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21.束の間の平穏

前回のあらすじ。

ようやく塔の最上階に着いた一向は、

囚われてる蝶花を救うため、トロルに挑む。


が、金愛の錬金術により、あっけなく倒してしまう。


再会を喜ぶのも束の間、亮輔に異変が……?

「あなたとは、初めましてだよね? どーもー、養護教諭で亮輔の姉、蝶花で〜す。よろしくね〜」


ほんわかした喋り方が、すごくじんとくる。

あの後私たちは、無事街に戻ることができた。

というのも、四天王だった彼女が戻り、彼女が自分のために取ったものだと説得してくれたおかげだ。


盗賊扱いだった私たちの扱いは一転、今となっては四天王の付き添い人である。

非礼を詫びるということで、ただで宿屋に泊まらせてもらっているんだけど……


「あなたが、亮輔のお姉さんですか。改めまして、土屋慎です。本来なら、4月から転校することになってました」


「そっかぁ、あなたが……かっこいい子だね、それにかわいい♪」


「それは、褒められてるんでしょうか……ありがとうございます」


複雑そうながらも、照れるように笑う土屋君は、礼儀正しく会釈をする。

なんだか、今が1番安心できている気がする。

ここにきてから色々ありすぎたから、だろうか。

色々あった、といえば……


「で?? 念願の蝶ちゃんを救えたってのに、なぁんでお前はそんな隅っこにいるんだ?」


柏木君が、ニヤニヤ笑いながら言う。

その矛先は、言うまでもなく彼ー火野君だ。

彼は不貞腐れた子供のように、私たちと離れた距離で椅子に丸まっている。


「………変なあだ名で呼ぶな。仮にも姉貴は教員だろ」


「姉貴、ねぇ〜〜? さっきは姉さんって言ってなかったか?」


「あ、あれは会えたことに安心して……」


「薄々気づいてたけど、お前もしかしてぇ、シスコンなんじゃね?」


がたんっ、とイスが倒れる。

図星、と言わんばかりに彼の顔がまた赤くなった。

その顔はいつもの彼とは想像つかないほど、可愛らしくてー


「ち、ちが!! そんなんじゃ……!」


「そういえば、亮輔が暴走する時って、大体お姉さん関連だったよな……ということはやっぱり……」


「だから違うって!!」


「隠さなくていいじゃん? 可愛いぜ、りょ〜う♪」


「こ、こいつら………!」


「まあまあ、亮輔。みんな協力してくれたんだし、ほどほどにしてあげて?」


先生が諭してる横でなおも、柏木君が茶々を入れる。

そんな彼を落ち着かせるように土屋君が火野君の肩を置くが、気に食わないと言うように彼はそっぽを向く。

意外だ、火野君にこんな一面があったなんて。

やっぱり、人は見かけにはよらないなぁ。


「それにしても、柏木君に阿南ちゃん。それに成瀬ちゃんか……面白いギルドだね」


「まーなー! って先生、こいつが成瀬だってわかるの?」


「まあね〜仮にもうち、占い師だから」


と、いうのは半分嘘で、本当はこの姿で保健室にたまに休みにいっていたからである。

そりゃあ、ギャルキャラは疲れるし、助けを求めないとやっていけないと言うか……

いい具合にぼかしてくれるなんて、優しい先生だな……


「それで蝶ちゃ……先生に会えたら聞きたかったんすけど」


「ん? なあに?」


「四天王ってことは、魔王の知り合いっすよね? あの加納って先生、何がしたいんすか?」


その言葉に、あーと言葉を濁す。

安心の笑みだったのも束の間、一瞬で心配そうな眼差しに変わってしまった。


「ごめんね、うちからは何も言えないの。ただ……あの子も、みんなのことを思ってるんだと思う。あれでも先生、だからね」


「この期に及んで同情とか、どんだけ優しいんだよ。三年全員だけじゃなく、姉さんまで危険に晒してんだぞ! 会ったら絶対叩き潰す!!」


「言葉がすぎるぞ、亮輔」


凛とした、声がする。

その声は、土屋君だった。

いつにも増して、はっきりした声。

そしてまっすぐ、火野君をみつめていた。


「敵だからって、すべてを否定するのはよくない。何も知らない俺達が、魔王のすべてを否定する権利はないんじゃないか?」


「なん、だと?」


「……それに彼女に悪意はない。傷つけるのは、得策ではないと思う」


「え、オレらをここにやった張本人なのにか? てか慎、なんでそう思うんだよ」


「あー……なんとなく、かな。男の勘だよ」


そういいながら、誤魔化すように笑う。

いつもはみない険しい顔だ、らしくない。

魔王を倒すのは得策じゃないって、どういうことだろう……


「んーー、よくわかんないけど、そのまおーさんに聞けばいいんじゃない? どうしてーって。話してみたら、元の世界に戻れるかもしれないよ?」


あっけらかんな声で、阿南さんが言う。

彼女の明るさに、何度助けられてきただろう。

その言葉を境に、柏木君がぱんっと手を叩いてー


「辛気臭いのはやめだ! 阿南の言う通りだよな、当初の目的通り魔王城いくしかねぇか!」


「まさか、ほんとに話すってのか? 聞いてもらえるかもわかんねーのに?」


「んなのやってみなくちゃわかんねーじゃん! 先生だって助けられたんだ、オレたちに敵なしじゃね?」


その言葉に、みんなが笑う。

こう言う時に決めてくれるのは、いつも彼だ。

私も、頑張らなきゃ。

魔法使いとして、何よりみんなの役に立つためにも。


「そーときまれば、りょーちんもいこう!! みんなで、まおーじょーー!」


「……正気、なんだな」


「ん! かなみ、色々作るの、楽しかった!! だから、やってみるね! れんきんじゅつし!!」


「……正直あんたがいなければ、敵を倒すことも、姉さんとコンタクトをとることもなかった。クビも、無しにしてやる……ありがとな、金愛」


椅子にうずくまりながら、彼は吐き出す様にいう。

あんなに名前を呼ぶのを嫌がってた彼が呼んだからなのか、阿南さんはぱあっと顔を明るくさせてー


「りょーちん、今かなみって言った!!!!」


「は? いってねぇし?」


「いやぁ、今ので言ってない、は無理あるだろ? な?」


「見え見えの嘘はダメだぞ、亮輔」


「あんたらは黙ってろ!!」


「えへへっ、かなみ、りょーちん大好き!! かなみ、頑張って良かった!」


彼女の笑みが、太陽のように私たちを照らす。

みんなが笑い合う中、私はふと、気づいてしまった。

ただ一人、火野先生だけは暗い顔をしていたことに。


「……先、生?」


彼女の持っていた水晶が、ぎゅっと握りしめられる。

瞬間、その水晶が不気味に、そして激しく光りだした。

まるで、何かを包み込むかのように。

あまりの眩しさに、みんなが驚いてー


「うわっ、えっ、なんだこれ! 急に光が!!」


「その水晶から離れろ、姉さん!! 危ないぞ!!」


「大丈夫よ。……呼ばれてる、だけだから」


誰よりも悲しそうな顔に、火野君の手が止まる。

まばゆい光が部屋中を埋め尽くし、私たちは思わず目をつぶってしまう。

目を開けると、そこには見慣れない景色が広がっていてー


「やっと合流してくれたのね、待ってたわ。迷い子さん」


気がつくとそこには、頬杖をついた加納先生がこちらを見据えていたー


(つづく!!)

おまけの小ネタ

蝶花、ようやく合流!!

蝶花「なんだか不思議〜亮輔と会うの、随分久しぶりな気がする〜」


亮輔「……そんなに変わってないと思うけど」


蝶花「変わったよ〜、表情とか〜雰囲気とか♪ あんなにうちの後ろをついて回ってたのに、大人になったよねぇ」


金愛「せんせー、それ誰の話?? りょーちん、そんなことするのー?」


蝶花「うん。うちが帰ってくるのを待ってたり、寝る時も一緒に寝たりしてたなぁ」


晃「ぷはっ、何それかわいい! 蝶ちゃん、その話詳しく!」


亮輔「や、やめろ!! 昔の話だ!! 食いついてくんな!!」


慎「いいじゃないか、少しくらい。昔の話なら、俺も聞きたいな」


亮輔「嫌だよ、バカにするに決まってるし!! 姉さんも、いい加減やめ……」


蝶花「だって、みんなに亮輔のいいところを知って欲しいんだもん〜。少しくらい、いいでしょ?」


亮輔「…………ま、まあ少しくらい、なら……」


蝶花「やったぁ〜♪


晃「えっ、ちょろ。どんだけだよお前」


水帆(本当に大好きなんだなぁ……)


シスコンバーサーカー、爆誕。

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