25.ようこそ子供達の楽園へ
前回のあらすじ。
魔王城から飛ばされ、
真逆の地に辿り着いたペンタグラム。
絆を深めながら、彼らは再び歩き出すー!
「さっ、休んだところで。どっか街に情報収集にでもいくか!」
柏木君が、声高らかに叫ぶ。
その翌日。私達は以前ここにきたことがあるという、土屋君の記憶を頼りに進むことになった。
とはいえ彼も、ここにいたのはごくわずかで、町の位置関係しかわからないらしい。
だから今は、とにかく情報が欲しいんだけど……
「………また情報集めか、よく凝りねぇよな」
「そりゃぁ、わかんねーことだらけだしなぁ。先生がいないからって、そんなあからさまに不機嫌になるなよ〜シスコンめ〜」
「ちげーし」
シスコンだと明かしたおかげなのか、火野君の表情はどこか柔らかい。
仮面を剥ぐって、こういうことなんだろうか。
そんな姿が嬉しいのか、阿南さんも笑顔で彼に近づいてー
「大丈夫だよ、りょーちん! 蝶ちゃんがいないのはさみしいけど、かなみ達がいるから!」
「いや、あんたらがいても何も変わらな……」
「それなら、みんなで手をつなごーよ! そしたらきっと、寂しくないよ!」
そういうと、彼女は自然に、いつものように、彼の手をつなぐ。
すると火野君は、なぜか「はぁ!?」とらしくない大きな声を出した。
「何で僕がそんなガキみたいなこと!! やらねーよ! ていうかあんたに繋がれても、全然嬉しくないし!!」
「えーーー、だめ?? じゃああっきーとつなごっと」
「お、いいぜ阿南。なんなら全員でやるか?」
「や・る・か!!! 勝手にやってろ!」
相変わらず、仲がいいな。
当然、私なんかがその中に入れるわけもなく。周囲を見渡していると、小さな門があるのが見えてー
「あ、あの。ちょうどそこに、街があるみたい、です。いってみませんか?」
「おっ、まじ? さすが成瀬!」
「あ、待ってくれ、みんな。そこは……!」
土屋君の静止と同時に、がんっと槍が重なる音がする。
思いもよらない出来事に、え? と声が漏れてしまう。
そこには小さく、可愛らしい子供二人が、こちらを強く睨んでいた。
「すみませーん、ここからは立ち入り禁止でーす」
「……え?? なんで?」
「だってにーちゃん、大人じゃん。ここからは子供しか入れねーんだよ!」
言われてみれば、槍のようにみえるのはフォークだし、つけている防具もどこかおもちゃのようにつぎはぎだらけだ。
身長は私たちの肩くらいの大きさで、まるでこちらを馬鹿にしたような物言いをしている。
その言葉に、さも不思議そうに柏木君は告げた。
「いやいや、オレらまだ高校生だし。大人っつったら、普通成人じゃね?」
「わかってねーなぁ。オレらよりでかいやつらは、みんな大人なんだよ!」
「ただの反抗期なガキじゃねぇか。悪いが、遊びに付き合ってる暇はねえ、さっさとそこを退け……」
「へーんだ、大人のいうことはきっかないよぉー
「こいつ……!」
「やめないか、子供相手に。この街はそう言う決まりなんだ、許してやってくれ」
土屋君が、いつものように火野君を仲裁してくれる。
けれど、いつもとは少し違う。まるで、この街の事情を、知ってるかのような言い方だ。
現に、子供たち二人が敏感に反応してー
「マジかよ、シン様じゃん!!」
「うわ、マジじゃん! あ、エミル! エミル呼んでくる!」
「……いいよ、すぐに帰るから」
「だーめ!! 今度は逃さないぜ? あんたはオレらを救ってくれた、勇者様なんだからなっ!!」
その声が、嬉しそうに響く。
彼ー土屋君は、困ったように肩をすくめた。
「すごーい! 遊園地見たーーーい!!」
阿南さんが目を輝かせて駆け出す。
門が開かれたそこは、まるで遊園地だった。
メリーゴーランドやボールプールなど、とにかく遊具が事細かに置かれている。
建物の高さはどれも低く、看板には下手くそだけど一生懸命書かれた絵が躍っている。
そして何より、自分たちよりずっと小さな子供たちばかりでー
「勇者様!! おかえんなさーい!」
「みてみて! オレらで勇者様の像作ったの! かっけーだろ!」
「勇者様、一緒に遊ぼ! 野原にお花が咲いたんだよ!」
ここーキントランドは、子供しか住んでいないし、子供しか入れない街のようだ。
そんな場所に例外で入れたのも、彼ー土屋君の影響である。
この街で彼は勇者扱いされているらしく、その一行ということで、子供たちが仕方なく許してくれたらしい。
居心地が悪いのか、土屋君はずっと困ったような顔をしていたけど……
「随分人気者だな、勇者様とやらは」
「やめてくれ、亮輔。慣れないんだ、そう呼ばれるのは」
「なんかすんげー慕われてるけど、慎ここにきたことあんの?」
「……少しだけ、な。俺がこんな見た目だから、すんなり通れてさ。隣国に行くための場所に魔物がいて、それを倒したら貴方は勇者ですって勘違いされて」
「勘違いも何も、敵を倒したんだろ? 勇者には変わりねーじゃねえか。なんでそんなに嫌そーなんだよ」
「……それは……」
「シン様!!!」
声が、する。
そこにいたのは、白いワンピースを着た、白髪の少女だった。
まるでゲームにいるような、清楚なヒロインキャラだ。
しかもその彼女は、涙を浮かべたまま、土屋君に向かって抱きついてー
「また、お会いできるとは思いませんでした。ずっと、ずっとお待ちしておりましたわ」
「……エミル。相変わらず、甘えん坊だな」
「甘えん坊だなんて……あっ、魔王城に行きたいとお聞きしました。みんなが今情報を集めてるので、こちらにいてくださいませんか? お仲間様も是非ゆっくりして行ってくださいませっ」
彼女が、にこやかに笑う。
それを待っていました、とばかりに阿南さんが笑顔を輝かせてー
「それって、遊んでいいってことだよね?!」
「え? ええ、構いませんが……」
「じゃあ、みんなで遊ぼう!! あっちにジェットコースターあるよ!! 一緒のろう!!?」
すると、阿南さんがいち早く遊ぼうと身を乗り出す。
その手を握った先は、なぜか火野君でー
「は!? ちょっ、ふざけんな!! なんで僕なんだ!」
「だって、慎忙しそーなんだもん。はやくいこ! りょーちんとのったら、なんかおもしろそーな気がして!!」
「どういう意味だ、それは!!」
「ふ、二人とも、あんまりはしゃぎすぎると転びますよ〜!」
私が声を上げても、二人には聞こえてない。
相変わらず、というべきか。やれやれと肩をすくめてるのは、柏木君も同じだった。
「ああなったら、誰にも止められねーしな。せっかくだ、遊んでこーぜ成瀬」
「え、あ、でも……土屋君は……」
「ああ、俺のことは気にしなくていい。あとで行くよ」
そういうと、彼は言って来いとばかりに背中を押す。
柏木君についていきつつも、なんとなく後ろを振り返ってしまう。
気のせい、なのだろうか。
ここにきてから土屋君の顔は、少しだけ暗いようにみえたー……
(つづく!!)
おまけの小ネタ
子供達の楽園、到着!!
晃「ジェットコースターにコーヒーカップ、まるで遊園地だなぁ。成瀬、何に乗りたい?」
水帆「い、いいんでしょうか、私達だけ遊んじゃって……」
晃「そう心配すんなって、慎も後でくるっていってたろ? こーゆー時は、目一杯楽しまねーと! つーわけでオレ、ジェットコースターがのりてぇなぁ♪」
水帆「えっ!? そ、それはちょっとぉ、ハードルが高いというか……」
晃「どーせ子供向けだろ? 怖い時は、オレの手握っていいんだぜ? なーんて……」
水帆「……じ、じゃあ、よろしくお願いします」
晃「えっ!? お、おう!!」
一方その頃。
亮輔「ぎゃぁぁぁ!! もう無理!! 僕帰る!!!」
金愛「りょーちぃん、まだ入ったばっかりだよー? お化けさんこんなに可愛いのになんでだろーね?」
亮輔「可愛くない!! だから入りたくなかったんだ!!」
歴然の差。
慎(今頃楽しんでるかなぁ、みんな……)




