第二案 対安宅船・西洋型
大掾幹康は二隻目の模型を静かに壇上中央へ置いた。
第一案より一回り小さい。
しかし船体は細く長く、船楼は低く抑えられている。
高い帆柱が二本そびえ、舷側には整然と小型砲門が並んでいた。
講堂がざわめく。
「これは……。」
大掾はゆっくりと口を開いた。
「もし。」
「ポルトガル王が自国の造船技師へ命じます。」
『日本の安宅船を倒す軍船を造れ。』
「そう命じられたならば。」
「私は、おそらくこのような船になると考えます。」
松永久秀が腕を組む。
「安宅船より小さい。」
「はい。」
「西洋人は敵より大きな船は造りません。」
「敵より優れた船を造ります。」
大掾は安宅船の模型を指した。
「まず。」
「敵を知ります。」
「安宅船は。」
「兵が多い。」
「高い船楼。」
「接舷戦最強。」
「しかし。」
「重い。」
「旋回は鈍い。」
「大砲も多く積めません。」
「ならば。」
大掾は新しい模型へ手を置く。
「この長所と戦うのではありません。」
「この長所を消します。」
講堂は静まり返る。
「船体は細く。」
「船楼は低く。」
「帆は大きく。」
「風を利用して。」
「常に安宅船の側面を取る。」
「敵の前には立たない。」
「敵へ乗り込ませない。」
佐野が尋ねた。
「武器は。」
大掾は舷側の砲門を指した。
「小型から中型の火砲。」
「大型砲は不要です。」
「狙うのは船体ではありません。」
「帆柱。」
「索具。」
「舵。」
「敵を止めます。」
那須が続けて問う。
「止めた後は。」
「甲板へ砲撃します。」
「兵を伏せさせ。」
「反撃を封じ。」
「十分に弱らせてから接舷します。」
松永久秀が笑った。
「結局、最後は乗り込むのか。」
「はい。」
大掾は頷いた。
「現在の西洋も。」
「まだ白兵戦の時代です。」
「違うのは。」
「白兵戦を始める前に勝負を決めようとすることです。」
氏治が静かに尋ねた。
「つまり。」
「火砲は。」
「敵を沈めるためではありません。」
「敵を動けなくするためです。」
「そして。」
「有利な白兵戦へ持ち込むための武器です。」
講堂が静まり返る。
大掾は模型を見渡した。
「私は。」
「これが現在のポルトガル人造船技師の答えだと考えます。」
「彼らは安宅船を真似ません。」
「安宅船の戦い方そのものを否定します。」
「速さで勝ち。」
「機動で勝ち。」
「砲で優位を築き。」
「最後に剣で決着をつける。」
氏治は模型を見つめながら静かに頷いた。
「見事な船だ。」
大掾は微笑む。
「ええ。」
「しかし。」
「これはまだ、現在の西洋です。」
「歴史は止まりません。」
「西洋もまた、この船をさらに進化させるでしょう。」
彼は最後の白布に覆われた模型へ歩み寄った。
「では。」
「百年後、西洋はどのような軍船を造っているでしょうか。」
講堂中の視線が最後の模型へ集まった。




