漢城 ― 王室書庫
漢城へ到着した一行は、朝鮮国王への謁見を終えた。
少弐冬明は、小田氏治からの国書を奉じ、南方よりもたらした象牙の香箱、珍香、カルダモンを献上し、交易と友好を願う旨を丁重に述べた。
国王もまた、新たな交易路の可能性に深い関心を示し、会談は和やかな雰囲気のうちに進んだ。
その折、少弐は同席する礼曹の役人へ一つ願い出た。
「同行しております三名は、西洋の博物や伝承を研究する者にございます。」
「もし許されるならば、王室所蔵の書物を拝見し、朝鮮に伝わる珍獣や異国の記録を調べさせていただけませんでしょうか。」
役人は少し驚いた表情を浮かべたが、国王は静かに頷いた。
「学問を求める者を拒む理由はない。」
「ただし、書庫では役人の立ち会いのもと閲覧するように。」
少弐は深く頭を下げた。
「ありがたき幸せにございます。」
さらに少弐は続ける。
「もし同行の者どもが望む書がございましたら、写本をいただくことは叶いましょうか。もちろん、相応の謝礼は惜しみませぬ。」
役人は国王の顔色をうかがいながら答えた。
「国家機密に関わる書はお渡しできませぬが、地誌、薬学、博物、古記録など、公にして差し支えないものなら、写本を作らせましょう。」
その言葉に、マリアたちは思わず顔を見合わせた。
ライラが小声で言う。
「朝鮮王室の蔵書まで調べられるなんて……。」
イネスも目を輝かせる。
「麒麟や一本角の獣について、何かわかるかもしれないわ。」
マリアは静かに頷いた。
「西洋の文献だけでは見えなかったものが、東洋の記録に残されているかもしれない。」
こうして三人は、朝鮮王室の書庫で新たな手掛かりを求め、古い文献の調査を始めるのであった。




