22.魔王、再臨
前回のあらすじ。
フィリアの塔を攻略し、
無事に蝶花の救出に成功する。
亮輔と金愛とのわだかまりもとけ、
和気藹々してる中、突如、蝶花の水晶が光り出す。
目が覚めたそこには、自分らを飛ばした本人、
結がいたー
空気が、よどんでいる。
ここがどこなのか、一目でわかった。
禍々しいほど冷たい空気、なんとも気味が悪い装飾が壁一面に施されている。
そして、黒のオーブをまとった加納先生が、巨大な玉座に腰掛けている……はずだった。
「まったく、待ちくたびれたわ。フィリアの塔攻略だけで、どんだけ時間かかってるのよ」
片肘をつき、足を投げ出すだらしなさ、そして足元には空き瓶が大量にある。
彼女の周りだけでなく、私たちが足下にも、至る所に転がっている。
とてもじゃないが、綺麗とはいいがたくてー
「あんたが加納結だな!! ここで会ったが100年目!! 息の根を止めてやる!!」
「物騒な武器持ってるのねぇ。けど残念、そんなんじゃあたしは倒せませーん」
「なん、だと?」
「闇のベールってやつ、あるじゃない? それで包まれてるとかで、大体の人が攻撃できずに帰っちゃうの。正直つまらないのなんの」
そういいながら、先生はあくびを噛み殺す。
あれ……おかしいな……、この人本当に加納先生?
この世界に飛ばされた時と、まるで雰囲気が違うような……
「……なあ、あの人ほんとーに加納先生か? 初めて会った時と随分印象が違うような……」
「しらねぇよ、んなこと。つーかなんなんだよ、部屋は。きたねーし、タバコや酒臭いし、まるで……」
「ガラクタ屋敷!!! みたいだね!!」
ああ……そんな正直に言わないで、阿南さん……
「よく言われるのよね〜綺麗だとかかっこいいとか。でも実際は真逆、こーみえてあたし、酒好きタバコ好きのズボラ人間でぇす」
「ごめんね〜汚い部屋で。結ってば、昔から片付けが下手で」
「まさか姉さん、こいつと知り合いなのか? よくつるんでるって言ってた、あの……?」
「これでも、一応親友だから」
蝶花先生が笑うのを、火野君が呆れたように頭を抱え出す。
思えばこうしてちゃんと会ったのは、初めてかもしれない。
異世界に飛ばした本人だから、てっきり怖い人だって思ってたのに……
土屋君が言ってた通り、人を見かけで判断しちゃいけないってことなのかな。
「てか先生、前言ってたよな? 元の世界に戻るには、ギルドを組んで自分の元へ辿り着けって。ここに飛ばされたってことは、オレら元の世界に帰れるってことっすか!?」
「あー、そういえばそんな設定だったわね」
「僕だけじゃなく姉さんまで巻き込んでんだ! 今すぐ戻せ!!」
「…………戻って、どうするの?」
不意に、低い声が響く。
こちらを見据えていた目が、呆れたように伏せる。
まるで人が変わったかのような印象を抱いてしまうほど、冷たい眼だった。
「どうする、って……元の生活に戻るに決まってるだろ!」
「学校に行って、授業受けて、テスト受けて。進学だ就職だって悩んで……それを、自分を隠したまま、続けるつもり?」
その低い声が、突然、胸の奥に響く。
見据えられた視線が、私にだけ刺さる。
やっぱり、この人にはバレてるんだ。私が、ギャルじゃない、ただの根暗女だってこと。
元の世界に帰れば、ギャルに戻れる。
膝より短いスカート、ネイル、明るく騒ぐ笑い声――「理想の私」が手に入る。
なのにーどうしてこんな、気持ちになるのだろうー……
「誤解のないように言っとくけど、あなた達をここに呼んだ理由は、ただの忠告よ。蝶花が塔に囚われていたのだって、あたしの作戦。大変だったわね、蝶花。お勤めご苦労様」
「ど、どういうこと、ですか……? 蝶花先生も、作戦のうちって……」
「……仮にも四天王だから。これくらいは、ね」
「この世界に残っている生徒も、バグがある生徒も、ここにいるあなた達だけ。他の生徒にはそんなものないし、すでに元の世界に帰ってるわ」
「はぁ!? 他の奴らいねーの!? てかなんでオレらだけ! せめてバグを外して……」
「いい加減にしないか、結」
柏木君の叫びを遮るように、声が重なる。
ここに来てからずっと黙っていた、土屋君だ。
彼は彼女の姿に怒っても、呆れもしていない。
むしろ、知っているような顔に見えてー
「前に言っていただろう、これは試練なんだと。俺らだけにバグがあるのは、意味があるんじゃないか? いつまでも回りくどい言い方しないで、はっきり言ってほしい。本当に俺たちの敵なのかどうか……」
「おい慎? お前、何言って……」
「帰ろう、結。こんなところにいないで、俺達と一緒に……」
「……相変わらず口が過ぎるわね、慎。偽善者のくせに」
彼女がそう呟いた瞬間、視界がぐにゃりと歪む。
豪華だったはずの玉座の間が、まるで古い絵画が剥がれ落ちるように、端からパラパラと虚空へと崩れ去っていくーー
「な、なんだこれ! 急に体が!!」
「ねえねえ、かなみたち! お空飛んでる!!」
「おいおいおい、正気かよこの教師!!」
「あなた達には仮面がある。その仮面を剥がない限り、この世界から帰ることはできない。もちろん、あたしもね」
「まて、結!! 話を聞いてくれ……!! 俺は、お前を……!」
「またね、慎。もう二度と、あんたの顔を見なくて済むことを祈ってるわ」
加納先生の姿が、指を鳴らす。
私にわかったのは、それだけだったー
(つづく!!)
おまけの小ネタ
結「と、いうわけで魔王やってまーす。加納結でーす」
亮輔「随分と舐めた挨拶だな。この部屋といい、魔王には見えねーんだが??」
結「仕方ないじゃない、片付けても散らかるんだもの」
水帆「す、すごい量ですね……お酒、タバコだけじゃなくて、お菓子のゴミまで……」
金愛「ここ、色んなものあっておもしろーい! これ、なんだろー?」
晃「こーら、金愛。いくらなんでもゴミは漁るな、ってん?? まて、それってまさか……」
蝶花「やだ、それ下着じゃない! もぉ、結〜こんなものまで放ってちゃダメでしょ〜男の子もいるんだからぁ」
結「だって片付けるの、面倒くさくない? はくのもだるいし」
蝶花「もぉ〜ほんとにズボラなんだから〜教師なんだから、生徒の前ではちゃんとしてよ〜」
晃・亮輔(め、目のやりどころに困る……!!)
ラスボスらしからぬボス。




