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1月、年頭の坂東評定

年が改まり、一月。

凛とした冬の空気の中、小田城では年頭の坂東評定が開かれた。

上座には氏治。

左右には真壁、宍戸、鹿島政道、水戸頼治が並び、宇都宮尚綱、結城、小山、大掾ら坂東の諸将も顔を揃える。

氏治は立ち上がり、静かに口を開いた。

「昨年は佐竹を退け、北条とは相常同盟を結び、霞浦兵学館も無事に開校することができました。」

「皆の働きに感謝します。」

そう言うと、家臣たちへ木箱が運ばれた。

中には美しく装飾された坂東サーベルと坂東鎧。

実戦用ではなく、功績を称えるための晴れの武具である。

「これは坂東のために尽くしてくれた皆への感謝です。」

「どうか受け取ってください。」

諸将は深く頭を下げ、その栄誉を受けた。

氏治は地図を広げる。

「まず、本年の目標です。」

恋瀬川を指し示す。

「恋瀬川橋城は、あと四年を目安に完成させます。」

「百年先まで坂東を守る橋城を築きましょう。」

橋城普請の総責任者である宍戸政繁は力強く頷いた。

「命に代えても成し遂げます。」

続いて氏治は土浦から北へ延びる街道へ目を向ける。

「昨年をもって、土浦と水戸を結ぶ街道の拡張は一旦完了しました。」

鹿島政道が立ち上がる。

「宿場、橋梁とも整備を終えました。今後は維持と物流の充実に力を注ぎます。」

「水戸との往来も格段に便利になりました。」

氏治は満足そうに頷く。

「街道は造って終わりではありません。」

「人と物が行き交ってこそ国は豊かになります。」

すると宇都宮尚綱が立ち上がった。

「氏治殿、一つお願いがございます。」

「申してください。」

「土浦で育った技を、ぜひ下野にも伝えていただきたい。」

「たまり醤油、陶器、鴨の飼育、坂東切子……。」

「いずれも見事な産物です。」

氏治は迷わず頷いた。

「もちろんです。」

「技は囲い込むものではありません。」

「坂東全体で育ててこそ価値があります。」

「職人を送り、技法も惜しみなく伝えましょう。」

尚綱は深々と頭を下げた。

続いて氏治はモンケ、陳猛哲、フェルディナンド、プラヤー・スリウォンへ視線を向けた。

「もう一つ、大事な仕事があります。」

「土浦は急速に人が集まり、このままではいずれ食糧不足になります。」

「飢饉に強い作物を探したい。」

陳猛哲が頷く。

「福建では南方から伝わった芋が広まりつつあります。」

フェルディナンドも続ける。

「ルソンにも同じような作物があります。」

スリウォンも口を開いた。

「シャムにも痩せた土地で育つ芋や豆がございます。」

氏治は鹿島政道を見る。

「鹿島殿。」

「まずは鹿島衆を中心に、シャムとルソンの教官たちと協力してください。」

「飢饉に強い作物を調べ、種や栽培法を持ち帰ってほしい。」

「橋城が完成した後は宍戸に栽培と普及を任せます。」

鹿島は力強く一礼した。

「必ず成果を持ち帰ります。」

氏治は最後に諸将を見渡した。

「武だけでは国は守れません。」

「食も、学も、技も揃って初めて坂東は強くなります。」

評定は満場一致で承認され、新たな一年が動き始めた。

評定が終わると、氏治は手を叩いた。

「さて。」

「難しい話は終わりです。」

「今日は皆で車座になって酒を楽しみましょう。」

広間は一気に和やかな空気へ変わる。

笠間で焼かれた陶器の徳利が運ばれ、温められた酒の香りが広がる。

氏治は諸将へ小箱を配った。

中には坂東切子の酒杯。

「祝いの品です。」

「笠間の徳利から酒を注ぎ、この杯で味わってください。」

宇都宮尚綱は嬉しそうに濁り酒を切子へ注いだ。

「やはり、この濁り酒はうまい。」

氏治は別の徳利を手に取る。

「尚綱殿、今日はもう一つ。」

透き通る蒸留酒を静かに坂東切子へ注いだ。

「どうぞ。」

尚綱は勢いよく口へ運ぶ。

次の瞬間、目を丸くした。

「……ぐっ!」

喉を押さえながら大笑いする。

「喉が焼けるようだ!」

広間はどっと笑いに包まれた。

氏治も笑いながら言う。

「蒸留酒は強いでしょう。」

尚綱は咳払いを一つすると、今度はゆっくり味わう。

「なるほど……。」

「これは見事だ。」

「下野の清らかな水と米で造れば、もっと上品な酒になる。」

「それに我が国には氷室がある。」

「夏に氷で冷やして飲めば、実によく合うだろう。」

そう言って再び杯を口に運ぶと、豪快に笑った。

「はっはっは!」

「しかし蒸留とは実に強いな!」

「氏治殿、この酒造りもぜひ下野へ教えてくだされ!」

氏治は思わず吹き出した。

「尚綱殿は酒を飲んでも領民のことばかりですね。」

「やはり本物の名君です。」

尚綱は照れくさそうに頭を掻く。

「良いものは皆で育てればよい。」

「その方が坂東はもっと豊かになる。」

氏治は静かに頷き、坂東切子の杯を掲げた。

「坂東の繁栄に。」

「乾杯!」

澄んだ杯の音と笑い声は、小田城の夜更けまで絶えることなく響き続けた。

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