11.自由な嵐は突然に
前回のあらすじ。
無事に試練の洞窟をクリアした四人は、
初めての村、ツマ村へ。
情報収集に離脱した亮輔とは別に、
三人で調達をしだす。
そこに、宿屋で謎の爆発が起こり、
出てきた少女が慎に抱きついてきてー
「慎、慎!!! 久しぶりだねぇーー! あいたかったよーー!」
嬉しそうに、頬擦りをする。
その勢いに、小柄な土屋君の姿がすっぽり隠れてしまうほどに。
「え、ちょ、まさか慎、彼女持ち!!? 誰よこの女!!」
気が動転しているのか、柏木君の口調が若干おかしくなっている。
彼女、なのだろうか。確かに、すごい親しげだし……
対して土屋君は冷静に、彼女の背中を優しく叩いていた。
「誰かと思えば……金愛か」
「探したんだよー! ぜーんぜんいないから、ガッコーに来ないのかと思った!」
「気持ちは嬉しいが、そろそろ離れてくれるか? みんなが誤解している」
土屋君の言葉に、彼女は振り返る。
バチっと目が合った途端、彼女は私の方へ近づいてきてー
「あれー? なるみなちゃんだぁ!」
「え゛」
「成瀬水帆ちゃんだよね?! あたし! 阿南金愛だよ!!」
お、思い出したーー!!!!
この人、めちゃくちゃ顔は美人なのに、喋ったら残念で噂の奇人だーーー!
っていうか、なんで私だってわかるの!? ギャルの格好してないのに!!
「なんだ金愛、知ってたのか」
「うん!! なるみなちゃんはいつもイケイケで、オシャレ番長なんだよ!」
「い、イケイケ?」
「ちちちち違います土屋君! 彼女が言うなるみなっていうのは、全くもって別人のことでして! 私ではないです!! 断じて!!!」
「あれー? でもいつもと違うー? まいっか! ねえ、なんで慎といるの? ねえねえなんで??」
ひ、ひぃぃぃぃ!!
「なんだよー、よく見たら阿南じゃん。お前ら知り合い?」
「ああ、俺のいとこなんだが……柏木も知ってるとは、金愛って学校じゃ意外と人気者なのか?」
「人気というか、目立ってんな。いろんな意味で」
「ああ、それで……」
二人が、納得したように彼女をみる。
阿南さんは気にもしてないように、きょとんとする。
すると、宿屋から数人の人が出てきた。
「げほっ、ごほっ! 貴様なんてことをしてくれるんだ!! 私の大事なマイハニーに!」
「えー? 怪我したって言うから、回復してあげよーと思っただけで……あ、そーだ! じゃあ今度はそーりょになって試してみるね!」
「得体の知れない物を作って何が回復だ!! 職業もコロコロ変わるやつなんて、聞いたことない!!」
「あなた達、彼女と知り合い? ちょーどいいわ! 彼女の武器も、持ってたもん全部返すから、この人をなんとかしてちょーだい! もううんざりよ!!」
するとその人達は、強引に物を押し付けてくる。
どうやら、あの爆発は彼女が起こしたものらしい。
さっきの人達は、責任を問われるのが嫌だったのか、逃げ足だけは早かった。
いくらなんでも、無責任すぎるような……
「いや、どーにかしろって……阿南お前、何やらかしたんだ?」
「んー、回復薬作っただけなんだけどなぁ。かなみ、なんでか職業コロコロ変えれるんだ〜。せんせーはバグっていってた」
「変えれるんだーって……それって悪いことだろ? なんでコロコロ職業変えてんだよ」
「だってだって、いろんなものやったら楽しくない? せっかくの異世界なのに、面白くなきゃつまんなくないよ!」
う、こ、これは……まごうことないThe陽キャ思考……!
ギャル時代、似たようなことを言っていた自分には、何も言えないよ……
「そーいえば、りょーちんもみたなぁ。知り合いが多くて、かなみうれしぃーー!」
りょーちん、と聞かれてピンとこない自分がいる。
阿南さんがいうから、多分あだ名かな……?
りょーちん……ってまさか……
「りょーちんって、もしかして火野のことか? みたのか?」
「ん! なんかすごーい顔して、いろんな人に聞いて回ってた!!」
「それにしては、戻ってこないな。結構経つのに……探しに行くか?」
「んー、一時的っての強調してたしなー。オレらが行ったら余計こじれそうっつーか……」
「でも、柏木にとっちゃ仲間の一人、なんだろ?」
土屋君の言葉に、まあなと柏木君が笑う。
あんな露骨に断られたのに、こうして優しく受け入れてくれるのは彼らしい。
こんな私でも、仲間に入れてくれるくらいなんだし。
火野君だって、あんなに怒っていたのに、一緒に来てくれた。
だからこそ、今いないことが少しだけ不安でー……
「なんか、みんないそがしそーだねー。かなみ、宿屋にごめんなさいしてくるよ。こーなったの、かなみのせいだし」
阿南さんの言葉に、みんなの驚いた言葉が重なる。
正直、意外だった。自分から謝ると言い出すなんて。
阿南さんなりに、ちゃんと自分が悪いと思っているのだろうか?
いつもはちゃめちゃな人だと思ってたけど、意外と真面目……なのかも?
「え、偉いな金愛。だが、一人で大丈夫か?」
「だいじょーぶだよ〜これくらい! いざとなったら、宿屋直すお手伝いもできるかもしれないんだぁ。しょくぎょーに大工さんってのがあってね!」
「……すまない、二人とも。少しの間、彼女と行動を共にしていいか? どうも不安で……」
「確かに……このまま阿南を一人にするのは怖いわな」
すると、彼はんーと考えるような仕草をする。
そしてしばらくすると、何か思いついたように手を鳴らした。
「……よし。オレもいくわ、一緒に」
「え、でもいいのか? 柏木には関係のない話なのに……」
「もともと、泊まる予定だったしな。火野にだって、ここに集合って伝えてんだ、一石二鳥だろ」
「それならいいんだが……」
「成瀬はどうする? 別に、無理してついてこなくてもいいけど」
こうして聞いてくるあたり、彼は私が阿南さんのことに戸惑ってることに気づいてるのだろうか。
彼女のことは苦手だ。けれど、このまま一人にしてしまうのは流石に気が引ける。
放っておいたら、また何か起こりそうで……
「だ、大丈夫です。みなさんと、一緒で」
「そか、じゃあ決まりだな」
「やったーーー! みんな一緒!! 嬉しいーー!」
「こら、金愛。……すまない、火野のことも心配だというのに……」
「あいつのことだ、そのうち帰ってくるだろ」
柏木君が、にっと笑う。
不安ながらも、私は彼の言葉にそっとうなずいてみせた。
(つづく!!)
おまけの小ネタ
慎「この度は、うちのものが大変失礼しました」
金愛「おばちゃん、ごめんなさい……」
宿屋の女将「いいえー。何事かと思ったけど、怪我人がいなくてよかったよ」
晃「優しい人でよかったなー。お詫びといっちゃなんすが、一晩止めてもらっても?」
女将「それはいい、んだが……ちょいとそのぉ、問題が多少あってね……」
慎「彼女の問題は、俺の問題です。壊れたところは、俺が払います」
晃「ほえー慎ってば男前〜、さすがにそこまでしなくても……って高っ! ちょ、どんだけ壊してんだよお前!!」
金「初めての職業だと、なかなかうまくいかないんだよねぇ……よーし、次はしょーにんになって、あたしがお金作るーー!」
晃「やめとけって、ぜってーまた変なことになるから!!」
慎「さ、幸い服の布が余ってる。それを使って、売ろう」
水帆(前途多難すぎる……)
このあとちゃんと泊めてもらいました。
※次回の投稿は諸般の事情で、金曜日に行います※




