12.とんでもガールの大捜索
前回のあらすじ。
爆発と共に現れたのは、慎のいとこであり
かつての学友・阿南金愛だった。
彼女も同じバグ持ちであり、
ギルドを追われた身だという。
心配になった慎の発言で、亮輔を待ちつつ
彼女と共に行動をすることになったが……
その翌日。一晩明けても、火野君は帰ってこなかった。
宿屋の女将さんに聞いても、それらしき人はいなかったらしい。
心配が募る中、柏木君が
「よし、探しに行くか」
と、立ち上がった。
「そうしたほうがいい。一晩もいないと、流石に心配だしな。といっても俺はここで服の仕上げがあるから、任せることになるが……」
「構わねーよ。成瀬はどーする?」
「わ、私は……探しに、行きます。お役には、立てませんが」
「オッケー。んじゃあてきとーにあたって……」
「はいはーーい!! かなみ、りょーちんさがしたーーい!」
思わず、えと溢れそうな口をつぐむ。
そんな私に気づいていないとでもいうように、彼女は満面の笑みで告げた。
「金愛、いいのか? お前はもう自由なんだ、他のギルドを探してもいいんだぞ?」
「ほら、宿屋のおばちゃんに、みんなで謝ってくれたでしょ? だからかなみ、みんなの役に立ちたいなって。ね、いいよね、慎!」
「……すまん柏木、連れて行ってくれないか? 金愛は一度言いだすと聞かないたちで……」
「お前、本っと苦労してんのなー。いいぜ、そのかわり迷惑かけんなよ?」
「やったあ!! よーし、じゃあしゅっぱーーつ!!」
断る暇もなく、阿南さんは宿屋をいち早く抜け出す。
正直、気が重い。彼女は私をみただけで、「成瀬水帆」だと見抜いていたし……
それでも、火野君のことは心配だ。
なんとか重い腰を上げ、柏木君とともに先に出た阿南さんを追いかける。
辺りを見渡していた彼女は、唐突に、
「ひらめいた! あっち!」
と、走り出して……
「ちょ、まてって阿南! 急に走り出すなよ! てかはや!!」
「あれー、こっちじゃない? じゃあこっちだ!!」
「さっき言った事もう忘れてね?! な、成瀬! こいつはオレがなんとかするから! 無理してついてこなくていいからな!!」
柏木君が叫びながら走ってる時も、彼女は何度も方向を変える。
結果、私は置いていかれるだけだった。ついて行こうにも、どんどん突き放される。
昨日の夜と一緒だ。出会ってから、ずっと阿南さんのペースに巻き込まれてる。
だ、だめだ。やっぱりこの人、自由すぎる……
「……あっ! あっきーー! りょーちん、ここにいる気がするー!」
彼女の足が、急に止まる。
やっと追いついたと思った場所は、酒場だった。
けろっとしている阿南さんに対し、私たちは意気消沈で……
「……おま、走り回りすぎだろ……で、なんで酒場?」
「んー、なんとなく!!」
そういうと、彼女は大きな扉を思いっきり開ける。
小さな酒場には昼だというのに、何人もの老夫婦や、屈強な男性がいた。
その中に、火野君の姿もあったのだ!
「やったーー!! りょーちん、発見!!」
「あんたら……なんでここに」
びっくりした。まさか、本当にみつけるなんて。
あれだけ気ままに走り回っていただけなのに……阿南さんって、一体……
「はぁ、探したよ。一晩たっても帰ってこねーから、心配したんだぞ?」
「心配される筋合いはない。邪魔すんな」
「まーまー、一人より二人の方が早いだろ? あとはオレに任せろって。すんませーん、魔王について聞きたいんすけど……」
そう言って彼は、昼間から飲んでいる客相手にも物おじせず話しかけ、あっという間に打ち解けていく。
相変わらず、すごいコミュ力だ。その様子を火野君は舌打ち混じりに眺めている。
彼と同じように、阿南さんも興味深そうに聞いていた。
「まおう? ああ、あの大きな城に住む娘か。そういえば、最近見とらんのう。よくここで晩酌をしたんじゃが……」
「え、魔王と晩酌? 魔王ってそんな感じなの?」
「面白いお嬢ちゃんじゃよ。いつも酒を片っ端から注文しては、飲んだくれたわい。そういえば、この前は違う子がきてたのう。確か名前は、チョーカ……じゃったか」
一瞬、空気が変わった気がする。
それを感じたのは私だけのようで、村の人たちや柏木君は変わらず話していた。
「チョーカ? 誰それ、魔王の知り合い?」
「なんでも、四天王らしくてのう。代わりに買いに来た、と言っていた。確か二つ結びの……」
「おい。そいつ、どこに行った」
気がつくと隣にいた火野君が、いなくなっていた。
怖い顔で、おじいさんに詰め寄っている。
すると、彼は急になぜか胸ぐらを掴んでー
「りょー、ちん? どうしたの、怖い顔して……」
「そいつがどこに行ったかを聞いてんだよ!!!」
その目は、赤く発光していた。
鋭い眼光は、今にも殺してしまいそうな勢いでとても怖い。
ゴーレムの時と同じだ。暴走した時の、あの赤い目ー
「やめろって火野! 落ち着け! どうした急に!」
「邪魔すんな柏木!! 僕はどうしても、その情報が必要なんだ!!」
「そんな苦しめたら話せねーだろ!! 一旦冷静にだな!!!」
「そこまでっ!!!!」
極めて低く、野太い声が響く。
気がつくと、そこには土屋君がいた。二人の間に入るように、立ち塞がっている。
そして二人の顔を見ながら、土屋君ははぁぁと深いため息をついてー
「酒場が騒がしいと思ってきてみれば……火野、その手を離せ」
「は!? なんであんたに指図されなきゃ……」
「いいから。離しなさい」
いつにもなく、凛とした声に彼の目がいつもの色に戻る。
我に返ったのか、火野君は優しくおじいさんを離してくれた。
「わ、悪い慎。助かった……じいさん、ごめんな? 大丈夫か?」
「あー、いやいや構わんよ。それよりお主、その娘の場所が知りたいとは、何か訳ありなのか?」
「ここまで迷惑かけたんだ。黙ってないで、事情くらい説明したらどうだ?」
その言葉に、さきほどの威厳はない。
二人とも、火野君の返事を静かに待っている。優しく、見守るように。
だからなのか、火野君は痺れを切らしたように口を開いてー
「探してるんだよ、その人を」
「探すって、そのチョーカって人をか? クラスメイトか?」
「かなみ、わかんなーい」
「チョーカっていうから、女子だよな? うちの生徒にいたっけか?」
「生徒じゃねえからな」
その言葉に、あっと思い出す。
まさか、火野君が探してる人ってー
「火野蝶花、養護教諭。今年から、三年の副担持つことになってた……僕の、姉だよ」
彼ー火野君は、力を抜くように再びため息をついた。
(つづく!!)
おまけの小ネタ
晃「しっかしほんとーに見つかるとはなぁ〜まさかこんなとこにいたとは」
金愛「えへへ、かなみすごいでしょぉ?」
水帆「そ、そうですね。無事で、よかったです」
亮輔「こっちは情報収集してただけだっての。普通、探しに来てまでくるか?」
晃「いやいや、一晩も帰ってこなきゃさすがに心配だろ。で、何か手に入ったのか?」
亮輔「……この村は、野菜が有名」
晃「……ん? 他には?」
亮輔「……知らない」
晃「えっ、一晩聞きまくって? 音沙汰なし?」
亮輔「仕方ねぇだろ! どいつもこいつも、聞く前にすぐ逃げやがるんだから!! おかげでレベルくそほどあがったじゃねーか!」
晃「よーするに、うまくいかなくて敵に八つ当たりしてたってことか。戻りづらかったんだな、うんうん」
水帆「そういえば、街の人も怖がってましたね……火野君のこと……」
金愛「あははっ、りょーちんおもしろーい!」
亮輔「うっさい!!」
とにかくキレやすい男。




