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13.五つの欠片、ひとつの星

前回のあらすじ。

ツマ村で金愛と出会った水帆達は、

亮輔を共に探す。


無事に見つかるも、なぜか騒動沙汰に。

彼の暴走や急ぐ事情には、「姉」が関わってるようでー

「つまり、ここに飛ばされてるのは体育館にいた奴らだから……副担になるはずだった蝶ちゃんまで巻き込まれてるかもしれなくて、それで探してるってわけか」


柏木君の説明に、火野君はちっと舌打ちをする。

あれから数時間、私たちはおじいさんと酒場の人たちに謝罪を済ませ、宿屋へ戻ってきた。

ベッドには火野君が腰掛け、私たちは彼と向かい合うように椅子へ座っていた。


「はぁぁ、姉さんねぇ。確かに苗字同じだなぁ、とは思ってたけど……なんで言ってくれなかったんだよ」


「あんまり言いたくねぇんだよ、似てないっていわれるし。あと蝶ちゃんって呼び方やめろ。先生相手にあだ名つけんな」


火野蝶花(ひの ちょうか)、というと、うちの学校じゃ結構人気な保健室の先生だ。

悩みも親身になって聞いてくれることから、「天使」とすら評されている。

誰にでも向けられる優しい笑顔は、陰キャな私でも話しやすかったなぁ。


「火野の事情はわかった。だが、そこまで焦る必要あるのか? 俺がみた感じ、お姉さんがきっかけで力が暴走してる気がするんだが、それについては心当たりあるのか?」


土屋君が、冷静に言う。

それでも彼は何も言わず、舌打ちしかしない。

確かにゴーレムや、お爺さんの時も、お姉さんの名前が出た時だったけど……

みんなが彼の答えを待っていた、そんな時だった。


「ねーねー、なんでみんなむーって顔してるの? これ、何の話ーー?」


唐突に、阿南さんが話に割り込んでくる。

相変わらず、話の流れなどお構いなしだ。

彼女の言葉に、気になっていたらしい火野君が苦言を呈した。


「そういえば聞きたかったんだけど。なんでこいつがここにいるわけ?」


「たまたま町であったんだ。俺のいとこなんだが……職業が変わるバグもちで、元居るギルドから外されてしまって……」


「ねーねー、それよりこれたべない?? 遊んでたら、できたんだー! はい、あーーん!」


「は? 誰がそんな怪しいもの食べ……」


阿南さんは屈託のない笑顔で、彼の口元に果実を強引におしつける。

断る暇もなく口に入ってしまい、食べた瞬間、火野君は驚いたように目を見開いた。


「……うま、い」


「え? そんな奇妙奇天烈な果実が?? マジかよ」


「みんなも食べる? おいしいよ!!」


「あ、ありがとう……だが金愛、今は大事な話をしてるんだが……」


「だってみんな、顔がムーってなってたんだもん。こーゆー時は、笑顔!! だよ!」


こう言う時の彼女は、一番つかみどころがない。

だからこそ何だかホッとできるし、張り詰めていた糸が切れたように感じられる。

きっとそれは、彼らも同じだったのだろう。柏木君が、大きな声を出して立ち上がった。


「あー、辛気臭いのやめぃ!! つまりお前は、さっさと先生をみっけて、この世界から帰りたいってことだろ?」


「だ、だからなんだよ……」


「なら、なんも変わってねぇじゃん。これ以上、一人で突き進む理由、ある?」


「かわるだろ! 姉とはいえ、四天王だぞ? 僕らと違って、操られてるかもしんない。僕一人でいくから、あんたらが付き合う必要は……」


「オレはもう、仲間だって思ってんだ。最後まで付き合うのが、仲間ってもんだろ」


柏木君が、な? とウインクしてみせる。

さすがだな。こういう時、柏木君はちゃんと言葉にしてくれる。

私が何度も救われてきたように、火野君にも届けばいいな。


「せっかくここまできたんだ! 観念して、オレらと姉ちゃんさがそーぜ、火野!」


「……亮輔、でいい。そのかわり、姉さんのことはちゃんと先生で呼べよな。晃、慎」


言いながら、ぷいっと顔を逸らす。

その顔は、真っ赤に染まっていて。その仕草は、なんだか可愛らしかった。

その言葉は、正式にギルドへ入ってもいいという、火野君なりの返事に聞こえた。


「なんだこいつかわいいなーーー! わかった! よし! じゃあ今日からお前はりょうだ!!」


「りょう!? なんであだ名なんだよ! 普通に呼べよ!」


「えーーいいじゃぁん、減るもんじゃねぇしぃ。あ、そいや慎、酒場から帰る時、オレらに渡したいものがあるって言ってなかったか?」


「ああ、そうだった。約束通り繕ったんだ。着てみてくれないか?」


すると土屋君が、脇に抱えていたものを引っ張り出す。

それは、服屋に並んでいてもおかしくないほど立派な、職業に見合った服だった。


「すっげーー! かっけーー! これ一晩で作ったのかよ!」


「サイズが合わなかったら言ってくれ、調整する」


「あ、あの、ありがとう、ございます」


「俺もギルドに入れてもらった仲間だしな。これくらいはしないと。ついでに金愛や、火野の分も作ったぞ」


「僕は一時的だって言ったのに……端から入れる気満々だったってわけか」


「じゃあ、かなみもはいるーー! あっきー達のギルド!! 一緒に行ってもいい?」


そんな中、阿南さんが挙手をする。

正直、そんな気がした。

彼女も今は一人。誰かと組むには、知り合いがいる私たちがちょうどいいと。

それでも火野君はやはりいい顔はしないようで、即座に顔をしかめた。


「……あんた、何か役に立てるのか?」


「んー、わかんないっ!!! けど一人じゃつまんないんだもん。みんなと一緒の方が面白そう!!」


「面白そうって……遊びじゃねーんだが……」


「いや、でも。阿南、使えるかもしんねー」


その言葉に、え? とみんなが彼を向く。

すると柏木君は、阿南さんの持っていたバッグを取り出した。


「このバッグ、四次元ポケットみたいになってんだよ。さっきの果実も、遊んでたらできたって言ってただろ? 阿南、どうやって作ったんだ?」


「??? てきとーにやったら、できたよ?」


「もしかしてだけどさ。自分が知らないってだけで、なんでも作れるんじゃねーか?」


思えば彼女は、武器らしきものすら持っていない。それでも、あの果実を簡単に作ってみせた。


それでも、彼女が入ることには少し抵抗がある。

私の隠しているものまで、簡単に見抜かれてしまいそうで。


でも、たぶん違う。

彼女はただ、面白いものに飛びついて、私たちと一緒にいたいだけなのだ。

変な子だけど……悪い子じゃ、ないのかもしれない。


「……成瀬。なんでも作れる職業、あったよな」


「え、は、はい。……アルケミスト、ですかね?」


「それ一本だ。アルケミストに絞って、一切転職しないって約束できたら、ギルドに加えてやる! 返事は?」


「うん! わかった!!!」


「お、おう……随分聞き分けいいな。まあ、そこまで言うならいれてやっても……」


「かなみ、今日から遊び人になるー!!!!」


「ぜんっぜんわかってねぇ!!」


みんなが、笑い合う。まるで、昔からの友達だったみたいに。

不思議だな。本当なら、こんなふうに関わるはずなんてなかったのに。

それぞれ事情があって、ギルドに入れなくて。

今、ここで繋がってる。

なんだか、それって……


「……私たちって、星……みたいですね」


全員、考え方も性格も違う。

一人ずつなら、どこか欠けている。

でも、五人集まった今なら、何かになれる気がしてー


「それだよ!!!」


「え?」


「オレらのギルド名だよ! ずっと「かしわなる」なままじゃイマイチだろ? 普通に星はセンスねぇから……ペンダグラム、とかいいんじゃねっ!」


「おおーー! なんかかっこいい!!」


「ペンダグラムか……どういう意味なんだ?」


「五芒星!! 星型のことを指すんだよ! テレビで言ってた♪」


「……またテレビかよったく……呆れた。このノリでギルドの名前つけるか? 普通」


火野君は、はぁぁと深いため息をつく。

それでもどこか、嫌そうには見えない。こころなしか、嬉しそうに見えて。


「まあ、悪くないんじゃないの」


こうして私たちは――五人の「ペンタグラム」として、新たな一歩を踏み出したのですー




$


「……最部、脇屋……やっとこれで全員か。ったく、遅いっての」


生徒達が、次々と現世へ帰っていく。

彼女はその様子を、酒缶片手に眺めていた。

他の生徒にとって、魔王城へ向かうこと自体は、難しくない。

なぜなら――彼女の目的は、最初から彼らだったのだから。


「説得力のために、わざわざ三年生全員がいる学年朝会にしたってのに……めんどくさいったらないわ」


「もぉ、またそんなこと言って。もともとは結が言い出したことでしょぉ?」


酒の缶が、あちこちに散らばっている。

それを拾いながら、占い師のようなローブを着た女性がにこやかに笑った。


「あんたも物好きよね。身内巻き込まれてるのに、こちら側にいるなんて」


「そりゃ、うちと結の仲だしねぇ。あの子も難儀な子だし……それにしても、どうしてあの五人なの? あんなバグ、他の子にはなかったよね?」


「それが、あの子達の運命よ。あの五人にしかない、唯一のね」


煙草をくゆらせながら、画面へ目を向ける。

そこには、データのような数値が映し出されていた。

体力、魔力、そして、それぞれの能力値――。


「そーゆーわけだから、あんたにはもう一仕事してもらうわ。あたしができない分も頼んだわよ、蝶花」


「結こそ。あの子たちが自分たちの答えを見つけるまで、ちゃんと見届けてあげてね」


画面には、笑い合いながら歩いていく五人の姿が映っていたーー


(つづく!!)

おまけの小ネタ

ペンタグラム、ついに結成!!!


晃「っしゃー! ギルド結成ーー! この際だ!! 全員名前で呼び合おうぜ!! な、慎!!」


慎「えっ、でもいいのか? 俺は転入生なのに……」


亮輔「それ、今関係なくね? 僕だけ呼び捨て、ってのは割に合わないと思うけど」


慎「それもそう、だな。じゃあ、晃と亮輔で」


晃「いいねいいねー、やっぱこーじゃねーとなぁ」


金愛「ねえねえかなみはー? かなみは呼んでくれないのー?」


亮輔「あー………阿南はやだ。なんか生理的に無理」


金愛「えーー! なんで!? りょーちん、ひどーーい!!」


慎「えーっと、じゃあ成瀬は?」


亮輔「成瀬は……あんたから名前呼んでくれたら、考えてやってもいいけど?」


晃「だってさ成瀬!! ほら、オレらのこと名前で呼べって!!」


水帆「ひ、ひぇぇぇ、無理ですぅぅ!!」


結局、水帆だけ苗字呼びになった。

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