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九月半ば ― 琉球王国

九月半ば。


穏やかな南風を受けたエストレラ・ポラール号と洲本艦隊は、ついに琉球王国へ到着した。


港では、一人の豪商が笑顔で一行を迎える。


今井宗及であった。


「少弐殿、お待ちしておりました。」


宗及は深く一礼すると、小声で言う。


「王府への話は整えてございます。どうぞご安心くだされ。」


少弐も礼を返した。


「宗及殿のお力添え、誠に感謝いたします。」


ほどなくして一行は王府へ案内された。


少弐冬明は、小田氏治の正式な使者として国書を奉じる。


国書には、交易による相互の繁栄を願うこと、そして互いの商人や船舶が安心して往来できるよう、


相互の港での安全を保障すること。


正規の商人の自由な交易を認めること。


遭難船や漂流民は保護し送還すること。



など、今後の交易の基礎となる約定が記されていた。


王府の役人たちも大きく頷きながら耳を傾ける。


続いて献上品が運び込まれた。


まずは小田家より贈られた交易品。


精巧な漆器。


南蛮渡来のガラス器。


鼈甲細工。


象牙細工。


そして松永久秀が笑みを浮かべる。


「氏治殿より、『とびきり上等な品を持って参れ』と命じられましてな。」


「そこで、日本の南では決して手に入らぬ品をご用意いたしました。」


家臣たちが慎重に箱を開く。


現れたのは、蝦夷より取り寄せたセイウチの牙を用いて作られた見事な儀仗具であった。


滑らかな白い牙は、美しく磨き上げられ、精巧な金具が施されている。


続いて広げられたのは、一面の銀色に輝くラッコの毛皮で仕立てた絨毯。


その柔らかな毛並みに、王府の人々から感嘆の声が漏れる。


さらに、小田家工房で製作された機械時計。


規則正しく時を刻む音に、誰もが目を奪われた。


最後に運ばれたのは、美しく彩色された地球儀である。


宗及は静かに説明する。


「これは世界を球体として描いたものにございます。」


「南蛮人が用いる世界図をもとに、小田家で仕立て直した品です。」


王府の役人たちは互いに顔を見合わせる。


北方の海からもたらされた珍品。


南蛮の技術。


そして坂東の職人の技。


それらは単なる贈り物ではなく、小田家が広く世界と交易していることを示す証でもあった。


少弐は静かに一礼する。


「我が主・小田氏治は、武による征服ではなく、海を通じた友好と交易を望んでおります。」


「この品々が、その誠意をお伝えする一助となれば幸いにございます。」


王府の人々は静かに頷き、琉球と坂東を結ぶ新たな交易の第一歩が、こうして南海の王国で刻まれたのであった。

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