19.私たちは似たもの同士
前回のあらすじ。
フィリアの塔に翻弄されるペンタグラム。
トラップをかいくぐった直後、謎のギミックで
2人と3人で分断されてしまった!
その揺れで怪我をしてしまった水帆に、
晃は衝撃の一言をかわすー
包帯が、私の足に巻かれてゆく。
その処置は手慣れていて、とても初めてには見えない。
「何かあった時用にさ、普段から持ち歩いてるんだよ。使う気はなかったけどな。成瀬が怪我したって知ったら、体が勝手に動いちまった。やっぱ、隠しきれねえな」
それを柏木君は、話しながらしてくれた。
いつもの様子で、笑み混じりに。
それでもどこか無理してるような、苦しそうな顔に見えた。
「びっくりしただろ? ちょっと知識があってさ」
「知識、ですか?」
「医者になりたかったんだ、母さんの病気を治したくて。だからちょっとかじってんだよ、医学」
その言葉は、いつもと同じで、どこか明るい。
それでも顔色は、決していいとはいえなかった。
もしかしてコウモリに襲われた時に色々詳しかったのも、そのせい……?
「あの時は夢中だったなぁ、母さんが死んでからも、医者になるために勉強しまくってた。誰かの助けになりたくて、毎日、ずっと……」
「なら、どうして……?」
「周りに言われたんだ、お前に医者なんて似合わないって」
その言葉に、がんっと釘を打たれたような感覚になる。
それでも彼は、相変わらずの笑みを浮かべて、私に告げた。
「そん時によーやくわかったよ。金髪で、ヘラヘラしてて、みんなとふざけるようなことしかしねえオレが、医者なんてイメージに合うわけないじゃん?」
「そ、そんなこと……!」
「だから、演じることにしたんだ。みんなが思う馬鹿なオレを。授業サボったり、テストをわざと間違えたり……演じてるっつーより、フリ、かな? だから、お前と一緒」
違う。私はただ、隠してるだけ。
弱い自分を、偽るように。
けれど、どう言えばいいかわからなくて。
今の私には、彼の話を聞くことしかできなかった。
「頭ではわかってんだ、やめないとって。でも、どうしても諦めきれなくてさー。隠れて勉強してた。ここでヒーラーになっちまったのも、そのせい。だから誰かとギルドなんて、組めなかった」
「……だから、武力ゼロの剣士だって言ってたんですね」
「わかってる、使った方があいつらの力にもなれることくらい。あいつらといるの、すげー心地よくてさ、だから、いえなかった。また誰かに否定されたら、オレほんとにダメかもって思ってさ……」
その言葉が、痛いほど胸に刺さる。
私も、ずっとそうだった。自分を隠して、周りに合わせて。
本当の自分を知られるのが、怖くて。
でも私がここですることは、同調じゃない。
彼と私は、違う。
「違います……否定なんて、しませんっ!」
気がついたら、叫んでいた。
まるで、自分じゃないみたいに。
それでも私は、いつのまにか必死になっていた。
「似合わないなんてこと、ないですっ! そんなこと、誰が決めたんですか!」
「成、瀬」
「努力して、努力して、夢を掴もうとしてるんです! それの何が悪いんですか!!」
周りの目を気にして、自分を隠してきた。
だから、彼の気持ちが少しだけわかる。
それでも本当の夢をなかったことになんて、絶対にしちゃダメだ。
明るいところも、ちょっとチャラいところも柏木君のよさだ。
その性格に、私は何度も助けられた。
だから、私はーー
「私は、素敵だと、思います。お医者さん。絶対に、目指してほしい」
「………でも、ここじゃオレは……」
「ヒーラーだって、言わなくていいんじゃないですか? この秘密を、私と分けっこするんです。今の私が、学校と違うことを知ってるのも、柏木君だけですから」
私が秘密を言った時、彼は否定しなかった。
むしろ、大変だったと言ってくれた。
それが嬉しかった。とても、救いだった。
柏木君がいたから、私はここにいれるんだって。
「……あ、でも、私の怪我のせいでバラしちゃいましたし、お互い様ってわけでもないですね……私なんて、魔法使いなのに何もできてないし……」
「んなことねーよ、成瀬には成瀬にできることがある。現にオレは、成瀬だから話したいと思った。それだけで、十分じゃね?」
その言葉が胸に、じんと染み渡る。
まただ。彼の言葉は、自分がいる陰から光へ掬い出してくれる。
私なんかより、きっと彼の方がつらかっただろうに。
だから私も、同じように。彼に大丈夫って思わせられるように、少し笑ってみせてー
「私も……柏木君に話してもらえて、嬉しかったです。ありがとうございます。だから、これからも……諦めないでください。柏木君がなりたいものを」
「……っ」
その瞬間だった、壁が光を放つ。
気がついた時にはまるで、最初からなかったかのように跡形もなくなくなってしまいー
「あ、開いたーーー!!」
「えっ、まだ何もしてないのに……ともかく、無事か? 二人とも!」
「だーーーもーー!!! お前ら空気読めよ、空気!!! こっちはそれどころじゃ……あー、もういい! 行くぞ!!」
私たちの姿を見た土屋君達から逃げるように、柏木君が先をゆく。
去り行く彼の耳は、心なしか真っ赤になっていたような、そんな気がした。
(つづく!!)
おまけの小ネタ
晃と水帆がいい感じになってる裏、3人はーー
亮輔「でりゃっ!! だめだ、攻撃しても意味がない」
慎「やはり、さっきの石板の言葉が関係あるのだろうか……」
亮輔「ああ、あの、意味わかんねーやつか。なんかわかったりしねーの?」
慎「すまない、俺は頭を使うのは苦手で……こういうのは、いつも晃が閃いたりするからなぁ」
金愛「ねえねえ、だったらこれ、やってみない? なんかできた!!」
慎「おお、ドリルか! いいな! これで、壁に突っ込めるんじゃないか? 俺の大剣もあわせればいけそうだ」
亮輔「ちょっと待て、僕がやってもダメだっただろ。それに、向こう側にあいつらだっているんだ。普通にあぶねーんじゃ……」
慎「こういうのは、考えるより実戦だ。じゃあいくぞ……せーーのっ!!」
その時、なぜか壁が開いた。
金愛「やったーー! あいたーー!」
慎「え、まだ何もしていないんだが……ともかく、無事か二人とも!!」
亮輔「……こいつら、地味におっかねぇ……」
味方でよかった、と心底思った亮輔なのでした。




