桜咲く北の都
寺を辞した四人は、津軽の案内で城下をゆっくりと歩いた。
城下は京や奈良のような大きな町ではない。
それでも、道沿いには若い桜がところどころ植えられ、小さな寺がいくつも寄り添うように建っている。
住職が語った屏風の景色を、そのまま小さく写したような町であった。
マリアは足を止め、静かに微笑む。
「……屏風の町に似ていますね。」
津軽も穏やかに笑った。
「あの屏風は、鬼の娘が願った町の姿と伝わります。」
「まだ夢の途中ではありますが、いつの日か、この津軽を寺と桜の美しい町にしたいものです。」
ライラは道端に植えられた若木を見上げた。
「この木々も、そのために。」
「ええ。」
津軽は頷いた。
「寺には学ぶ者が集まり、旅人が休み、人が行き交う。そして春になれば桜が咲き、人々の心も和らぐ。」
「そのような町を、この北の果てにも築きたいのです。」
少弐は城下を見渡した。
まだ若木ばかりで、寺の数も決して多くはない。
だが、その景色は確かに、先ほど見た屏風の中の理想へ向かって歩み始めているように映った。
――その願いは、長い歳月を経て少しずつ形となる。
幾百年の時を越え、この町には幾千本もの桜が咲き誇り、城を彩る花の名所として人々に親しまれることとなる。
寺町には旅人や学ぶ者が絶えず訪れ、北国を代表する城下町として栄える。
しかし、それはまだ四百年ほど先の話。
今はただ、小さな若木が北国の風に揺れているだけであった。




