第四案 福建の答え 第五案 福建の未来
第四案 福建の答え ―― 対安宅船型
大掾は新たな模型を評定の中央へ置いた。
「ここまでは西洋人の考えでございました。」
「では次に、福建の船大工ならばどう考えるかをご覧いただきたい。」
模型は福船を基礎としながらも、日本の安宅船を倒すことだけを目的として設計されていた。
船体は安宅船より低く、一回り小さい。
しかし船腹は厚く、水密隔壁によって幾重にも区切られている。
「福建人は高楼を競いませぬ。」
「沈まぬこと、壊れぬことを第一といたします。」
帆は竹骨入りの大帆。
風を受ければ安宅船を上回る速度を出し、舷側には低い位置に小型砲が並ぶ。
「彼らは高い所から撃たず、低い位置から船腹を撃ち抜くでしょう。」
さらに船尾には巨大な舵。
潮流の強い海でも確実に向きを変えられる。
「西洋ほど大砲に頼らず、日本ほど接舷にも頼らぬ。」
「砲と機動の均衡。」
「これが福建人の答えでありましょう。」
しかし大掾は首を振る。
「されどこの船も、日本の浅瀬ではやや扱いづらい。」
「ゆえに、これもまた完成ではございませぬ。」
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第五案 福建の未来 ―― 発展型福船
続いて大掾はさらに洗練された模型を取り出した。
「もし福建が百年にわたり戦と交易を重ね、福船を進化させ続けたなら。」
そこにあった船は、先ほどの福船よりさらに細長く、美しい船体をしていた。
帆装は三本マスト。
風上性能は大きく改善され、船腹は軽量化されている。
「交易船でありながら軍船。」
「軍船でありながら商船。」
「これこそ福建人が目指す姿でしょう。」
砲門は増えた。
しかし巨大砲ではなく、中型砲を多数備える。
隔壁はさらに細かく区切られ、浸水しても戦闘を継続できる。
甲板は広く、兵だけでなく大量の荷も積める。
「福建人は戦で勝つだけでは満足いたしませぬ。」
「勝った後に商いを始める。」
「そのため軍船もまた商船へ戻れる設計を好むでしょう。」
船首は鋭く波を切り、外洋では西洋船にも引けを取らない。
一方で瀬戸内にも入れるよう喫水は抑えられていた。
「この船は日本にも来られます。」
「しかし、日本だけのために造られた船ではない。」
「東シナ海から南洋まで、海そのものを庭とする船。」
大掾は二つの福建船を並べて締めくくった。
「これにて五つの思想が揃いました。」
「第一、安宅船の進化。」
「第二、西洋人が造る対安宅船。」
「第三、西洋船の未来。」
「第四、福建人が造る対安宅船。」
「第五、福建船の未来。」
そして静かに笑う。
「さて――ここから先は、坂東の番にございます。」
「これら五つを叩き台とし、日本の海のためだけに生まれる第六の船、『坂東新式軍船』をお目にかけましょう。」




