坊津への招待
少弐一行は、長崎で積み替えを終えると予定どおり坊津へ向かった。
本来であれば、坊津では真水と食糧を補給し、そのまま瀬戸内を経て伊予へ帰る予定であった。
しかし、その予定は長崎で大きく変わる。
港で積み替えの指揮を執っていた松永久秀は、氏治からの使者として少弐を訪ねた。
「少弐殿。」
「氏治殿より新たな命だ。」
少弐が書状を開くと、そこには今井宗及の仲介によって琉球王府との渡りがついたこと、そして坊津の後は琉球へ向かえと記されていた。
さらに松永は笑みを浮かべて続けた。
「もう一つ頼みがある。」
「坊津で合流するまでに、琉球へ献上する品をできる限り揃えておく。」
「氏治殿のお言葉だ。」
『琉球は交易の国である。初対面こそ肝要。惜しまず、とびきり上等な品を用意せよ。』
少弐は深く頷いた。
「承知しました。」
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数日後、一行は坊津へ入港した。
しかし、異国風の大型帆船と西洋人を乗せた船団は港でひときわ目立ち、ほどなく島津家の役人へ知られることとなる。
やがて使者が現れ、丁重に頭を下げた。
「島津家より、お招きにございます。」
マリアたちは互いに顔を見合わせる。
ライラが小声で尋ねる。
「……断れないの?」
少弐は静かに笑った。
「いや、むしろ歓迎されている。」
一行は島津家の城へ案内され、予想に反して盛大な歓待を受ける。
薩摩の酒、海の幸、山の幸が惜しみなく振る舞われ、島津家の重臣たちも笑顔で杯を交わした。
マリアは少弐へ囁く。
「どうして、ここまで親切なのです?」
少弐は小さく答える。
「理由は単純だ。」
「小田は今、四国を押さえ、大友とも交易や外交を進めている。」
「島津としては、その関心が大友だけに向くことを望まない。」
「できることなら、小田の経済力も、将来の軍事的な協力も、自分たちへ引き寄せたいのだ。」
島津側もまた腹の内を隠そうとはしなかった。
「薩摩にも目を向けていただきたい。」
「我らもまた、交易を重んじる国でございます。」
宴席は終始和やかに進み、互いに探り合いながらも、新たな友誼の芽が静かに育ち始めていた。




