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冬の調査 ― 麒麟を追って

松山城で報告を終えた翌日。


那須資忠は、氏治から届いた次なる計画を少弐と三人へ伝えた。


北方探検。


蝦夷地を経て、さらに北海へ至る交易路の開拓。


それは壮大な計画であった。


しかしマリアは、しばらく考え込んでから静かに口を開いた。


「一つ、お願いがあります。」


那須は頷く。


「何でしょう。」


「北へ向かう前に、少し時間をいただけないでしょうか。」


「冬の間だけで結構です。」


少弐も興味深そうに耳を傾ける。


「理由を伺っても?」


マリアは旅日記を開き、朝鮮で写した麒麟の絵を見せた。


「私たちは今回の旅で、ユニコーンの手掛かりをいくつも得ました。」


「犀。」


「象。」


「セイウチ。」


「偽物の角の正体も分かってきました。」


ライラが続ける。


「でも、それだけでは片手落ちです。」


「東洋には麒麟という霊獣がいます。」


「私は宗教的な遺物を集めていますが、麒麟は寺院や神社、仏教美術にもたびたび現れます。」


イネスも旅行記を開く。


そこには朝鮮で写した麒麟の図が描かれていた。


「まだ実際の彫刻や絵画を十分に見ていません。」


「挿絵としても、もっと正確に描き残したいんです。」


最後にマリアが言う。


「北海へ向かう前に、東洋のユニコーンともいえる麒麟を、きちんと理解したい。」


「奈良や京都には古い寺社が多く、麒麟を描いた絵や彫刻も残っていると聞きました。」


「冬の間だけ、調査を許していただけませんか。」


那須は静かに微笑んだ。


「なるほど。」


「急いで北へ向かっても、冬の海では思うような航海はできません。」


少弐も頷く。


「それに、氏治様は出航の時期は皆さんに任せると仰せです。」


那須は二人へ視線を向けた。


「それなら、この冬は京都と奈良で麒麟を調べましょう。」


「鹿島家の商館や寺社との伝手もあります。」


「必要なら紹介状も用意します。」


ライラは思わず笑顔になる。


「本当に?」


「ええ。」


那須は笑った。


「北方は逃げません。」


「ならば、その前に東洋の知識を十分に集めるべきでしょう。」


マリアは深く頭を下げる。


「ありがとうございます。」


「麒麟の正体を知れば、ユニコーンとの共通点や違いも、もっと見えてくるはずです。」


こうして北海探検は翌春以降へと延期されることになった。


三人は冬の数か月を、京都・奈良に残る麒麟の図像、寺社、美術品、伝承の調査に充てることを決めた。


それは、北方の「ユニコーンの角」を追う旅へ向けた、最後の学びの季節となるのであった。

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