↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
626/1029

北への扉 ― 地図の上の考察

会津・黒川城。


宇都宮朝綱は机いっぱいに古地図、寺社の縁起、修験者の記録、北方交易の覚え書きを広げた。


「氏治様より、皆様はいずれ北を目指されると伺っておりました。そこで磐梯一帯から会津、越後口、出羽へ通じる道、そして北方交易について調べ、まとめておきました。」


四人は礼を述べ、一冊ずつ手に取る。


そこには東北諸家の情勢、蝦夷との交易、北回り航路、そして会津各地に伝わる数多くの伝承が記されていた。


ライラが最初に気づいた。


「見て。龍神、大蛇、大百足、山の神……。」


マリアも頷く。


「京都や奈良では麒麟や鵺、鳳凰のような霊獣の話が多かったのに、北へ来るほど山や湖の神ばかりね。」


イネスは静かに記録を書き留める。


「しかも、その姿は現実の生き物に近いものが多いわ。蛇や熊、狼、鹿……。」


少弐はしばらく黙って考え込んだ。


「都では大陸から伝わった思想が霊獣という姿になり、絵や仏具として残された。しかし坂東や奥州では、人々は山や湖、海そのものを神として敬い、その土地で見た姿のまま語り継いだのかもしれない。」


ライラは腕を組む。


「文化の違いということ?」


「そうだ。」


少弐は地図の北へ指を滑らせた。


「文化の中心から離れるほど、大陸文化の影響は薄れ、古くからの自然信仰が色濃く残る。だから伝承も、理想化された霊獣ではなく、人々が畏れた自然の姿に近づいていく。」


マリアは微笑む。


「だからといって、それがユニコーンや麒麟そのものだとは言えない。」


「もちろんだ。」


少弐は頷く。


「私たちが探すべきなのは『ユニコーン』という名前ではない。もし角を持つ神聖な存在が伝わっているなら、それは土地ごとに違う名で呼ばれているはずだ。」


イネスは地図を見つめる。


「つまり、『角を持つ神』『海の神』『山の神』という伝承を追えばいいのね。」


宇都宮朝綱は一枚の絵図を静かに広げた。


「皆様の考えならば、まず訪れるべき場所があります。」


その地は、古くから会津の人々が霊峰と仰ぎ、龍神と山の神の伝承が数多く残る場所であった。


四人は顔を見合わせ、小さく頷く。


旅は、いよいよ北の伝承の核心へと向かおうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。