久万神社建立へ
佐野は届いた書状を那須へ差し出した。
「愛宕山神社より返書が届いた。分霊・分社の手配が正式に整ったそうだ。」
那須は書状に目を通し、静かに頷く。
「ありがたいことです。」
佐野は続けて尋ねた。
「ところで、久万城――いや、これからは久万神社と呼ぶべきか。その作業はどこまで進んでいる。」
那須は広げられた縄張図を指した。
「縄張りと製図は昨年のうちにすべて終えております。堀や土塁、柵の配置、兵糧蔵や見張り台の位置も決まっております。」
陶も口を添える。
「正月までには砦として最低限の上物も完成しております。兵が寝泊まりし、見張りを置き、防衛できるだけの施設は既にあります。」
「つまり、戦になっても使えるわけだな。」
「はい。」
那須は頷いた。
「ですので、今年一月からは本格的な整備に入ります。社殿の建立、門前の整地、参道、井戸、水路など、人が暮らすための造作が中心です。」
佐野は感心したように地図を眺める。
「六月にはどうなる。」
「六月には神職も兵も住める程度には整います。愛宕山より御神霊を迎え、遷座祭を執り行うことは十分可能でしょう。」
しかし那須は続けた。
「もっとも、それで完成ではありません。門前町の整備、職人町や市の造成、道の拡幅、倉や馬屋の増築などを含めれば、その後も二年ほどは改修改築が続く見込みです。」
陶も穏やかに笑う。
「城を築くのではなく、一つの町を育てるのだからな。」
佐野は満足そうに頷いた。
「よい。ならば六月、愛宕の神を迎えて祭事を行おう。」
「久万の鎮守として。」
「そして四国の新たな核として。」
その言葉に、一同は力強く頷いた。
こうして久万は、既に完成していた堅牢な砦を土台としながら、愛宕山の分霊を迎える久万神社を中心に、四国山地の新たな町へと歩み始めるのであった。




