18.離れては、近づいて
前回のあらすじ。
先生を助けるため、
フィリアの塔についたペンタグラム。
鍵となると言われた金愛の力で、
どうにか先を進めた彼らだがー
塔の中は、静かだった。
特に敵がいるわけもなく、ただ道が続くだけ。
「中は暗いな。みんな、気をつけてくれ」
土屋君が、先陣を切って先をゆく。
その後をついていくように、私たちは歩き出す。
そんな時、だった。
『ぶーー!』と、ハズレのような音が、鳴り響いたのは。
「な、なんだ今の音」
「おい……阿南の足元が光ってるんだが……まさか……」
「ごめん、なんか踏んじゃった!」
天井が、がたんと音を立てる。
次の瞬間、とてつもない針の山が、頭上から降ってきたのだ!!
「まずいっ! みんな! 逃げろ!!」
土屋君が咄嗟に大剣を構える。
降り注ぐ針を、大剣でまとめて受け止めていく。
彼の機転もあって、私たちは無傷で済んだ。
「あっぶねー。助かったぜ、慎」
「……足場には気をつけた方がいいかもしれないな。トラップがあるみたいだ」
「これじゃあ、下手に動けませんね……」
「おい阿南、それ以上動くなよ? トラップ踏まれたら、溜まったもんじゃねえ……」
「んー、いいけど……無理だと思う!」
言った直後だった、またハズレの音が鳴り響く。
阿南さんは、ただ一歩横にずれただけ。
それなのに、足元がまた光っている。
逃げようとするたびに、彼女の足元から次々とトラップが発動していく。
「あんた!! ぜっったいわざとやってるだろ!!」
「えー、違うよー。塔さんが怒ってるんだよ〜。あっ、またぶーってなった!!」
「その割には随分楽しそうだな!?」
「喧嘩してる場合じゃないだろ、亮輔。この先は広間になってる! とりあえず、そこに避難しよう!」
途端、床から煙が噴き出したり、大きな石が転がってきたりするたびに、土屋君と火野君の二人が手分けして、私たちを守ってくれる。
次々と発動するトラップをかいくぐりながら、私たちは大広間のような場所にたどり着いた。
すぐに柏木君が、周囲にトラップがないか確認して回ってくれる。
床を慎重に調べたり、後ろから何も来ないか確認したり。
何も起こらないところをみると、どうやらここにはトラップはないようだ。
「とりま、なんとかなったみたいだなぁ。さすが異世界、命が何個あってもたりねぇ……」
「ねえねえ、これみて! なんかかいてるよー?」
阿南さんが、声をあげる。
トラップに振り回されたというのに、その声は元気そのものだ。
その様子に、さすがの火野君もげっそりしていた。
「これみてーじゃねぇよ。それどころじゃないってのに……で、なんて?」
「どうやら、石板みたいだな。文字が書かれてるみたいだが……」
「えーっと、なになに? 愛を証明せよ。道を分かつとも、互いを想い、その想いを繋ぐ者のみ、真実の場所へ至る……?」
その途端、がこんと音がする。
すると突如、大きな揺れが起こる。
どうやら、壁が落ちてきていたようで、気がつくと私と柏木君の二人だけになっていた。
「はぁ〜、あっぶねー。亮輔、慎〜、そっちは大丈夫か〜?」
「こっちは平気だ! そっちも怪我はないか?」
土屋君の声が遠くから響く。
大きな壁は、私たちはおろか、道まで分断されてしまったらしい。
これをどうにかしないと、先に進めない……ってこと?
「とりあえず、こっちでなんとかしてみるよ! 晃達も、きをつけてかかってくれ!」
「ああ、わかったー!」
その声を最後に、土屋君達の声は聞こえなくなる。
私も、何かしないと。そう思って立ちあがろうとした、その時だった。
「……いたっ」
足に、何か痛みが走る。
恐る恐るみると、くるぶしのあたりが赤くなっていた。
おそらく、さっきの揺れのせいだろう。トラップを避け続けた疲れもあるのだろうか。
最悪だ、よりにもよってこんな時に怪我してしまうなんて。
ふと、ポケットからあるものが落ちてしまう。
私のトレードマークでもある、雫型のヘアピンだ。
こんなものを持っていたって、何かできるわけでもないのに……
「成瀬、どうした?」
そんな時、きがついた柏木君がやってくる。
私が何も言えないでいると、彼はすぐさまヘアピンを拾い、私に笑いかけた。
「……このヘアピン、お前のだよな。だめだろ、ちゃんとなくさないよーにもっとかねーと」
「す、すみません、ありがとうございま……」
「……もしかして、足捻った?」
どきっとした。まさか、バレてしまうなんて。
そう言った柏木君は、私の返事を待つより先に、しゃがみ込んでいた。
「今は安静にしたほうがいい。無理に動かすと、悪化するからな。足を固定する、ちょっと待ってろ」
そう言いながら、彼はバッグから何かを取り出す。
出てきたのは、いつもの彼からは想像もつかない、固定するための包帯や冷却剤だった。
目の前に広がる光景に思わず、
「柏木、君……?」
と、彼の名前を呟いてしまう。
そこでようやく、自分が何をしているのかに気づいたようにハッとする。
しまった、と言いたげに顔を歪ませるも、すぐに諦めたように口を開いた。
「……成瀬さ。なんで自分とギルド組むの、って聞いた時、オレがなんていったか覚えてる?」
どうして、今それを聞くのだろう。
あの時は確か、オレと同じだからと言っていたけれど……
すると彼は、困ったように笑って見せてー
「それ、まんまの意味なんだよ。オレは、みんなが思うような、オレじゃない。バグで武力ゼロの剣士、つったろ? あれ、嘘。オレの職業、ヒーラーなんだ、ほんとは」
その言葉に、思わず声を失う。
それは、とても形容し難い、いつもの彼とは違う、もう一つの顔だったーー
(つづく!!)
おまけの小ネタ
フィリアの塔、トラップ地獄!!
亮輔「なんなんだよ、どいつもこいつも邪魔しやがって……! 姉貴はすぐそこだってわかってんのに……!」
晃「まー、これもRPGの醍醐味じゃん? そんな怒るなって、りょう」
亮輔「怒りたくもなるだろ! それもこれも……!」
金愛「ねえねえ、次は何が出てくるのかな? 鳥さん? それともお化け??」
慎「楽しそうだな、金愛。散々酷い目にあわされてるというのに……トラップが怖くないのか?」
金愛「だって、面白いんだもん!」
亮輔「頼むからほんっとに動かないでくれ! あんたのせいで、どんだけ大変か……」
『ブー!!!』
水帆「きゃぁぁっ! た、大変です! あっちから大量に虫が!!」
金愛「ほらぁ、りょーちんだって踏んでるじゃぁん」
亮輔「ぼ、僕のせいかよっ!」
慎「どうやら金愛のせいだけじゃ、ないみたいだな……」
晃「いやこれ、ほぼ無理ゲーじゃね? オレらここで死んだりしねーよな??」
この後ちゃんとどうにかしました。




