の仲間かもしれないな……どこにいったか、わかるか?」
「ああ、それならー……」
「た、たすけてくれぇぇぇ!!!」
同時に、悲鳴がする。
すると宿屋の方で、なぜか爆発が起きた。
煙がもくもくと出ており、たくさんの人達が悲鳴交じりに出てくる。
そんな中、怪我ひとつない女の子が、ドアから出てきてー
「あれー? おかしいなぁ。うまくいくと思ったのに」
金色のさらさらした髪に、くりくりとした瞳の子。一目で美少女だとわかる容姿だった。
でも、なんだろう、この子……みたことある気がする。
そんなことを思ってる中、彼女はこちらに目線を送る。
次の瞬間、ぱあっと顔を輝かせてー
「いたーーー! 慎だーー!!!!」
気がつくと、土屋君には彼女が覆い被さっていて……ってえぇぇ!?
(つづく!!!)
おまけの小ネタ
火野が一時離脱することになりました。
慎「本当に、一人で行くのか? 情報なら、店を巡る時にでも聞けると思うが……」
亮輔「僕にとっちゃ、遊びじゃないんだ。あんたらと馴れ合うつもりはない。それに、こいつのことだから、ぜってー無駄話始まる」
晃「ひっで。オレがいつ無駄話したってんだよ〜……ちなみに火野さんよぉ、ちょっとどーゆー風に聞くおつもりで?」
亮輔「は? 人を探してる、情報をはけ、で十分だろ」
晃「いやいやいや、そんなんではく奴がいるか!! 脅迫じゃん!!」
亮輔「めんどくせぇ。じゃあ……知ってることを教えろとか、でいいか?」
慎「人に聞くときは、もう少し優しく声をかけた方がいいぞ、火野。少し相手の目線に合わせて……」
亮輔「だーー、もうしつこい!! ほっとけよっ!!!」
水帆(なんだか家族みたいだなぁ……)
保護者晃&慎。




