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対馬 ― 海の玄関口

博多を発って数日。


エストレラ・ポラール号は玄界灘を渡り、国境の島・対馬へと入港した。


一行を迎えたのは、対馬を治める宗一族であった。


少弐冬明とは旧知の仲でもあり、館では盛大な歓待の席が設けられた。


卓上には海の幸が並ぶ。


大ぶりのタコを柔らかく煮たもの。


香ばしく焼き上げられたウツボ。


壺焼きのサザエ。


炭火で焼かれたアワビ。


さらに季節の魚介が次々と運ばれ、南蛮人たちも目を丸くする。


「同じ海の幸でも、こんなにも料理が違うのですね。」


ライラが感心すると、宗家の料理人は笑みを浮かべた。


「魚は焼くだけではございませぬ。煮ても蒸しても良し。素材ごとに最も旨い食べ方があります。」


さらに椀物が運ばれる。


澄んだ汁を一口飲んだイネスは驚いた。


「……この味は何ですか?」


料理人は誇らしげに答える。


飛魚あごから取った出汁にございます。」


三人は顔を見合わせた。


「魚をそのまま食べるだけでなく、魚から旨味だけを引き出す……。」


「これは思いもよりませんでした。」


マリアは静かに椀を見つめる。


「同じ食材でも、文化が変われば全く別の料理になるのですね。」


食事を終えると、宗家当主は少弐を奥の間へ案内した。


机の上には、一枚の文書と木製の割印が置かれている。


宗家当主は厳かに告げた。


「これは朝鮮王朝との正式な交易を証する割印にございます。」


「この割印を持つ船のみが、正規の使節・商船として朝鮮との交易を許されます。」


少弐は丁重に両手で受け取り、深く一礼した。


「宗殿のお力添え、誠にかたじけなく存じます。」


宗家当主は穏やかに頷く。


「対馬は古くより日ノ本と朝鮮を結ぶ橋にございます。貴殿らが誠意をもって交易を望むなら、我らも力を貸しましょう。」


そのやり取りを見守っていたマリアは、小声でつぶやいた。


「ポルトガルにも王の許可状はありますが……海を隔てた国との交易を、一つの島が担っているとは。」


ライラも感心する。


「対馬は単なる島ではなく、東アジアの玄関口なのですね。」


こうして一行は、宗家の厚いもてなしと正式な交易の証を得て、いよいよ朝鮮半島へ向かう準備を整えるのであった。

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