↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/28

26.英雄は煌めかない

前回のあらすじ。

新たな地で再スタートをきったペンタグラム。

そこで出会ったのは、かつて慎が救ったという

こどもの国、キントランドだった。

みんなで遊ぶのも束の間、彼の様子は少しおかしくー

「シン様、皆様。長らくの旅、お疲れ様でした。ぜひ、こちらでごゆっくりお過ごしください」


エミルちゃんが、にっこりと笑う。

目の前に広がった料理に、開いた口が塞がらなかった。


その晩、私たちはキントランドで過ごさせてもらうことになった。

それも、子供達が土屋君につきっきりだからである。

中でもエミルちゃんは、ずっと土屋君から離れなくてー


「お調べしたところ、やはりアーティファにいくのが最適のようです。この辺は大きな海があって、隣の大陸に行くには船が必要なので……」


「……なるほど、助かったよ。エミル」


「……あの、慎様だけでも、こちらに残っていただけないのでしょうか……」


その言葉に、土屋君は顔を曇らす。

すると、エミルちゃんが彼の手を握った。


「シン様さえいれば、この国は安泰です! 私も、みんなも、それを望んでいますから……!」


「その前に、ご飯にしないか? みんながお腹を空かして待っているぞ」


「ああ! すみません、そうでした! 私、ちょっと行ってきます! 考えててくださいね!!」


そういうと、エミルちゃんはどこかへ行ってしまう。

その一連を見ていた柏木君と火野君は、彼に面白がるように絡みだしてー


「……あんたも罪な男だな、慎。あんな美人な女に言い寄られて」


「罪? なんの話だ?」


「とぼけんなよ、慎! エミルって子、すんげーお前のこと好きじゃん!」


「好き?? そうなのか?」


「いや、気づいてなかったのかよ! オレたちがいるってのに堂々と抱きついたり、手まで握ってんだぜ? わかりやすすぎだろ」


柏木君の煽りに、火野君も頷いてみせる。

誰だってあんな子に好かれたら、普通は嬉しいと思うはず。

でも、なんでだろう。好意を向かれてるはずの土屋君が、一番嬉しくなさそうな……


「しっかし慎が勇者かぁ〜〜そりゃあ優しいし、強いし、街を守ってればそーなるよな。この際、ここに残るのもありなんじゃね? なんて」


「ダメだよ」


その時、だった。

阿南さんがはっきりとした声で、私たちに言う。

彼女は出された食事を食べながらも、その目はまっすぐ私たちを見つめていた。


「慎は、勇者じゃないもん。結っちを連れて帰るって、約束したでしょ?」


「じ、冗談だって。慎さ、なんかあんのか? ここに来てから、元気ないけど」


「……魔王が言ってただろ、仮面があるって。俺は好意を向かれるような人間じゃない……俺、年上なんだ。みんなより、な」


その言葉が、声が、胸にのしかかる。

彼ー土屋君は、困ったように笑ってみせた。


「年上って、どういうことだよ」


「実は、停学してたんだ、一年前、俺のクラスメイトが、暴力を起こしてしまって」


その言葉に、みんなの手が止まる。

ただ彼だけはぐっと、拳を足の上でにぎらせていた。


「上級生、だった。バスケのコートの取り合いで、喧嘩になってしまったらしい。その時俺は、守ることができなかった。ボールを取りに戻ったら、すごい惨状になっていて……だから俺は、咄嗟にみんなの罪を被った。みんなを、守るために」


「それで、停学してたってことか」


火野君が、冷静にいう。

すごい。まさか暴力事件の罪を、自分で被るなんて。

すると阿南さんが、ぴょこっと無邪気に笑いかけてー


「慎はね、すごかったんだよ!! どんなスポーツでも、ぜーーんぶエース級で! 中でも、バスケはすごかったなぁ! 小さなシューターって!」


「……相変わらずよく知ってんな、いとこ様様ってとこか?」


「だってかなみ! 慎のこと大好きだからね!」


「言われてみりゃあすげー体力だったが……その身長でバスケやってた方がびっくりだよ」


「俺は、何も守れなかった。優しいだけじゃダメだと思った。だから、強くなりたかったんだ。こんな能力値になってしまったのは、そのせいかな」


土屋君は、強い。

小さくて可愛らしい見た目すら忘れさせるほど、頼り甲斐がある。

事実、彼には何度も助けられてきた。

小さな体なのに、私たちを守ろうとしていたのも、きっと――


「停学ってことは、あれだよな。つまりー、その……お前、今いくつ??」


「ん? あっちの世界では誕生日過ぎてるはずだから……19になるのかな」


「全然年上じゃんかよ!!! 今までタメ語ですみませんっした!!」


「気にしないでいい。敬語には、あまり慣れないんだ。それに……お前らとは、1からの状態で仲間になりたかったんだよ」


その言葉に、思わずどきりとする。

仲間……なのに私は、まだ自分のことすら言えていないことに。

目線をあげると、ふと柏木君と目が合う。

彼は困ったように笑ったかと思えば、すぐに自分のご飯へと目を落とす。

その横顔は私と同じ……嘘をついてる者の瞳で、少しだけ心が傷んだ。


「前に結の話をしただろ? なぜか彼女には何もいっていないのに、罪を被っただけってのがバレててな。彼女にいわれたんだ、どーせ一年暇なら、私の世話をしろって」


「なんだそれ。単にあいつが世話させたいだけだろ」


「それもあっただろうが……私生活は自堕落だったが、教師として一人の生徒をちゃんと見てる。そんな人だったよ」


話し終えたのか、土屋君がふうっと一息つく。

重たい空気の中、柏木君が思っていたことをつぶやいてー


「いやぁー、なんつーか……慎、めっさ加納先生のこと好きだな」


「……え?」


「いやどー聞いてもそーだろ。そりゃ、あの子の好意には答えられねーか」


そう言われても、彼はピンときていない。

聞いてる身としては、恋愛感情にしかみえないけれど。

土屋君って、思った以上に鈍感なのかな……


「ていうかお前ら、反応薄くないか? これでもその、勇気がいったんだが……」


「別に、濡れ衣被ってましたーってことだろ? あくまでそれは、あっちのお前だろ? 僕らにとっては、すんげー頼れて強い支柱、それでいいだろ」


その言葉に、思わずくすっと笑う。

火野君らしい言葉だ、どこか棘があるけどその端々に優しさがある。

柏木君も同じように、彼の肩をがしっと掴んだ。


「お前が言ったんだろ、仲間として接してほしいって。だったらオレらはそーするぜ? 実質お前、ガーディアンとは思えねーほど強いしなっ」


自分たちがどんなに仮面をかぶってようが、関係ない。

ここまで、彼に助けられてきた。

だから今、私たちがするべきことは、ひとつ。


「土屋君は、全然弱くなんか、ないです。私たちの、要です」


彼の優しさを、肯定するだけ。

すると阿南さんも、同じようににっこりと笑みを浮かべる。

心なしか、隣にいる彼の顔はどこか明るくなっているように見えてー


「つーか、そーゆーことは早く言えよ。誰だよ、仮面がないとか言ったやつ」


「気に障ったか? すまない、色々気にしてしまう性分で……」


「こーみえて慎子供っぽいんだよー! ゲームの時とか、かなみが負けるまでやるし!」


「だーー! わかったから、お前は黙っとけ!!」


「まあ何はともあれ、一件落着ってことで! いいよな、慎!」


「……ああ、そうだな」


空に、星が煌めく。

こうして彼の仮面は、ゆっくりと溶かされたのだー


(つづく!!)

おまけの小ネタ

慎の仮面が明らかになった!!

晃「しっかしまさか、慎が年上とはなぁ」


慎「年上と言っても、一つしか変わらないんだぞ? 一年学校に通っていなかったわけなんだし、そんな気にしなくても」


水帆「で、でも、一応先輩に当たるわけですし……」


亮輔「まあでも、よかったんじゃね。その場にいなくて。もしかしたら、バスケができなくなってたかもしれないし」


慎「え?? それは、相手の話か??」


亮輔「……ん?」


慎「いや、すまない。あの場に俺がいられたら、と、何度も考えたんだ。俺がいたら、上級生を追っ払えたのに、って」


金愛「慎、喧嘩すんごい強いんだよ! そだ! あっきーとりょーちんも戦ってみる??」


晃「あ、いや、遠慮しとくわ……」


亮輔(こいつ、マジでおっかねぇ……)


色んな意味で恐ろしい男。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。