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道後の湯煙

四国城割評定を終えた那須資忠は、慌ただしく動き続けた諸将へ、一つの提案をした。


「皆、少し休もう。」


「戦も評定も終えた。ここからは国造りだ。」


那須は陶晴賢、本多正信、松永久秀を評定最大の功労者として招き、松山近郊の道後温泉へ案内した。


さらに佐野昌綱にも使者を送り、


「本多殿に仕える家臣を選抜していただきたい。」


と頼む。


佐野は快く引き受けると、下間頼廉にも声を掛けた。


「阿波は本多殿一人では広すぎる。本願寺からも優秀な家臣を出していただきたい。」


頼廉は静かに頷いた。


「承知した。本願寺も四国の安定には力を貸そう。」


さらに堺から今井宗及が呼ばれ、坂東海軍奉行となる大掾義康も松山へ到着した。


こうして道後温泉には、


那須資忠。


陶晴賢。


本多正信。


松永久秀。


佐野昌綱。


下間頼廉。


今井宗及。


そして大掾義康。


四国再編を担う中枢が一堂に会した。


湯煙が立ち上る湯殿では、誰もが戦装束を脱ぎ、一人の人として湯に浸かった。


松永が肩まで湯に沈みながら笑う。


「これほど静かな正月は久しぶりですな。」


陶も珍しく穏やかな表情を浮かべた。


「久万では毎日泥まみれだった。」


「湯に浸かるだけで生き返る。」


本多は静かに湯面を眺める。


「戦が終わったからこそ、この静けさがある。」


佐野は盃を持ちながら笑った。


「だが、これからは船を造る。」


「ようやく私の出番だ。」


宗及も頷く。


「堺では砲も鉄も木材も手配しておきましょう。」


「商人もまた、この海軍に乗ります。」


大掾は湯から立ち上がる。


「海軍は新しく生まれ変わります。」


「瀬戸内だけを見る時代は終わりました。」


「朝鮮、明、南蛮まで見据えた艦隊を築きます。」


那須は静かに皆を見渡した。


「皆のおかげで四国はここまで来られた。」


「陶殿が策を立て、本多殿が国をまとめ、松永殿が海を押さえ、佐野殿が畿内を支え、頼廉殿が民を救い、宗及殿が商いを動かし、大掾殿が未来の海軍を築く。」


「私は、その橋渡しをしたに過ぎない。」


陶は静かに首を横へ振った。


「いや。」


「皆を一つにまとめられる者は、そなたしかおらぬ。」


松永も笑った。


「戦なら私でもできましょう。」


「だが、人をまとめるのは別の才です。」


その夜、一同は酒を酌み交わしながら数日を道後で過ごした。


湯に浸かり、酒を飲み、未来を語る。


軍議は堅苦しい評定の場ではなく、湯煙の向こうで自然と始まり、自然と終わっていった。


四国の新しい時代は、刀ではなく、人と人との信頼から始まろうとしていた。

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