↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
561/1029

西へ──鹿島出航

永禄十二年九月。


鹿島港は、夜明け前から人々の掛け声で満ちていた。


十五隻の旧型坂東ガレオンには、最後の積荷が運び込まれている。


船倉を満たすのは、兵ではない。


常陸や下総の米、霞ヶ浦の干魚と塩、会津の良材と漆器、坂東鍛冶が鍛えた鉄製品や火縄銃、紙、酒、薬草、染料、木綿、茶器、そして兵学館で改良された羅針盤や航海器具など、坂東の技術と産業の粋を集めた交易品であった。


これらはすべて、大友との交易を始めるための品であり、船とともに引き渡される予定である。


港では船大工が最後の点検を終え、水夫たちは十分な休養を終えて持ち場へ戻る。


補給は万全。


帆も索具も新調され、どの船も長い航海へ備えていた。


沖合には、巨大な母艦希望が堂々と浮かぶ。


その船内には高速探検船北辰丸が格納され、必要な時にはすぐ発進できるよう固定されていた。


船橋では、少弐冬明、マリア・ヴィアリス、ライラ・アルカセルが最後の航路を確認している。


「豊後までは順風でしょう。」


マリアが海図を見ながら言う。


冬明も頷いた。


「豊後で大友殿と会見し、十五隻と交易品を引き渡します。その後、対馬、朝鮮、五島、長崎、坊津を巡り、最後に伊予・松山へ向かいます。」


ライラは海を見渡しながら笑った。


「長い航海になるわね。でも、良い船団だわ。」


その頃、岸壁では小田氏治をはじめ、大掾幹康、鹿島政清、多くの家臣や兵学館の学生たちが見送りに集まっていた。


氏治は冬明へ歩み寄る。


「少弐。」


「はっ。」


「この船団は坂東の未来そのものだ。剣ではなく、交易と信義で西国への道を切り開いてまいれ。」


冬明は深く頭を下げた。


「必ずや使命を果たしてまいります。」


氏治は続いてマリアとライラにも目を向ける。


「お二人の力を借りられること、坂東にとってこの上ない幸運だ。」


マリアは穏やかに一礼する。


「北辰丸は必ず皆様を目的地へ導きます。」


ライラも右手を胸に当てた。


「希望は船団を最後まで守り抜きます。」


やがて、出航の法螺貝が港中に響き渡る。


旗艦希望がゆっくりと錨を上げ、それに続いて十五隻の坂東ガレオンが一斉に帆を広げた。


秋風を受けた白帆は朝日に輝き、鹿島の港を静かに離れていく。


岸壁では見送る人々がいつまでも手を振り続けていた。


こうして、坂東初の本格的な西国外交・交易船団は、豊後を目指して太平洋へと船首を向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。