鹿島政道、夏の帰還
初夏の風を受け、鹿島政道を乗せた定期船が鹿島港へ帰港した。
わずか数か月の渡海であったが、その成果は坂東の未来を大きく変えるものであった。
夏の坂東評定。
氏治の前へ進み出た鹿島は、深く一礼した。
「ご命令の件、おおむね形となりました。」
評定の間が静まり返る。
鹿島は一つずつ成果を報告していく。
「まず、朝鮮商館について。」
「福建商人の仲介により港近くの商館を共同利用し、さらに空き家、空き倉庫を借り受けました。」
「商館は交易、宿泊、倉庫、韓牛の集荷を担う出先機関として動き始めております。」
氏治は静かに頷く。
「次に韓牛でございます。」
「朝鮮各地を巡り、繁殖農家と長期契約を結びました。」
「契約は割符を用いて証とし、代金は契約どおり支払うことで信用を築いております。」
「現在、繁殖用韓牛二百頭の年間調達を目標に、契約農家を増やしております。」
真壁幹永は満足そうに頷いた。
「これで坂東牛計画も本格的に動きますな。」
鹿島はさらに続けた。
「鹿島と朝鮮を結ぶ定期船も運航を開始しました。」
「坂東の酒、陶器、刀、味噌、醤、織物を運び、帰りには韓牛、陶磁器、紙、薬草、漢方薬を積んでおります。」
「一度限りの商いではなく、季節ごとに往復する交易路として定着し始めました。」
陳猛哲も笑みを浮かべる。
「商いは、ようやく軌道に乗ったと言えましょう。」
鹿島は最後の報告へ移った。
「そして……予想外の成果がございました。」
評定の諸将が身を乗り出す。
「自由都市土浦の噂は朝鮮各地へ広まり、身分に縛られず技で生きたい者たちが、自ら坂東への渡航を望むようになりました。」
「第一便には製紙職人、陶工、白磁職人、韓牛農家、家畜医、漢方医、薬草師、鍛冶職人、大工、船大工、農民とその家族が渡来しております。」
「現在も希望者は増え続けております。」
評定の間には驚きと喜びの声が広がった。
鹿島は穏やかに続ける。
「なお、商館の日々の運営は、陳殿配下の福建商人と朝鮮商人へ委ねました。」
「私は定期的に渡海して監督するだけで、商館は自立して動く体制となっております。」
氏治は満足そうに微笑んだ。
「見事だ、鹿島。」
「お前は商館を築いただけではない。」
「交易路を築き、人を呼び、信用を築いた。」
鹿島は静かに頭を下げる。
「すべては坂東のためにございます。」
氏治は評定の諸将を見渡した。
「海は国境ではない。」
「海は、人と技と富を結ぶ道である。」
その言葉に、一同は深く頷いた。
この夏の評定を境に、鹿島港は坂東最大の国際港として発展を始め、朝鮮商館は韓牛の供給、人材の受け入れ、技術交流、交易を担う海外拠点として、坂東の発展を支える柱の一つとなっていくのであった。




