↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
568/1029

府内を発つ

会見は予定よりも早く終わった。


少弐冬明は宗麟へ改めて一礼すると、静かに広間を辞した。


「本日は貴重なお話、誠にありがとうございました。氏治様にも余すところなくお伝えいたします。」


宗麟は満足そうに頷いた。


「うむ。冬明殿も今宵は府内でゆるりとしてゆかれよ。」


「南蛮料理も酒も用意させよう。」


「せっかくの縁だ。存分にもてなしたい。」


その厚意は偽りではなかった。


しかし少弐は穏やかに頭を下げる。


「お心遣い、痛み入ります。しかし、我らにはまだ博多にて合流すべき船がございます。日程もございますゆえ、本日はこれにて失礼いたします。」


宗麟は少し残念そうな表情を浮かべたものの、無理に引き留めることはしなかった。


「そうか。ならば道中の無事を祈っておる。」


「ありがとうございます。」


府内館を後にした少弐とマリアは、そのまま港へ向かう。


夕暮れの府内は交易港らしく賑わい、異国の商人や僧侶が行き交っていた。


北辰丸が見えてくると、マリアは小さく息をついた。


「宗麟殿、本当に引き留めたそうだったわね。」


少弐は苦笑する。


「ああ。歓迎してくださる気持ちはよく伝わった。」


少し歩みを緩めると、小さな声で続けた。


「だが、長居は避けたい。」


「どうして?」


マリアが尋ねる。


少弐は周囲を一度見回してから答えた。


「以前、少弐家中でも話題になったことがある。」


「宗麟公は近年、カトリックへの傾倒を深め、そのことで一時は政務から距離を置き、出家同然の暮らしを送ったこともあると聞く。」


「もちろん、それ自体を咎めるつもりはない。」


「だが、宗教は時として家臣や国人の思惑も絡む。」


「我らは使者だ。余計な憶測を招く前に役目だけ果たし、速やかに退くのが最善だろう。」


マリアも静かに頷いた。


「外交では、親しくなりすぎない距離も大切ということね。」


「そういうことだ。」


二人は桟橋を渡り、北辰丸へ乗り込む。


「出航準備!」


船員たちが声を上げると、帆が風を受け、係留索が外された。


やがて北辰丸は静かに府内港を離れ、豊後水道へと針路を向ける。


その目的地は博多。


先に向かったエスペランサとライラが待つ港である。


夕日に染まる豊後の海を背に、北辰丸は軽快な帆走で西へと走り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。