20.錬金術師は無邪気に問う
前回のあらすじ
フィリアの塔のギミックに分断され、
その衝撃で怪我してしまった水帆。
その際、共にいた晃から衝撃の真実を聞く。
互いに秘密を共有した二人は、さらに仲を深め、
5人で塔の最上階に向かうー
「はぁ……はぁ……しーん、まだかぁ??」
「あと少しってとこかな。みんな、生きてるかー?」
「生きてるわけねぇだろー? きっちーー!」
身軽な身のこなしで、土屋君がすいすい階段を登る。
その後ろを、重たい足を引きずるように、私たちーペンタグラムは進んでゆく。
分断された壁を越えると、今度は長い階段が続いていた。
どんなに上っても、先が見えない。あの柏木君ですら、息切れしている。
あんなに息巻いていた、火野君も同じのようでー
「……はんっ、これくらいで、へばるとか、だっせーの」
「いやいや、りょうだってバテバテじゃねーか、人に言えねーだろ。成瀬も、大丈夫か?」
その言葉に返事をすることすら、まともにできない。
足には、さっき柏木君に巻いてもらった包帯がある。
応急処置をしてもらったおかげで、痛みは少しマシになってはいたけど、正直足は重い。
本当、私ってなにも……
「そういえば成瀬、その足どうしたんだ? 包帯が巻いてあるが……」
「あ、えっと。ちょっと、ひねっちゃって……」
「え、大丈夫か? 無理はするなよ、といいたいが……この階段じゃきついか」
「……なんかあったら、姉貴にみてもらえばいい。養護教諭なんだ、それくらいしてくれるだろ」
「あ、ありがとうございます……」
「でも、怪我してたら痛いよね~~そだ!! かなみ、おぶるよ!!」
瞬間、阿南さんが私をひょいっとかかえてしまう。
あまりのことに、つい悲鳴を上げてしまってー
「ひゃぁぁぁぁぁぁ!!! だ、だめですよ阿南さん! 大変ですよぉ!?」
「えー、いいよー、あたし元気だし! よーし、てっぺんまでだぁぁっしゅ!」
後ろから聞こえる3人の声が、どんどん遠くなる。
あんなに先が見えなかったというのに、阿南さんのおかげで、あっという間に塔の最上階までたどり着いてしまってー
「とーーちゃーーーく!! あれ、なんかいるよ??」
阿南さんの声に、顔を向ける。
遅れてやってきた3人も、その声に警戒するかのように武器を構える。
広々とした最上階の中央には玉座があり、そこには私たちより大きな魔物と囚われている火野先生がいてー
「ねっ、姉貴!!!!」
「あ、みんな!」
【……エサ……キタ……。オトコ、カタイ。イラナイ。……コロス】
太った体型に、気持ち悪いほど長い耳が、こちらを向く。
多分、トロルだ。唾をたらしながら、武器をこちらにふりかざしてくる。
その顔の気持ち悪さと、攻撃の鋭さに、思わず怯んでしまいそうになる……
「なんだこいつ、話通じねぇし! てかきもい!」
「こら亮輔、そんなストレートに言っちゃダメだろ。確か、トロルと言われてる魔物だよな。強さはかなりのものだと聞いたが……」
【……オンナフエタ。ウマソウ……クウ】
トロルが、唾液をたらしながらねっとりと、じりじり近づいてくる。
まるで獲物を見つけた、とでもいうように私と阿南さんだけを見つめている。
ど、どうしよう、怖い……!
「ねえねえ、なんで女の子だけ食べるの? かなみ達、おいしくなくない?」
思わず後ずさっていた足が、止まる。
そういったのは、私の横にいる阿南さんだ。
なんの怖さも、ためらいも感じさせないくらい、普通に話している。
まるで、友達に聞くかのように。
【……オンナうまい……オデ、食う】
「ほえー、なんで女の子だけなの?」
【オンナ、好き。くう、当たり前】
「好きなのに、その人を食べちゃうの? 好きなのに、いじめるの? それって、本当に面白いのかなぁ?」
すると、彼女は懐からポイッと「何か」を取り出す。
それは道中で拾い集めていた、怪しいキノコや石ころを適当に混ぜ合わせた、彼女特製の「よくわからない塊」のようだった。
「それより、かなみ面白いのできたんだ! あげるね、それっ!」
無邪気な掛け声とともに投げられたそれは、トロルの足元に転がる。
すると、ただのガラクタだったはずの塊が、怪しく形を変え始めた。
次の瞬間、激しい火花を散らして——。
「ふ、ふせろ!! みんな!」
土屋君の声が、響く。
瞬間、大きな爆発がその場に広がる。
煙たい空気と、爆風が私達を包む。
そして気がつくと、トロルの姿はどこにもなかったのだ!
「え……たおし、た………?」
「あんた……今、何やった?」
「え? 面白いのができたから、それを教えてあげようと思って」
「で、でかしたな金愛! お前やっぱ錬金の才能あるよ!! でも怖かったろ? 無茶すんなぁお前は!」
「怖い? んー、怖いのかな……?」
「はは……金愛らしいな。まあ何はともあれ、無事で良かったよ」
柏木君や土屋君が、笑顔で彼女の頭に手を置く。
目の前に化け物が近づいただけでなく、襲われそうにもなったのに。
普通の女子高生なら泣き出してもおかしくないはずなのに、彼女は首を傾げるばかり。
その瞳には一点の曇りもなくて、逆にそれが少しだけ、彼女らしいような……
「さすがだなぁ。まさか、あっさり倒しちゃうなんて」
声が、する。
そこには、先生がいた。
魔物を倒したことで、牢が壊れたのだろう。
保健室でよく見るあの笑顔で、私たちへ微笑み返す。
その笑みを見た途端、どこかほっとしてー
「お疲れさま、みんな。よくここまできたね」
「ひ、火野先……」
「姉さんっ!!!!!」
……ん? ねえ、さん?
隣にいたはずの火野君の姿が、いなくなっている。
かと思えば視線を移すと、そこには先生に抱きついてる彼がいたのだ!!
「姉さん姉さん姉さん姉さん!! やっっっと会えた………!」
「ふふ、相変わらず甘えん坊さんだね〜」
「どれだけ心配したと思ったんだよ! もうっ、こっちはそれどころじゃ……」
「あのーー、亮輔さん?」
ハッとしたような顔の彼が、振り向く。
みるみるうちに赤くなっていく彼の顔を見ながら、私は目をぱちぱちさせるしかできなかった。
(つづく!!)
おまけの小ネタ
金愛は水帆を装備した!
晃「はぁ〜〜さすがだなぁ、あいつ。成瀬背負ってるつうのに、もうあぁんなところに……なあなあ慎。提案があるんだけど……」
慎「ん? なんだ?」
晃「オレ達、ちょぉぉ疲れてるんだわ。慎のその怪力で、オレら二人担いで登ったりできね?」
亮輔「晃なぁ……確かに慎の力はすげぇ、だからって二人分は流石に……」
慎「おう、いいぞ」
亮輔「いいのかよっ!!? てか無理だろ、どう考えても。あんた身体小さいのに、どうやって!」
慎「もちろん、こうやるんだ」
慎は晃をお姫様抱っこし、
亮輔をおんぶした!!
慎「よし、これなら二人とも運べるだろ? 気にするな。俺は慣れてるし、二人とも軽いから全然大丈夫だぞ!」
亮輔「いやきにするだろ。なんだよこの絵面」
晃「うん、言い出したオレが悪かった! だからせめてお姫様抱っこはやめてくれ! なんか、なんか違う!!」
結局自力で追いつきました。




